女王の決断
「レイヴ殿!
レイヴ殿!
おられますか!?」
朝も早いだろうに、聞いた事のない声と扉を叩く音に起こされた。
「いますが。
どうかしましたか?」
「良かった。
朝早くに申し訳ございません。
至急、ご同行願いたく伺いました次第です」
「少し待ってくれ。
今行くから」
一体全体、何の用なのか検討もつかないが、刑の執行にはまだ早過ぎるだろう。
「よし、行こうか。
どこに行くんだい?」
ドアを開けると兵士が汗だくで待っていた。
余程急いで来たのだろう。
「会議の間です。
ささ、お急ぎください」
会議の間か。当事者のオレを呼ぶということは良い方向へ動いているのか、または全く違う用件なのか。
兵士に従い小走りに付いていくが、右へ左へとまるで迷路のようだった。攻め込まれた時を考えると、それもそうかと納得しているとようやく着いたようだった。
「レイヴ殿をお連れ致しました!」
大声で扉の向こうへ報告すると、中から返事があり通されると、また直ぐ扉があり今度は近衛兵だろう人物に止められた。
「只今、会議中である。
返事を待たれ」
何とも決められた台詞のように語られた。
「良いぞ。
中に入ってもらえ」
どこかで聞いたような声がすると、扉が開けられると長いテーブルに見たことのある人物達が着いていた。
「さぁ、レイヴも座って。
そこでいいわ」
メイル女王にディバイル、アルバートと老齢の騎士。そして、抽選時にオレを妬んで威圧的に接してきた騎士がいた。
オレと関わりある人物の中にこの騎士がいることを不思議に思い、メイルとは対称の扉に近い席に座った。
「レイヴを呼んだのは他でもありません。
今、剣闘技祭でご活躍なされた方々の騎士叙勲について会議をしておりました。
そして、これから貴方の行く末についての会議を始めるので、貴方にも来て頂きました」
やはりそうか。それならば、扉に近いこの席は最適かもしれない。
「陛下には申し訳ないが、やはり負けた以上は婚約は破棄して頂くのが妥当かと」
ディバイルから出る発言かと思ったが、未だ睨みつけてくる騎士の発言だった。
「しかし、親衛隊長殿よ。
私とは良い勝負をなされたぞ?」
親衛隊隊長だったのか。そこまで上り詰めて女王との結婚を掻っ攫らわれたら、妬むのも無理はないか。
「それでも、負けは負けだ。
部下に負ける程度の王などいらん」
確かに。親衛隊でもない騎士より王が弱いなど、士気にもかかわるだろう。
「落ち着いてアーサー。
決まりでは騎士に負けたとしても、才能がありそうなら叙勲はされるわ。
今までだってそうして決めてきたわ」
「陛下。
今回のことは今までとは違い、ただ騎士として迎え入れるのではなく、王として迎えねばなりません。
ただの騎士なれば私も叙勲には賛成致しますが、私だけではなく部下の者達にも影響が出かねない為反対しているのです」
「ディバイル、貴方はどうお考えかしら?」
やっとだ。さあ、どんな発言をするのか。
もしかすると、尻尾を掴むことが出来るかも知れない。
「私は当初から反対しておりました。
騎士でもないこのような若造と婚約などもってのほか。
それにアーサー殿の仰ることが的を得ているとおもいますが」
無難に抑えたのか、本音なのか。親衛隊長が先に反対してしまったおかげで、全て台無しになってしまった気がする。
「陛下。
わたくしも宜しいでしょうか」
「そうね、一番身近にいたアルバートなら色々知っているでしょう」
「では。
親衛隊隊長殿の仰ることは最もだと感じております。
もし、そのような方が王に成られても、私ども騎士の中から不満も出ることでしょう。
しかし、私が全くの素人を訓練したとしても、あそこまでの剣技を身に付けられるとは思えません。
余程の才能がない限りは」
「なんと!
レイヴ殿は全くの素人であったか!
それで私とあそこまで闘えるとは、余程才能があるとしか思えませんな」
そんなに褒められるとは思っていなかった。アルバートの教え方が上手かっただけだと思っていたが。
「付け加える訳ではないが、レイヴ殿は騎士道精神も持っておられるので、私としては王に成られても何も異論はないですがな。
そうではないかな騎士隊長殿」
アルバートが騎士隊長だったことには驚いたが、ここは黙っておこう。
「それでしたら今後もレイヴには鍛えてもらい、その後、正式に王になっていただくということであれば問題なさそうね」
ちょっと待て。それでは、ここにいるのが余計長くなってしまう。
だが、ここでオレが拒否するわけにもいかない。
「しかし、陛下……」
「それならば問題ないのではと……」
反対する理由がないように上手くまとめる力は、さすがと言ったところか。
「はっきりとした理由がない以上、これまでと同様に可能性を秘めているレイヴを叙勲対象と致します。
良いですね?
ディバイル、アーサー」
苦虫を潰したような顔を二人ともしているが、ここまできたら頷くしかないだろう。
「では叙勲式は三日後ということで。
宜しいですね、レイヴ。
他の方にも通達しておいて下さいね」
「かしこまりました。
では、会議はこれで終わりにさせて頂きます」
ディバイルが終わりの挨拶をすると、メイルがアーサーとディバイルを連れ添って部屋を出て行った。
それを見送った二人がオレに近づくと、賛辞を送り部屋を後にした。
「さて、どうしたものか」
独り言を呟き会議の間を出ると、ミィ達とばったり遭遇した。
「どうした?
こんなところで」
「べ、別に何でもないにゃ……ただ、レイヴが心配で」
「部屋に行ったら居ないから、兵士さんに聞いてきたの。
どうなったの?」
部屋に戻りつつ会議の内容をそのまま話した。
「……というわけだ。処刑は免れたが、このままここに長居するつもりもない。
ディバイルが予言者か問いただし、早急に出られるようするしかないかな」
ミィ達の部屋に入り今後を計画するが、またしてもオレの部屋と違い豪華だった。
男と女ではこうも差があるのか。
「私達なら、少しくらい長居しても別にいいかな。
お姫様みたいだもん。
ね、リズ」
リズはコクリと頷き満面の笑顔で姉を見上げた。
「おいおい、それは困るよ。
ミィが帰れる手段を見つけなきゃならないし、二度とあんな悲劇起こす訳にはいかないんだから」
言った後でしまったと思い横目でミィを見るが、落ち込む様子は無かったので安堵の息を洩らす。
「そうにゃ。
私達の仲間がまた同じ目に遭うかも知れないにゃ。
それだけは……それだけは避けなきゃならないにゃ」
少し力強く話すミィに姉妹も驚いた。
こんなミィは珍しい。
「レイヴ、わたしはもう大丈夫だから、あの後のこと、ルニとリズと別れた後のこと話して欲しいにゃ。
わたしはみんなを家族だと思ってるにゃ。
だから、ルニとリズにも知っておいて欲しいにゃ」
ミィの決意の言葉に少しだけ戸惑ってしまったが、いつも以上に真剣な眼差しに話す決心がついた。
姉妹と離れ研究所へと向かった時のことを。




