スイカ
スイカを噛んだ時に溢れる水分がたまらなく好きです。そんな思いを綴りました。
田舎は嫌いだ。
何もないし、夏は暑いし、冬は寒いし、言い始めれば悪い所がいくらでも出てくる。
だけど、私はこうして、また一夏をばあちゃん家で過ごそうとしている。
まだ夏休みも始まったばかりだ。今から帰れば間に合うかも。いや、もう遅いか。
車がどんどんと山奥に入ったと思ったらこのざまだ。
「携帯も圏外って……」
文明の利器も田舎じゃこんなに無力なのか、なんてアホらしいことさえ頭に浮かんでくる。
小さい頃はまだ山を走り回ったり、虫取りなんかを楽しんでいたけれど……
「もう高校生だっつの」
何度目かわからない溜息をつく。
汗が染み込んだシャツをぱたぱたとはためかせた。
「暑いなぁ」
蝉の声がうるさい。
快晴の空もなんかむかつく。
「みちこちゃん。スイカ切ったで」
ばあちゃんがお盆に乗せて運んできたスイカ。
真っ赤に熟れた実にポツポツと黒い点が打ってある。
シャクッとかぶりつくと口の中に甘い水分が広がる。乾いていた喉には最高だ。
確か、うちの畑で採れたスイカだったはず。
「暑いなぁ」
「だねぇ」
チリンと涼しげになった風鈴は、私の考えを見透かしているようで本当にむかつく。絶対に夏の手先だ。というか田舎の手先。スイカもきっとそうなのだろう。
それでも、スイカは美味しい。
夏はいいですね。