宝箱と 恋の契約
まぶしい 明かりのしたで、着飾った人々が さざめきあう。
国中の 主だった人々のみならず、周辺国の 大使たちも 集っているため
予想以上の にぎわいとなった。
彼らの 目的は ただ一つ。
ー救国の巫女を 一目 見たい!
はやり熱は、この国だけの 問題では なかった。
周辺の 国々も 対処法のない この病に 手をこまねいていたのだ。
それが ひとりの少女の 発見により、多くの 尊き命が 救われるようになった。
おまけに、薬草は 無償で供給される。
しかし、見つけた少女は 人前に姿を あらわすことはなく、精霊殿にこもり 人々の安寧を願い、日々 祈りを捧げているのだという。
それが 最初に助けられた若者の婚約者となり、この場に 登場する。
“救国の巫女”
その少女は そう呼ばれ、人々に いろんな憶測を かき立てたのである。
ーおもてにでなかったのは、あの泥まみれの姿を見て 失望されるのを 心配したからなんだけどな。それに、巫女ってがらじゃないし・・・
隣りにたつ 婚約者のみがわりに 声を かける。
「いくぞ、用意は いいか?」
「合点承知!終わったら あびるほど うまい酒飲ませろよ!」
そうして 二人は 戦場(?)へと 赴いていった。
話は 少し前に さかのぼる。
はったりだった ひとことに、彼女は 動揺してしまい 頑として 舞踏会にいかないと 言い始めた。
しかし、 陛下直々に 連れてくるように言われていたから、ブルグラード候自ら 彼女を 迎えにきたのだった。
そこで おとりとして ラーラを連れて行き 注目されているあいだに 侯爵様が アニーアンを 世継ぎの君に 別室で会わせるという ことになった。
ドレス姿のラーラは、背も高いせいで 凛とした 美しさが あった。
二人の 姿を 見送る時、胸の奥で 微かな 痛みを 感じた。
(何だろ、この痛み・・・疲れてんだろうな、人ごみ苦手だから)
深く考えもせずに 会場に背を向け 待ち合わせの場所に 向かおうとしたとき、
悲鳴と ものが倒れる 音を 耳にする。
「マリーウェザ、大丈夫か?誰か、薬草師を!」
ひとりの 少女が ヒューヒューと荒い息を繰り返し、真っ青な顔をして 父親らしき男の腕の中で 苦しんでいた。
考えるよりも、体が 反応していた。
少女の元に 駆けつけ、解放していた腕から 奪い取る。
口づけとともに 規則正しく 息を送り込み、相手の呼吸が 楽になるまで 続ける。
やがて、少女の口から 大きな吐息が漏れ、胸の動きも なだらかになった。
そうして、紡ぎ出された 言の葉。
「御身 やすからん。シェリスさまの 微笑みの ごとくー
もう、大丈夫ですよ。」
ニッコリと 微笑むと、おおきなこえが 辺りの 静寂を 破る。
「アニーアングレンシア様!!生きて おられたのですね!!」