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ネコ耳ばすた~ず   作者: 七海玲也
人の想い
16/31

約諾の別離〔過日譚 五〕

 アルが身を(ひるがえ)し、放たれた魔弾は後ろの壁に当たり電気を放出した。

 魔弾を避けたアルは所長の手を取り背負い投げると、次々に魔法銃を構え出した所員へと向かっていく。

 咄嗟(とっさ)のことに出遅れたが、オレの銃口からは【魔縛(バインド)】が一人を捕らえていた。


 両方からの攻撃に慌てている所員にアルが突っ込むと、片っ端から投げ飛ばしていく。


「慣れてもねぇやつが、武器なんて構えんじゃねぇよ!」


 アルの一喝にまだ武器を構えている所員は次第に武器を捨て、手を挙げだした。

 安全を確認しているのか、ミィと依巳莉(え み り)、オルドが物陰からこっそり伺っている。


「依巳莉、もぉ大丈夫だから出て来い。

 んで、レイヴ達もこれを見てみろ」


 アルに呼ばれ先程の紙に目を通すと、所長の言っていた通り人猫(ワーキャット)を魔都ルドルへと移送するよう書かれている。

 サインも書かれているようだが、いざこざで破れ『ランカスター』の名しか読むことは出来なかった。


「これでここにはもぉ用はねぇな。

 コイツらはどぉすっかな」


 腰の剣に手を伸ばすの見て、慌てて制止した。


「殺さずともいいだろ。

 ここから出るのに役立たせてもらおう」


「どぉ役立たせる気だ?」


「所長以外は凍らせて、所長と共に出たら怪しまれないだろ?」


「なるほどな。

 事故に見せかけたら、オレらも安全ってワケか」


「所長にとっても公にはしたくないだろう、表向きはまともな製造所なんだから」


 納得したアルが気絶している所長を叩き起こすと、経緯を説明した。


「んじゃまぁ、やってみようか?

 オレがやるからみんな出てな」


 アルに【氷結(フリージング)】を装填した魔法銃を渡し、所員を残し部屋を出た。

 中の様子が気になるが、二重の扉が音を遮り、何も聞こえてこない。


「こいつはすげぇな。

 魔法の代わりってのには納得するぜ」


 待つこともなく、扉が開くとアルが魔法銃を回しながら出て来た。


「上手く出来たのか?」


「心配無用だな。

 みんなカッチカチだぜ。

 さ、行こうか」


 所長に連れ添われる形を取ると、外まで何事もなく出る事が出来た。

 舌打ちを残した所長が去り、オレ達は今後の動向について話し合った。


「魔都ルドルにはオレとミィだけで行くよ」


「オレらは必要ねぇってか?」


「そうじゃないさ。

 あの姉妹のこと、お願いしたいんだ」


「それならよぉ、セレンに見てもらってんだからいいじゃねぇか」


「約束したんだ。

 オルドの所から解放されたら面倒を見ると。

 これからオレ達はどうなるか分からないのに、セレンだけに任せてもおけないだろ?」


「そりやぁそうだがよ。

 それなら後から合流するってのはどぉよ」


「危険な場所に姉妹を連れて行く訳にも行かないし、一刻をあらそうかも知れないんだ。

 オレ達が無事ならどこかで会うこともあるだろう。

 その時まで姉妹を頼みたいんだ、オレ達の代わりに」


 ここまで首を突っ込んだので、最後まで見届けたいのだろう。悩むアルの肩に依巳莉の手がそっと置かれた。


「ねぇ、アル。

 ここは引き受けましょ。

 行きたい気持ちも分かるけど、あの子達の気持ちも考えてあげて。

 多分、あの街から早く出たい筈よ」


 あんなことをさせられていた街に、いつまでも居たい訳はない。その辺りを理解出来るのは女性ならではといったところか。


「依巳莉が言うなら、まぁ仕方ねぇか。

 オマエら絶対死ぬなよ。

 姉妹は預かるだけなんだからな。

 いつか必ず引き取ってもらう、なんせ女二人で手一杯だからよ」


 と言った瞬間アルの尻に依巳莉の蹴りが飛んだ。


「あんた、私がいつ世話を焼いたってのよ!

 あんたの方がよっぽど大変よ!

 あっちに首突っ込んで、こっちに首突っ込んで、振り回されてんのはこっちなんだからね!」


 あのアルが尻に敷かれているなんて、まるで長年連れ添った夫婦のような感じにさえ思える。

 必死に弁解するアルの姿があまりにも滑稽で、ミィと共に笑ってしまった。


「ま、まぁ、なんだ、オマエら約束したからな。

 当分の間は大陸にいるつもりだから、それまでのお別れだ」


「あぁ、姉妹のことは頼んだよ。

 必ず迎えに行くと伝えてくれ」


 固い握手を交わすと、オルドを連れ暗がりの中に消えて行った。







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