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宝箱と 恋の契約
わたしの 名前は、アニーアン。
物心ついたときには、旅芸人の一座で 暮らしていた。
何でも、一座のなかの 生き字引ー薬草師の マヌーおばばに 拾われたらしい。
詳しいことは よく 覚えていないけれど、
おばばの口癖は、
「うんでも ひろっても 子どもは 未来からの贈り物。
大切な 大切な この世の宝さね!」
だった。
そして、ひとは 誰でも 宝箱を 心の中に持っていて、
何を入れるかで その人の 人生が
決まるのだと。
わたしが 入れたいのは、
人々の笑顔と ありがとうの 言葉。
何故なら、
生き残った わたしの 償いだから。
そう、あの夜、わたしたちは 盗賊に襲われ、
わたし以外は、みんな 犠牲になった。
わたしは 荷馬車の陰に隠れ、難を 逃れた。
そこを 若様に 助けられたのだ。