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ネコ耳ばすた~ず   作者: 七海玲也
女王の婚約者
10/31

予言者の影

「お待たせしました。

 お手柔らかに」


「棄権とばかり思っていたが。

 歩くには問題なさそうに見受けられるな。

 それでは、我が王に相応しいか試させて戴こう!」


 ここで負ける訳にはいかないと、先に打って出た。


「大分訓練したようだな。

 だがしかし!」


 薙払い、続けて振り下ろした剣撃を防がれると、力任せに弾かれ胸に剣が迫ってくる。


「なにっ!」


 間一髪で半身を逸らし体勢を立て直し次に備えるが、攻撃は来なかった。


「よくぞ見切りましたな。

 大概はこれで終わりだが、流石は陛下の見初めた方。

 では――ここからが本気ですぞ!」


 上段下段と振り分けてくる攻撃だが、そこまでの脅威は感じられずオレでも軽くさばける程だった。

 こんなものなのかと疑いつつ脇を狙うと、またしても弾かれ胸元に迫ってくる。力を抜いていた分、弾かれた反動のまま横に転がれたが、これでは時間の問題だろう。


「どうしました?

 こんなもので終わりではないでしょうな」


 負けることは死を意味する、この恐怖に冷や汗が頬を伝うのを見たのだろう。


「いや、勝機はあるさ。

 まだまだこれからさ」


 とは言ったものの勝機なんて見当たらない。唯一あるといえば、二度共同じ反撃だったことだ。試してみたいところだがオレよりも腕が上の分、それで負けてしまう可能性がある。


「では、こちらから行かせてもらう!」


 先に仕掛けてくれるなら、それに越したことはない。


「望むところだ!」


 やはり同じく上下に振り分け、軽くいなせる程だ。ならば、こちらが打てば弾かれ胸元へと来るだろう。

 分かっているなら避けれる筈だ。


「いくぞっ!」


「やはり来るかっ!」


 思った通りだった。が、かわした筈の刃が迫っていた。間一髪、剣を縦にし防いだが、それでも攻撃が止まない。


「くそっ!」


「そんなものですか!」


 一層激しさを増すが、攻撃の隙はあった。しかし、今までの事が頭をよぎり手が出せない。


「っ!!」


 今まで忘れていた腿の痛みが襲い、砂に足を取られ片膝をついてしまった。見上げると鼻先に剣があり、勝敗が決したことを意味していた。


「残念でしたな。

 怪我さえしていなければ、分からなかったと思うが」


 差し出された手を握り、立ち上がる。


「そう、かな。

 それでも負けは負けさ。

 こんなにわか仕込みじゃ到底敵わなかったと思うな」


 本音を話すと背中を叩かれ、笑顔で肩を組まれた。


「さすが陛下が見初められた方。

 レイヴ殿は騎士道精神をしっかり持っておられる。

 我が国の王には相応しいと思いますぞ」


 褒めてもらう気恥ずかしさに耐えかね、握手を求め健闘を称えあう。すると、そのままオレの手を挙げ会場から拍手喝采が湧き上がった。これからどうなるかも分からないというのに、拍手を送られても素直には喜べない。


 脚を引きずりながら、闘技場を後にするとアルバートが拍手で迎えてくれた。


「見事な闘いぶりでした。

 惜しかった、本当に惜しかったですね」


「いや、あれが限界だったさ。

 癖も見抜けなかったし、強すぎる相手だったよ」


「見抜かずにあの攻撃を交わしていたのですか!?

 それでは尚のこと惜しいですよ」


 話ながら肩を貸してもらい、医務室へと連れていってもらう。


「癖って何だったんだ?

 何故そんなに惜しいんだ?」


「彼は突いてくる前に、右足を地面より離して大きく踏み込んで来るんですよ。

 その後の攻撃に移る為に。

 それを逆手に前に出れば勝機があったんです。

 そして、なんと言っても年齢が年齢なので体力がなく、長引かせればそれだけで勝てる見込みはあったんですよ」


「なるほどな。

 技術ばかり気にして体力勝負など考えてなかったよ。

 粘れば癖も見抜けて体力も落ちてってことか」


「そういうことですよ。

 さぁ、着きました。

 しっかり見てもらって下さい」


 待っていた治療士に腿の具合を見てもらうが、既に治りかけているらしく、自然に治るのを待つしかないらしい。

 仕方なしに足を引きずりながら自室に戻ると、ミィ達が直ぐに駆け付けてくれた。


「レイヴ!

 大丈夫にゃ!?」


 どちらの?大丈夫?なのだろうと迷ったが、多分足のことだろうと返事をした。


「それよりもだよ。

 このままじゃ処刑の可能性が強まった。

 さて、どうすべきかな……そっちの件はどうなった?」


 これにはルニが応えてくれた。


「どうもこうもないよ。

 結構色々と口出ししてるみたい。

 特にメイル女王が迷った時なんか決定権を持ってるみたいね」


 まさかとは思うが、勘繰っていた通り未来を予言する集団『予言者』の一人かも知れない。

 ただ、側近であるなら口出しも当たり前と言われれればそれまでだが。


「もう後がないなら、本人に直接聞いてみるにゃ。

 それが一番早いにゃ」


 この状況ではミィのいうことも一理ある。ミィの助言のおかげでプランは固まった。


「なら、王国の出方を待ってみようか。

 それで色々と分かってくるだろうと思う」


「いいのかにゃ?

 そんなのんびりで」


「大丈夫、大丈夫。

 最悪は逃げ出すこともあるから、それだけ覚悟しておいてくれ。

 まだ、明日までは猶予があるし、一応は叙勲の資格がない訳ではないからな」


「レイヴ……大丈夫?」


 心配そうな瞳で見上げるリズに気づき、頭を撫でながら諭すと笑顔に戻ってくれた。


「それじゃあ、もう一つ頼み事をしてもいいかな?」


「何かにゃ?

 何でもやるにゃ」


「そう、あの人のこと何だが……」


 予言者かも知れないディバイルとは別の人物との接触をミィ達に頼み、今日はもう休むことにした。




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