宝箱と 恋の契約
契約の内容は こうだ。
ひとつ、暮らし方は いまのままでいい。
ひとつ、接し方は いまのままでいい。
ひとつ、好きな人ができたら、気にせず 恋を続けていい。
ただし、結婚は 世継ぎの君が 身を固めるまで禁止。
「ねえ、若様、これってつまり アルフ様がご成婚されたら 解消するってことですか?」
「当たり前だ!自分付きの 薬草師にして 束縛しようというのが、アイツの 魂胆なんだからな。
俺の アーナを横取りされて たまるもんか。
だけど、お前の 恋愛まで 縛るつもりはない。
心は 自由だから」
本音だだ漏れの若様に、いささかウンザリしながら 答える。
「はいはい、わかりました。私は ものじゃ ないっつうの。
いとこ同士で なにやってんですか、あんたたちは。
ったく、めんどくさ!
とりあえず、これで 心おきなく 薬草の研究に 専念できますね」
そういってさらさらと署名し、若君に 微笑んで 契約書を 手渡す。
「いっておきますけど、わたし、誰とも 恋愛する気は ありませんから。
宝箱を もっともっと 笑顔で 一杯にするんですから。
それでは、ごきでんよう」
「お前 本当に サイテーだよな」
ムッツり度200%で ぼそっと 告げる。
「こんな 馬鹿げた契約つきつけなくっても、アルフ様のおそばで働ける立場ではないことくらい わきまえてますから。
陛下からの 勅命になれば 断れないから 先手を打ってくださってのでしょう?
私が 自由に 薬草師として 活動できるように。
ありがとうございます。さすが わたしの 若様」
ぺこりとお辞儀して さっていく。
「本当に、サイテー」
若様の 捨てぜりふを 背中で 聞き流しながら。
でも、世継ぎの君の 反撃が 始まるなんて、この時 思ってもみなかった。




