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ネコ耳ばすた~ず   作者: 七海玲也
人の想い
20/31

突入〔過日譚 九〕

 小さな塔の隣には厩舎などがあり、そこには馬車も停まっていた。


「あそこだろうな。

 だが、どうやって入る?

 あの警備兵をどうにかしないと」


「武器も持ってるにゃ。

 こっそり入るにはムリがあるにゃ……そうだ!

 わたしが囮になるにゃ!」


「どうやって?」


「多分、わたしを見ると追ってくるにゃ。

 中に母さんがいるなら人猫(ワーキャット)は捕まえたいハズにゃ」


「危険だがやってみるしかないか。

 ただ、二人を引きつけないと意味がないぞ」


「わたしを誰だと思ってるにゃ?

 これでも猫なんだから、人間になんて簡単に捕まらないんだにゃ」


 捕まって人間界に来ていることを忘れているのか?


「なら魔法銃(マジックガン)の射程まで引きつけてくれ。

 オレが飛び出したら、すぐに撃つから気をつけろよ」


「了解にゃ。

 すぐ連れて来るからにゃ」


 廃屋を背に一人機会を待つ暗闇の中、魔者たちの呻き声がより緊張を高ぶらせる。

 失敗でもしたら、ミィの母親を助け出すことは困難になるだろう。そう思うと握る魔法銃に力が籠もり、一瞬一瞬がやけに長く感じる。


 どれくらい待っただろうか、足音と声が薄っすら聞こえ始めた。

 壁づたいに覗き見ると動く影は三つ、上手くやってくれてるみたいだ。

 段々と近づいてくるのが分かり、飛び出す機会に集中する。近すぎるとミィに当たり、遠すぎると魔弾が届かず、魔法が発動してしまう。


「…………………ミィ!!」


 飛び出し、叫ぶと同時に魔弾が一直線に飛んでいく。

 タイミングは完璧、ミィが飛び退くと後には【魔縛(バインド)】に捕らわれた警備兵がもがいていた。

 すぐさま駆け寄り小剣を向けると、観念したのかもがくのも止めた。


「聞きたいことがある。

 あそこには何がある?」


「……知らねぇな……」


「一人、淫魔女(インキュバス)の餌食にすれば言ってくれるかもにゃ」


 しらばっくれる警備兵への苛立ちからか、ミィらしからぬ思いもよらない発言をした。


「オレが話す!

 何でも言う!」


「この状況だ、それが正しいと思うぞ」


 ミィの脅しをより本気に取らせる為、合いの手をわざと入れる。


「オ……オレも言うから、淫魔女は勘弁してくれ」


 なんだかアルの言動に近くなっている気がして、微笑んでしまった。


「ホントだ!

 本当に言うから!」


「ん?

 あぁ……では、あそこはなんだ?」


 暗い中で微笑んだのが項をそうし、脅しではないように見えたのだろう。


「あそこは施設。

 研究施設だ!」


「貧民や奴隷を連れて来ては、人体実験や魔法の抽出をやっている!」


「そう!

 魔者も捕まえて研究やらしているところだ」


 聞いてもないことを言ってくれるところをみると、何でも教えてくれそうだ。


「なら最近、人猫が運ばれてこなかったか?」


「来た来た!

 運ばれてきた。

 噂じゃ、どっかの研究所から運んで来たって話だ」


「あぁ、特別扱いされてたみたいだったな。

 魔術師みたいのが数人一緒だったって」


 ここで正解だったようだ。


「どこにいるにゃ!

 どうやって入るにゃ!」


 目の色を変えたミィが首筋に爪を立て、一人に詰め寄った。


「ひぃっ!

 う、裏口から入れば誰にも見つからず行ける、と思う」


「そ、そうだ、今ならそこは手薄なハズ。

 夜は魔者の進入を警戒するので手一杯だから」


「裏口ってどこにゃ!?」


「そ、それなら厩舎の中、奥に鉄格子があるからその中に入口が。

 こ、この腰の鍵で開けられる」


「行くにゃ!

 レイヴ!」


「だな!

 と、その前に。

 悪いが今度は眠っててもらうよ」


 去り際に振り向き警備兵に【魔痺(ショック)】を打ち込んでおく。魔法の効力は永遠ではないが、起きていられると面倒になるかもしれない。


 辺りの警戒も忘れ、裏口へ向かうミィを追いかける。

 相棒のように感じていた背中を見ていると、まだ少女なんだと忘れかけていた思いが呼び起こされる。


「この奥だにゃ。

 レイヴはお馬さんが騒がないように、静かにゆっくりついてくるにゃ」


 猫だから馬の扱いにも慣れていると信じ、ぴったりと後ろについていく。が、扱いがどうこうではなく、聞きなれない言葉を発し話をしているようだ。


「静かにしてれば、騒がないって言ってるにゃ」


 ミィを信じ馬を横目に静かに通り過ぎると、牢獄のような鉄格子に囲まれた部屋に扉があった。



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