国と人
「ディバイル殿。
何故こんなところに」
「それよりもだ、アーサー殿。
この男と、こんなところで何をしておる?」
「何と言われましても、見たままですよ。
こいつは陛下をたぶらかし、この国を乗っ取ろうとする国賊だったのです」
「なんとっ!
やはりそうであったか。
どこぞの者とも分からぬ奴に陛下がなびくワケがない。
アーサー殿、私が見届け人になりましょう」
「お願い致します。
国賊であるお前は、この国に必要はない!」
勝手に国賊にまでされ、黙って受け入れられない。
しかもこの状況、ディバイルを直接問いただす良い機会でもある。
「ディバイル。
オレはあんたが予言者だと思っている」
「予言者?」
オレの話が気になったのか、今にも切りかかろうとしたアーサーは足を止めると耳を貸してくれた。
こうなれば、一気に畳み掛けるしかない。
「アーサー、ディバイルがメイルに助言したりしているところに居たことはないのか?」
「それはある。
しかし、側近であれば助言など当たり前。
予言者とは一体なんだ?」
「その助言ってのは的確、というより言い切ってなかったか?
予言者とは、未来を予言し都合のいい方へ導く集団のことさ」
これにはディバイルも反論の意を示した。
「なにをバカな。
そもそも、そんな集団がいるものか!
アーサー殿、国賊というのは本当ですな。
まさか、私を陥れようとするとは」
「予言者……。
その話、真実なのか?」
アーサーがディバイルに疑念の目を向けたので、オレ達の目的を話す時がきた。
「いることは間違いない。
オレ達は予言者を捜している途中だったんだが、メイルから聞いた内容が予言めいてたから気になっていたんだ」
「ふん、くだらない。
アーサー殿!
たぶらかされてはいけませんぞ!
こうやって陛下をも騙したということか!」
「ディバイル殿。
この国の仕来たりである騎士の中から王を決めるという条件、決めたのは確か……」
「陛下のお父上、前王であろう。
何をバカな」
「確かに前王であるが……。
提案したのはディバイル殿、貴方だと私の父上から聞いてますぞ」
「そう……でしたかな?
随分と昔のことなので忘れてしまいましたな」
「では、先日の話でも致しましょうか?
なぜ今回の剣闘技祭を中止にしようとした?
現在、帝国とは停戦中であり国も安定している今、中止にする理由がどこにあったというのですかな?」
アーサーが感じていた不可思議な言動について疑問をぶつけると、ディバイルは不敵な笑みを浮かべ始めた。
「ふっ、ふっ、ふふふ、ははははは。
これはこれは。
これ以上は言い逃れできませんな。
そうですよ、私は予言者の一人。
しかし私はこの国、いや、王家に忠誠を誓っているので他の予言者とは違う立場なのですよ」
「言い換えれば、自分の予言通りに国を動かしているとならないか?」
ようやく認めたが、あくまでも国の為と言い張るディバイルに噛みついた。
「ものは言いようというのですか。
ならば、ここまで安定させたのは何だ?
私の予言があったからではないか?」
「ディバイル殿……ならば何故、今回の剣闘技祭を中止にしようとした?」
「私が見たのは、闘技祭による革命。
この国が変わってしまうと、平安が終わると。
王が決まり、戦争に突入する可能性があるのですよ」
闘技祭の開催は行われたが、王さえ決まらなければ戦争の回避が出来ると思ったのか。
「それで、オレを嫌がっていたということか。
なら何故、この国に関わりある騎士は王になってはいけないんだ?」
「なに!?
それは……どういうことだ?」
メイルから聞いたことを突っ込むと、アーサーは知らなかったとばかりに驚きの反応をみせた。
「ちっ、余計なことを。
陛下も口が軽いお方だ」
「ディバイル殿!!
どういうことだ!?」
アーサーが突然声を張り上げディバイルに詰め寄る。
「この予言の大切なところが、この国からの出身の騎士なのです。
私が前王に忠誠を誓いこの国を平和にしようとしていた頃、この国から王になった者が戦争を起こし、私の命が断たれると予言してしまった。
これを王に話し協議した結果が、今の仕来たりになったというわけですよ」
そういうことか。国だけではなく、自分の命にも関わると。
しかし、それではメイルの気持ちはどうなる、またも個人は無視されるというのか。
「やはり、れっきとした予言者だな。
やれ国の為だ世界の為だと、個人の意思や理想を無視する、そのやり方は前に会った奴となんら変わらない」
「どの予言者と会ったのかは知らんが、国が平安であれば個人の幸せにも繋がるのでは?
その予言者も同じ考えであったと思うが」
「そう、あいつも同じ考えだったよ。
目の前の事を犠牲にしようとも、世界を、人類を救おうとな。
だからオレは予言者と、未来と闘うことを選んだ」
「やはり貴様であったか、予言にあった革命者は。
だから私は開催に反対したのですよ、アーサー殿!」
「この国の出身であるオレは、王には成れないということか?」
王に成れないのが衝撃的だったのか、今までよりも更に暗く重い声色になっている。
「残念ながら。
いくらお父上と同様に親衛隊を率いる位になろうと、予言通りになるのは避けねば。
アーサー殿も国を焼きたくはあるまい。
そうであろう、アーサー殿?」
「だから、メイルは……。
しかし何故……」
問われたアーサーが一人事を言い、何やら考えている様だった。
「メイル……。
……だがオレは!」
アーサーが声を張り上げると同時に動き出すと、ディバイルと体が重なった。
「……アー……サー……殿?」
「オレは……オレは貴様の未来には従えない!」
一瞬の出来事に目を疑った。
まさかアーサーの剣がディバイルの腹部を貫くとは、全く予想だにしていなかった。




