想う気持ち
眠っていたのか、天井が見える。
起きようとするが脚に違和感を感じ状況を思い出し、上体をゆっくり起こすと、猫娘が足下の布団に頭を乗せ眠っていた。
「ミィ、ミィ。
起きてくれ、動きづらい」
「ん、ん〜。
レイヴ!
気づいたにゃ!
気づいたにゃ〜!!」
飛びついてくるミィをどうこうすることも出来ず、されるがままに頭を撫でてやった。
「心配かけたな。
ミィも看病してくれたんだろ?
ありがとうな」
「ううん……本当に……本当に危なかったんだから……」
言葉を詰まらせ涙を拭っているが、笑顔をみせている。
「そうだっ!
あれから、どのくらい経った!?」
「一日経ったにゃ。
もう試合は始まってレイヴの出番まではもう少しあるけど、やっぱり出るにゃ?」
まだ痛みはあるが、刺されたとは思えない程度に痛みは引いている。
「あぁ。
このくらいの痛みなら平気だ、やれる」
「なら、ちょっと待つにゃ。
ホントに大丈夫なんだにゃ?」
猫娘の問いに首を縦に振ると、そそくさと部屋を出て行った。
オレが目を覚ましたことの報告だろうと安心しつつ、双剣のことが気に掛かっている。
誰を助けようとしていたのか、オレを殺すよう頼んだのは誰か、そして彼の過去。色々と謎を残したままの結末になったことで、少し苛立ちを感じた。
「レイヴぅ!
気が付いたのね!
良かったぁ」
ドアを思い切り開け放ち、姉妹が胸に飛び込んできた。ルニはともかく、リズは声を上げるほど大泣きしている。
「二人とも、心配してくれてたんだな。
もう大丈夫だから、泣き止んでくれないか」
苦笑いをしてしまうが、オレのことで涙してくれるのは嬉しくもあり、少し照れもあった。腐街にいた時なんて、怪我をする度に女医のマリ姉に怒られてばかりで、涙してくれるなんてことは一度もなかった。
その為、こんな時はどんな風に対応していいのか分からない。
「意識を失った後、どうなったんだ?
毒が仕込まれていたらしいんだが」
「ここに、医務室に運んだんだけど、どんどん血の気が引いていって。
みんな毒だと気づいたんだけど、色んな解毒が効かなくてね。
そしたらミィが……ね?」
「ん?
ミィが何かしてくれたのか?」
ドアの前にいるミィを見ると、顔を赤らめ首を振っている。
「いいにゃ、いいにゃその話は!
それより、ほら、二人共離れるにゃ。
出番が来たら呼びに来るって言ってたにゃ」
何だか附に落ちないが、ミィが手を尽くしてくれたことには違いない。
二人が離れ、あの後の双剣の話なども聞いたが、これといった情報もなく気になることが何一つ解決しないままになった。
すると、アルバートが迎えに現れたので一緒に闘技場へと足を向けた。
「よく無事でしたね。
しかし、その足で大丈夫なのですか?」
「刺された割に痛みがあまりないんだ。
連れが手当てしてくれたらしいんだが。
それより相手はアルバートじゃないのか?」
「残念ながら。
しかし、相手には申し分ないですよ。
私と差のない熟練の騎士なので」
「アルバートと同格だとかなり厳しい状況なんだな」
「そうでもありませんよ。
熟練で私と変わらないと言っても、熟練だからこその癖を持つ相手ですから、そこに気がつければ勝機は十分にあります」
「なるほどな。
勝機があるなら、そこにかけるまでだな」
騎士になる為の闘いなので、相手の詳しい弱点などは聞けないらしい。
「それでは、私はここで見物させて頂きますよ」
鉄格子のある階段で足を止めると、アルバートはここから見ると言う。
「応援してくれるんじゃないのか?」
笑いながら話すと、あくまでも公平性を保つ為、応援は出来ないらしい。
健闘を祈られ、階段を登ると今までにない拍手喝采を浴びせられた。そして、中央には待っていたと言わんばかりに剣を持て余している、老齢の騎士が立っていた。