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恋の契約と宝箱  作者: アニイアンニンドウフ
12/19

宝箱と 恋の契約

その日は いつもの 街の薬草卸店に にがにが草を 納入に行った帰りだった。

折しも 春の訪れを祝う 春祝祭を間近に控え、街には 見慣れぬ出店も 見かけられるようになった。

どぎつい色の 食べ物がならび、へんてこりんな形の お土産物が 所狭しと 並べられている。

ーもう少し 胃腸薬を 準備しなきゃ。

 どこぞのオマヌケさんが おなか壊して いきだおれるかも・・・


いた。


目の前で うずくまる 人を 発見!!


ー┓( ̄∇ ̄;)┏やれやれ、なんてこったい・・・


その人に近付き、そっと 声をかける。

「もしもし、大丈夫ですか?」

脂汗たらたらで、その男のヒトは 顔を上げる力もなく 答も返せないようだ。

「私は 精霊殿の薬草師です。立てますか?それとも 誰かを 呼んで・・・」

突然 腕をつかまれ、苦しそうな表情のもと やっと絞り出した言葉で 告げる。

「ど・・う・・か、内緒・・に・・」

ーふ~ん、わけありってことね。

よく見れば 着ている物も 上等だし、どこぞの若様が お忍びで遊びに来て

お連れのヒトと はぐれたのかも。

「お連れの方は?」

その人は、かすかに 横に 首を振った。

「ちょっと、失礼しますね」

そう言って、その人に 私が着ていたローブを着せ、ひょいと お嬢様だっこする。

こう見えて けっこう 力持ちなのよね、わたし。

そうして、人影のない 建物の裏手に運び、そっと降ろす。

常備している 胃腸薬を取り出し 手のひらにさし出して すすめる。

「精霊殿で 作っている 薬です。どうぞ」

てのひらを みつめるものの、その人は 口にしようとしない。

「あっ、そうですね。では、失礼して」

薬をゴクンと飲み込み、害のないものだと 証明する。

若様も そうだけど、高位におられる方々は 口にするものに 異常な注意を はらう。

それが 国の中枢に近ければちかいほど、払われ方も より 厳しいもの。

一応 若様も 王族の血を引くお方だったから、食べ物には 気を使っていたっけ。

ーよく 洗ってもいないのに 森で見つけたものを 口に突っこんでいたよね。

 よく 怒られなかったものだわ(-ω-;)

おそらく この人も そういう類の ひとなんだろう。だったら なおさら 気をつけるべきなのにね、ったく。

あらためて 薬を差し出し、すすめる。

それでも、頑として 飲もうとしない。

「ああもうっ!いい加減に しなよ!」

そう言って 無理やり薬を押し込み、後頭部を パチンとはたく。


ゴクン。


飲み込んで 目を白黒させる 耳元で、癒やしの言の葉を 綴る。

「平穏なる 時の 誘い、心と身体 安らかなれ。女神シェリーザの 笑みのごときに」


脂汗を そっと拭い、男のヒトに 微笑みかける。


「もう、大丈夫です。しばらくしたら、動けるようになれますよ。

 では、ごきげんよう」


そういって 私は 帰路へとついた。男のヒトの 熱い瞳が 後ろ姿を追っていたことも 気づかぬまま。



世間にうといわたしが、その人が 世継ぎの君だなんて 知るはずもない。

興味も ないけど。

よくみりゃ、若様に どこか似ているな~ぐらいの もんだったから。

後から あの人の正体を知らされ、冷や汗たらたらものだった。

だって、あんまり頑固だから 無理やり飲ませたんだもの。

けれど その時は、飲む気力さえ残ってなかったんだと・・・


若様に さんざん嫌みを言われたのは、いうまでもないけれど。

ーだが、人に知らせずにいてくれて ありがとうよ。

その顔で お礼なんかいわれても ちっとも ありがたくないんだよね。


お父上のもとに戻ってから、何かといっちゃ 精霊殿を訪ねてきては 嫌みばっかりこぼしていく。

領主業のお勉強中だとかで、巫女長さまに 教わりにきてるらしいけれど。

若様がくると キャーキャーうるさい巫女連中には目もくれず、ただ教えをこい 私に嫌みをいって 帰っていく。

まあ 命の恩人だってこともあるのか、私に会うことは 当たり前であり 恋のうんぬんには 関係ないと 思われていたらしい。

まあ、日頃の 私の姿を見てれば、そう思うのも 無理らしからぬ ことだから。


だから、婚約したって発表されたときの 騒動は、物凄いものだったそうだけど。

(その場にいなくて、本当に よかったかも(-ω-;)


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