人としての価値〔過日譚 二〕
酒場から一直線にルザ・オルド商会に向かうと、先程の騒動からさほど時間が経っていない為、商会員の出入りが激しかった。
「あっ!
あんた達……まだ何か用かい?」
襲撃の際に立ちはだかった艶やかな成りの娼婦が、包帯姿で焦っていた。
アルの体術で失神までされたのだから無理もない。
「会長さんは居るかい?
まさか、もう逃げたわけじゃないよな?」
「か、会長はまだ部屋にいるよ。
あんた達がやった後始末があるから、ね……」
「そりゃどうも。
また会わせてもらうよ」
娼婦が包帯を巻いた腕を抑え、怯えながら道を譲った。
慌ただしい屋敷の中を進み地下へ降りると、壊れたドアの奥に会長の姿があった。
ここは全てアルに任せようかと、口出しはしないようにする。
「よぉ!
また来たぜ。
って、そんな驚くなよ」
アルの呼び掛けにびくりと身体を動かし固まっている。
「な、何の用だ!
もう話したし、約束しただろう!」
「てめぇ。
ガキだと思ってナメてんじゃねぇぞ!
のうのうと歳を重ねてきたヤツに人としての価値なんてねぇんだ!」
明るい口調から一変し荒い口調に変わると、オレの腰から魔法銃を取りオルドへ銃口を向けた。
「ま、待て待て!
分かった!
分かったから、下ろしてくれ!」
「オレらみたいな地べた這いずり回って必死に生きているヤツこそ、生きる価値はあるんだ!」
あまりの怒号に思わず制止したが、まだ収まる様子はなかった。
「分かるよな?
来た意味が。
どこのどいつだ、あんたに頼んだヤツは。
嘘をついてもムダだからな、ある程度の予想はついてんだ」
「ね、猫娘を見つけて連れて来いと頼んだのは……ここから程なく行った場所にある製造所だ」
「製造所ねぇ。
つーと、製造所にある研究施設ってとこか」
銃で頭を掻くと何か考えているようだ。
「よし!
お前も一緒に来い。
嫌とは言わせねぇ」
「わ、分かったから、もう下ろしてくれ。
しかし、一緒に行ったからといって入れてもらえるかどうか」
「それなら問題ねぇな。
猫娘なら居るからな」
アルがこちらに目線を向けたので、ミィを前に出しフードを取った。
「ま、まさかこの目で拝めるとは。
しかも、君たちの仲間だったのか」
「まぁ、そうゆうこった。
じゃあ、早速案内してもらおうかい?
会長さん」
「い、今からなのか?」
「まぁな。
助けなきゃいけない人がいるらしいんだわ」
魔法銃をオレに返すと、会長をオレ達の前を歩くよう指示し屋敷を出た。
「あくどいな。
何か、やり方が悪い奴らと変わらない気が……」
オレのふとした一言が、アルを真剣な表情にさせた。
「あくどいねぇ。
まぁ見方によってはそう見えるかも知れないがな、力を持ってる悪に立ち向かうには、渡り合うにはどうすればいいと思う?
法の裁きを待つか?
神罰を待つか?
オレが正義とは言わないが、力のある者が力を使うべきなんじゃないか?
まっ、これは持論だからな、考え方は人それぞれさ」
最後にはいつもの軽い感じに戻ったが、なんとも胸に刺さる言葉だった。色々な経験を繰り返して辿り着いた考えなのだろう。
「レイヴ、先に行っててくれ。
セレンに伝えてくる」
酒場近くでアルが離れて行き、オルドを先頭にしたままフェアリアを出た。
アルが離れたことで、オルドが行動を起こすと思ったが素直に前を歩いてくれている。それもこれも、アルの仲間である依巳莉が注意深くしてくれているからだと思う。




