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ネコ耳ばすた~ず   作者: 七海玲也
偽りの婚約者
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男心



 話の最後にルニとリズには涙していた。


「そんなことがあったなんて……。

 簡単にここに留まってもいいなんて言って。

 ……ごめんなさい、ミィ」


 軽い気持ちで発言したことの重大さを感じたらしく、姉妹が深く頭を下げた。


「ううん、大丈夫にゃ。

 寂しくて苦しい思いもしたけど、こうしてまた二人と出会えて嬉しく思ってるにゃ。

 だから謝ることなんてないし、これからも仲良くしてて欲しいにゃ。

 わたしの家族として、にゃ」


 笑顔をみせるミィに、余計に泣き出した姉妹が胸に飛び込む。その姿はまるで本当の姉妹のように思えた。


「レイヴご一行様、おられますでしょうか?」


 扉を叩く音と共に誰かがこの部屋に訪れた。


「はい、どうしました?」


 ルニが返事をし応対に当たろうと扉まで近づくと、続けて声がした。


「夜分遅くに申し訳ございません。

 レイヴ殿はこちらにおられませんでしょうか?」


 オレへの用だったらしく、ルニに目配せをすると自分で扉を開けると若い兵士が立っていた。


「おぉ、こちらでしたか。

 申し訳ございませんが、私に同行していただけませんでしょうか?

 是非ともお話されたいと仰る方がおられまして」


「ん?

 まぁいいが、誰なんだい?」


「一緒に来ていただければ、お分かりになりますので」


 一体、誰が何の用だ。


「ちょっと待つにゃ。

 それは男なのかにゃ?

 女なのかにゃ?」


「男性でございます。

 それ以上は会っていただいて、ということでして」


 どうしても言えないらしく、申し訳なく思っているのがひしひしと伝わってくる。


「そこまで心配しなくても大丈夫だろ?

 城の中なんだから。

 ちょっと行ってくるから先に休んでていいぞ」


「にゃあ、いってらっしゃぁい。

 また、明日だにゃ」


 ミィに続いて姉妹とも挨拶を済ませると、兵士と共に歩みだした。

 壁に据えられた松明に照らされた廊下に二人分の足音が響き渡る。

 腐街(ス ラ ム)に居た頃は、城の中を歩くなんて想像もしていなかったなと思うと、今の状況が不思議でたまらなくなる。


「こちらでございます。

 私はこれで失礼致します」


「ちょっ!

 ここは……」


 兵士に呼びかけるが一切振り向くことなく、足早に行ってしまった。

 ここは剣闘技祭の控え室にもなっていた大広間、こんなところに一体誰が。


「レイヴだが、誰かいるのか?」


 薄明かり中、人影が見当たらず声をかけると、柱の影からゆっくりと姿を現した。


「来たか。

 待っていたぞ」


 聞いたことのある声。

 これは、確か。


「もしかして、親衛隊隊長のアーサーか?」


「いかにも。

 なぜ、ここに呼んだか。

 分かるか?」


「全く。

 妬まれているのは分かっているが、それ以外は何も」


 今までの態度から確実に妬まれてはいるのだが、騎士としては女王の決定には従うと思うと思っていたが何か不満があるのだろう。


「ふんっ。

 妬み、か。

 確かにな。

 貴様から今回の婚約を破棄するつもりはないのか?」


「ちょっとワケありでね。

 どうしても、破棄することはできないんだ」


 本当の理由はまだ話さない方がいいだろう、いくらメイルの側近だとしても。


「ワケあり、だと?」


「あぁ。

 言えないが、ちょっとな」


「貴様、陛下を利用しようとしているのか!?

 愛もなく近づくとはっ!」


 この音は、鞘から剣を抜く音。影の(かたわ)らには、薄明かりに反射する銀色の刃。


「ちょっと待て!

 メイルから婚約すると」


「問答無用!

 国を乗っ取る国賊として成敗するっ!」


 真に迫る勢いで向かってくるアーサーに、オレが応戦するわけにはいかない。


「待てって。

 国を乗っ取るつもりはない!

 オレは……」


 危うく言ってしまうところだったが、アーサーの剣を避けるのが先だった。


「乗っ取るつもりもなく、メイルに取り入るか!

 愛あらば許すつもりだったが、貴様は許せん!」


 あまりの怒りに剣撃は雑だが避けることも難しく、護身用に持っていた小剣を取り出す。


「ふん!

 正体を現したか。

 しかし、そんな武器ではなっ!」


 攻撃する気がない分、受けかわすことに集中はできるがどうにか分かってもらわなければならない。


「誤解だ、誤解!

 オレはあんたと闘う気はない!」


「ならば、おとなしく打ち取られれば良かろう!」


「そんな簡単に死ねるわけないだろう!」


「あの時に死んでいれば良かったものを!」


「あの時?

 闘技祭の子供と闘ったとき……まさかっ!」


「そういうことだ。

 まさか、子供だとは思いもしなかったがな」


「抽選の時にいたのも、オレが勝ち上がったときの為に細工したのかっ!?」


「なかなか頭の回転がいいな。

 ただ、気づいたところでもう終わりだっ!」


 これ以上はと思った寸でのところで、扉の開く音がすると人の気配がした。


「誰だ!

 こんなところにっ」


 アーサーが声を上げると消されていた残りの灯りに火が灯った。


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