宝箱と 恋の契約
いつも 観察していた 湖の様子からの 推察。
ーこのはやり熱は、渡り鳥と関係が あるのではないか?
渡り鳥は 時として、喜ばしくない 贈り物を 持ってくる。
おばばの言っていたことを、冬という 厳しい季節の事だと 勘違いしてた。
地方を 巡り回る一座にとって、旅先で出会う 病人をみるのも、おばばの役目であり、薬草師にかかれない 人びとにとっては、かかせない存在でも あったのである。
はやり熱も、きっと 知っていたはず。ただ 対処しきれずに 辛い想いも したであろうことは、予想がつく 出来事だ。
ーなぜ、ひとは かかり、動物は かからないのか。
そんな 疑問を 考えないのが 普通であるなら、その疑問を抱いた アニーアンこそ、変わり者であり、天性の 薬草師としての 才を抱く ものであったのだろう。
水辺に生える あのにがにが草を食べれば、オウジサマは 助かるはず。
それは、直感にちかいものであったのだが、試してみる価値は 十分にあると 信じて疑わなかった。
ーあれは、お前の 野生の堪だろう (--#)
あの時のことが 話題にのぼるたび、若様は にがにが草を食したような
しかめっ面になる。
湖に連れて行き、にがにが草を 口に突っ込んだら、熱が下がったといってるけれど、本当は そうじゃない。
本当のことは、絶対 いえるわけない。
だって
飲み下す力も 残されてなかったから、搾り取った汁を 口移しで飲ませたなんて、絶対言えないもの。
ー