魂の姿
ムッちゃんは、忘れてくだせぇ。
「....本当に僕は死んでしまったのですね。」
映像をなんども見直した感想だった。
コンクリートの塊に押し潰された、自分を見て思う。
「......呆気ないなぁ。」 自嘲気味に笑う。
なんだかあっさりした最後である。踏み潰された姿なんてまさにアリみたい。 僕は、大きなため息をついたあとに、俯く。白い床が見えた。
管理人は、球体をしまいながら、
「まぁそう言わずに、人生何てこんなもんですよ。」 と励ましたが、管理人の言葉に僕は、ますますうなだれた。 励ましには聞こえなかった。どうも神は万能ではないらしい。
すると管理人はムッと眉間にシワを寄せ、(ように見える)
「失礼なっ」
と怒鳴る。
......そういう地味なところは、できるんだね。
僕は、管理人の長い髪の毛の隙間から見える目を見つめる。
......とは言うけどよく見えない。どんだけながいの?
「髪は美貌の象徴ですっ神だけに」
最早、管理人の髪の長さは極限の域である。神だけに。
管理人は、ため息をつく。「というか、こんな話をするために連れてきた訳じゃあ無いんですけどねぇ。まぁいいか。キャラクターの個性なんざ、いつでも変えられるし。
えーっさてとそろそろ
本題に入らせていただきましょうかね?」
管理人は、僕の身体に指を指す。
「ところであなた、ご自分の今の姿、ご存知?」
と聞いてきた。
僕は、言われて自分の体を見る。
......あれっなんかおかしい。と自分の身体を探す。 管理人は、どこからか大きな丸鏡をだした。 僕は、鏡に写し出された自分の姿を見た。そして驚いた。
「僕がいない!?」
管理人は、僕にこれ以上困惑させないためか、すぐに鏡を髪の中にしまう。
「まさか自分の姿が
ないなんて......」
僕は、無い体をしげしげ見渡す。ショックだった。てっきり、霊体にでもなっているのかと思った。
管理人は、言った。
「無いのは当然ですよ。あなたは、押し潰された時から体から、魂が抜けたのですから。それに、ですね、」
管理人は続ける、
「何を勘違いしているのか知らないけど、魂というのは霊というのは、本来、目に見えない、物です。
あなたの身体は、今、自然と同化し、無に近い存在となっています。」
「えっじゃあ喋れるのは?こうしてあなたと会話ができるのは?」
管理人は答えた。
「それはまだ完全には自然と同化していないからです。自然と同化するとあなたの魂は、無に還元され、この世から永遠に消えます。......いや、消えるというのはおかしいかな?
ただ、再び、自然という巨大な輪廻の輪の一部へと、「小さな歯車」になるだけといった方が正しいか?」と途中訳のわからんことを言い出したが、彼女が言いたいことはつまり、
「つまり、あれですよね?仏教とかでいう、
神の下へ返されるとかいうやつ。......はて。キリスト教だったかな?」
まぁ何でもいいかな?僕は、気にしなかった。
管理人は、
「うんつまりは、そういうこと」
とうなずいた。
「まぁ、それでもいずれ、完全に身体は、無となり、輪廻の輪に返されるのですがね。
ところで、あなた今、一時的な記憶が欠落してるのわかってますか?」
記憶障害?
ああそういえば、記憶と言われて思い出したけど、もえさかる倉庫から逃げる際、
「あの時、押し潰される前に誰かと走ってたような?」と首をかしげると管理人は、
「はい。ちなみに何人でしょう?」と質問してきた。俺は、欠落してるらしい記憶から何とか人物像を浮かばせて答えた。
「......一人?」
と無い指で人差し指を伸ばす。
「ぶぶー正解は二人です。一人は走ってて、もう一人は、あなたに担がれてました。米俵みたいに。」
何だろそのフレーズ聞いたことあるぞ。と思ったけどいつ聞いたことがあったか忘れた。ああ。ところでそういわれて思ったけど、僕は、
「ちなみにその二人は助かったのですか?」と聞いた。できれば生きていてほしい。
それに管理人はウンウン頷く。髪の毛がバサバサと大きく揺れる。
「生きてますよ」
僕は、ほっとした。
あの状況から生き残りがいるというだけでまだよかった。
「あなたが命を賭けて助けたお陰でね」
管理人は、さらにそう付け足す。
「へっ?」
僕は、突然の一言に対応できず、きょとんとした。僕が、助けた?
管理人は、僕の反応を見たあとに、続けた。
「覚えてないようですね。まぁ、無意識にやったことだから、知らないのは当然でしょうけども」とウンウン頷く。
「僕は......僕は、何故、死んだのでしょうか?」
今更になってだけど、僕は聞いた。
そういえばまだ理由を聞いていなかった気がしたから。映像と話を聞く限り、天井押し潰される位、身体が弱っていた訳ではないよいだったから。
管理人はすぐに答えた。それを待っていたと言わんばかりに。
「あなたは、助けたのです。――――自分の命を賭けて、人を救ったのです。」
まだまだ転生はしやせんよ。調理前の下準備は、大切です。