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新兵のお仕事


国境警備隊の新兵は、「振るか、掘るか」の日々である。


起床と同時に点呼。洗濯、清掃を済ませてから朝食。

午前中は三班に分かれ、訓練、街道整備、業務補助にあたるのだが…


訓練は、新兵達に人気があった。

剣術、槍術等の基礎から学べ、他国の武器や体術も教わる。

軍に入隊する前の新人は、毎日ひたすら走り込みをやらされるとの予想が外れ、驚く。

「今の力で戦う方法を学べ」

新兵とはいえ、年齢や体格はそれぞれ。体力の足らぬ者は剣を振る為の身体造りを。経験のある者は、新たな知識を得てさらなる鍛錬を。

一糸乱れぬ行軍をする為の練習などはしない。

己に見合った訓練は、日毎に成長の実感を得ることが出来るので、飽きる事も嫌うこともなかった。


街道整備は、不人気。誰もが一度や二度は心を折られる。

30人ごとに馬車で砦の外に連れ出された新兵達は、上官に軽い調子で問われる「お前ら、午前中どのあたりまでいけそうだ?」と。

初めは、30人は互いに顔を見合わせてこの人数ならばあの辺までは道を作れるだろうと答える。


あの辺りどころか、この辺りで心がへし折られるとも知らず。


ここ掘って、埋めて、固める。


土を掘る幅は、男二人が両手を広げ指先が重なる程度。深さは、底に立って地面から肩が出るまで。

2人組に分かれて掘りだしてすぐに、彼らは地面は思うよりも硬いと知る。石や木の根、重みのある粘土質の土もあれば、

道具が刺さらぬほど硬い土の層もある。

掘り始めて割と早い段階で新兵は疑問を抱く。「道作りにここまで深く掘る必要はあるのか」と。

散々苦労して掘った場所を自ら埋めるのも、意味がわからない。

掘って、埋めてならした後は薬剤を水と混ぜてふりかけると、すぐに固まる。

一通りの作業を終えて、次に向かおうとすると上官からは「まだ」と終わっていない二人組みを指される。


「…戦ってのは、何年、何ヶ月かかることもあれば、三日で城を落とされて終わる戦もある。国同士が争うその瞬間になるまで、どこが戦場になるかはわからん」


戦場までは、どうやって移動する?

数千人、あるいは数万の兵士達は夜は平地で寝転がるのか?

木を切り倒し、馬が進む道を作る。

土を掘り、野営地のテントを張る。

立派な鎧や剣よりも、積み上げた土が身を守る時もある。


だから、掘れ。


あ、時間内に掘れよ?置いて帰るぞ。


「もういやだ!このまま俺を埋めてくれ!」

「また岩だ!なんだよ岩!」

「腰がっ、腰がぁ」


悲鳴に怒号に泣き言にとやかましい。

彼らは馬車に置いていかれ、泣く泣く歩いて砦へと戻り、昼抜き。

しかも、日を追うほどに砦と街道の整備地点は距離が開くので、彼らの足腰は自然と鍛えられるのだ。


訓練は嬉しい、街道整備は苦しい。

残りの業務補助はというと、……当たり外れが激しい。


本日初めての部署での業務補助を命じられた新兵三人は、当たりがでるか、外れとなるかまったく予想がつかなかった。


医療術部 特殊治療室。通称・保健室。


……何を手伝えと?


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