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ネコ耳ばすた~ず   作者: 七海玲也
偽りの婚約者
25/31

好きになるということ

「ま、まさか、予言を……見誤ったというのか」


「貴様がいたおかげで、メイルが……オレの元から離れていった!

 国を想うメイルならその予言、従うだろう。

 だがオレの気持ちは……メイルやオレの気持ちまで奪う予言など……。

 予言などこの国には必要ない!」


「わ……私は、幼い頃から……二人を見てきたが……。

 そうであったか。

 あの、仲睦まじく微笑む、二人のままで……あったか」


「許せ、ディバイル。

 この国もメイルも守ってみせる」


「ははは……。

 間違っていたのは……私……だったのかも、知れません…………な…………」


 あまりの衝撃的展開に言葉に出来ず、ただ茫然と見ているしかなかった。

 それは、オレの発言が元になった結果だったかも知れないからだ。


「ここまで来たのだ。

 貴様がなぜ婚約者なのだ?」


 アーサーはディバイルを静かに横たわらせると、オレに向かい問い掛ける。その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「それは……メイルに直接聞くといいさ。

 ディバイルが予言者で亡くなった今、オレがこの国に留まる理由は無くなった」


「そうか。

 少なくともディバイルに関連していたと。

 すまないな、命を狙い」


「いや、まさかメイルに意中の人がいるとは思っていなかったから。

 オレも、軽はずみな行動だったのかも知れない」


「では、部屋に戻るがいい。

 メイルを問いただし、その後のことは追って連絡するとしよう」


 背を向けたアーサーに返事をし、大広間を後にすると仲間達の部屋へと足を向けた。

 オレ達の今後にも影響があるこのことは、一刻も早く知らせるべきだと。





「どうしたにゃぁ、こんな夜中にぃ」


「悪いな、寝てたところ。

 予言者についての展開があったんだ。

 と、ミィ……その格好」


「にゃ……!

 バカレイヴ!」


 薄着だったミィが乱暴に扉を閉めると部屋の外で待たされ、しばらくすると、ルニが中へと招き入れてくれた。


「リズは寝かせておいていいでしょ? 

 ミィは……落ちついたら出て来ると思うけど」


「だな。

 急展開だったから、話したほうが良いと思って」


 ソファに落ち着くと順を追って細かく話すが、途中ミィが出て来たおかげでややこしくなってしまった。


「だから結果として、ディバイルは予言者だったんだが、それを騎士隊長のアーサーってやつが殺し、アーサーはメイルと恋仲だったってわけさ」


「すると、この国には居る必要が無くなったってこと?

 これで大丈夫かしら?」


 ルニは物分かりが良くて助かる。


「解決したってことでいいにゃ。

 女王とも、ようやくお別れにゃ」


 ルニとは違い、なんとも楽観的な猫娘だ。こうも真逆な性格なのに気が合うとは、不思議で仕方ない。


「解決に至ったかどうか。

 アーサーがメイルに依頼内容を聞くみたいだが、ことによっては破局になったり、ディバイルの時のように怒りのあまりメイルをってことも。

 確実に無いとは言い切れないからな」


「そう思うわ。

 レイヴへの嫉妬で暗殺者を雇ったり、恋路の邪魔をしたディバイルを殺したり。

 そういう人こそ、どう出るか分からないわね。

 一途なのには憧れるけど」


「まだ何か起きるかもにゃ?

 この城の中は複雑にゃ」


 人間が多く集まるところでは、それだけ多くの想いもあり、一筋縄ではいかないってことだろう。特に、愛や恋、嫉妬や怒りなど強い感情が行き交う中では。


「もし何か起きるとなれば、それが一番大変な事になってくると思う。

 そして、唯一邪魔なのが、全てを知っているオレ達ってことだ」


「リズも居るのに、それはマズイにゃ。

 夜襲も有り得るってことだと、どうするにゃ?」


「そこなんだが。

 オレが部屋へ戻ったら、ここもオレも危ういかも知れない。

 となると、オレがここにいるべきだと思うんだが、さすがに少しは眠りたい」


「私は別にいいわよ。

 リズを守るのが私の役目だから。

 あとは、ミィさえよければだね」


 これだけで言いたいことが伝わったらしく、にやけ顔でオレとミィを交互に見比べる。


「べ、別にレイヴがこの部屋に居たって、わたしだって構わないにゃ。

 わたしのベッドはあっちだし、勝手にソファで寝てればいいにゃ」


 やっぱり話さなきゃ伝わらないのかと、意を決してオレがと思ったがルニがすかさず後を持ってくれた。


「そうじゃないのよ、ミィ。

 レイヴがここで寝てるときに襲われたら、誰がすぐ助けてくれるの?

 私達が寝室にいたら助けるのが遅れるわ。

 誰かがレイヴと一緒にこの部屋にいてあげないと。

 でも、私はリズの傍にいてあげたいし。

 となると……」


「わたしにゃ!?

 で、で、でも、ここにはソファが一つと、イスくらいしかないにゃ! 

 ど、ど、ど、ど、どうやって寝る気にゃ!?」


 なにを焦ってるんだか、一緒に野宿だってしたことがあるというのに。


「オレがソファで寝る。

 ミィは床で寝るか、それともさっきまで寝てたから起きててもい……」


 冗談のつもりで言ったんだがルニには通じてなかったらしく、オレの脇腹をつねると、ミィにソファで寝るように言った。


「最初から床で寝るつもりだったさ。

 これでも、床で寝るのは得意だからな」


「だったら分かりづらい冗談は止めて。

 しかもこんな状況で」


 警戒しなければいけない状況のことか、惚けているミィの状況のことか、どちらのことかは分からないが、とにかくミィの了解を得ないことには。


「ミィがソファで、オレが床。

 これでいいか?」


「いい、いいにゃ。

 ただし、近づいたらタダじゃおかないにゃ。

 寝ててもわたしの耳は健在なんだからにゃ!」


 それを知っていたから、ここで寝ると言ったんだが。こういった状況だと、ミィの耳に頼るしかないのだから。


「リズが寝てるんだから、本当に変なことは止めてね。

 私だってレイヴ達と気まずくなっちゃうんだから、本当にお願いね」


 そこまで信用がないのかオレは。


「それじゃあ、何かあったら起こしてね。

 おやすみなさい」


 毛布をよこすとルニが寝室へ戻り、ミィが部屋の灯りを消すとソファへと横たわる。


「なぁミィ。

 恋愛感情って、大変なんだな」


 しばらく横になっていたが、まだ寝息は聞こえず起きている様子だったので、少し話そうと声を掛けてみた。


「な、何をいきなりにゃ。

 大変だとは思うけど、誰かを何かを犠牲にしてまで愛するとか、まだ分からないにゃ」


「だよな。

 そりゃ、場合によっては障害もあるだろうが、殺めたり陥れたりすることが、本当の愛なんだろうか……」


 女王と騎士、そこまでの障害は無かったはずなのに、たった一つの予言でこんなことにまで発展してしまった。


 暗い部屋で話すと、なんだか落ち着いて語り合える気分になるが、色々あったおかげで瞼が重くなってきた。


「どうなんだかにゃ。

 レイヴは誰かを……誰かを好きになったり……愛したことってあるかにゃ?」


「オレか?

 オレは………………」




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