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扉のこちら側は保健室

「俺を残して、お前は行け!」

「バカ野郎、ここまで一緒に来ただろうが、お前を残して一人で行けるかよ!」


…扉の向こう側で、兵達による熱い会話が、少年誌のクライマックス目前の興奮度で繰り広げられていた。


しかし、


扉のこちら側は、保健室。

魔王城の大魔王が待ち構える大広間ではない。




保健医・咲坂 芽衣は、患者が自ら扉を開くのを大人しく待っていた。


とある事情で日本から異世界召喚をされてしまった、元・本屋アルバイト店員の少女。

黒髪、色白、小柄で巨乳。

困り眉毛とそばかすが特徴の、幼い顔立ち。

性格は、自分では異世界に来てからずいぶんしっかりとしたのではないかと思っている。

いや、しっかりとしなければいけない。


私は保健室の先生なのですからっ。


芽衣は背筋を伸ばし、目元にぐっと力を込めつつ、

正座した膝の上で手汗をこっそり拭った。


自分では「キリッ!」とした顔のつもりだが、眉毛の両端がさらに下がっただけで、困り顔が、困り果て顔になっている事に芽衣は気づかない。


もし、芽衣がこの顔のままで城下町を歩くとすれば、大人どころか子供にまで囲まれて「迷子で親とはぐれちゃったんだな?泣くのを堪えて、偉いぞ」

と頭を撫でるに違いない。


人畜無害どころか、人畜が無条件で構って構って甘やかしたくなるような

良く言えば庇護欲を駆り立てる、そのまま言えばアホな子の雰囲気をした少女であった。



けれど今、扉の向こう側で芽衣は、極悪非道の大魔王扱いである。

すでにかなりの重傷を負っているはずの兵士達はまだ入ってこない。


(せっかく、イメージを良くするためにお部屋の名称まで変えて頂いたのに

困ってしまいます)


先週までは、「医療術部 特殊治療室」とお固い名前だったので、気軽に立ち寄って欲しいと保健室に名称変更してもらった。


ちょっとしたおサボりの人に出す茶菓子も準備万端。

魔術師のお約束、濃紺のフード付きローブの代わりに白衣をまとい、女医っぽさの演出のために伊達眼鏡も装着した。芽衣は形から入って満足するタイプなのだ。


(理解して頂くには現場の実践を積まなきゃいけません。私、がんばります!)


使命に燃える少女。

医療知識は皆無だが、彼女には召喚時に得た万能の治癒術がある。


古の魔術師が封印した禁術を使いこなせるのは、この世界で芽衣だけ。


彼女に救えない命はないのだ!



…扉の向こう側では、

「お前が行け」「俺は後でいい、お前こそ先に行け」「いや無理。ほんと無理」

まだ譲り合いが続いていた。




ゆっくり更新します。

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