宝箱と 恋の契約
庸平時代に 一人の男と 出会った。
戦で 故郷を失い さすらううちに ここにたどり着いたのだという。
彼は 戦いでけがをするたびに 不思議な言の葉を 綴る。
ー御身 健やかならん、光なる笑みのもとに。
「それ、おまじないなのか?」
ある飲み会の場で 傭兵仲間のひとりが 尋ねた。
「いや、姫巫女さまの 受け売りさ」
彼の国は 山深い緑豊かな 小国だったという。
国を統べる 王族の中から選ばれた姫巫女が 存在し、
奏でる詩を聞くと 人々は眠りに付き、それが終わると同時に目覚めた時は、身も心もいやされ、清々しい気分になれるのだという。
また、代々受け継がれる薬草の知識を 民のために使い、癒やしの言の葉を 綴りながら 治療してもらうと 治癒力が 各段に あがったという。
「しかし、ある日突然 隣国にせめいられ 無くなってしまった。
王族の方々も 幼い王女様以外は もう おられない。
次代の 姫巫女にと望まれていたお方だけに、どこかで 生き延びていらしゃるらしいのだが、見つからなかったのだそうだ。
それでも 高位の方々は 亡命先で さがしつづけておられるのだというが・・・
×××グレイシア様が おられれば、国の再興も 夢ではあるまいに。」
確か あの大使は 亡国の 亡命者であったはず。
「アニーアングレイシア様、いきておられたのですね!!」
そのひとことが 心に重く のしかかる。
これからさき おこるであろうで展開に 不安な思いをうちけせないまま 呆然と立ちすくむライオネリアスであった。