____________________02-7 チューバ号
ちぃと、罪悪感がないでもない。
火をたいて、この星で取れた素材で作った食い物をふたりにあげた。
わしゃ牛で手が使えないから、簡単なものしか出来なかったが、かなり喜んでくれた。
で、二人は寝てしまった。
一服盛ったわけだが。
「じゃあ、行くか」
チューバを呼び出すとするかと。
「チューバ、来たまえ」
すぐにチューバがひょっこり現れた。
空中に停止して、迷彩をといただけだが。隠すにしても、全長二百メートルもあるから、ちょっと離れて迷彩でもかけるしかないわけだ。
まぁトンフアたちに見られてなければそれでいい。
うしロボに背負わせて二人をチューバに運び込み、自分も乗り込んで発進させる。
飛び立ってしまえば、彼らの村はすぐそこだ。
近すぎてかえって時間がかかるくらい。
わしが生まれた星に帰るのに半日、彼らの村まで行くのには、まる一日かかってしまう。
そうそう、カズをポイしたあと、わしはスポンサーにひとつ相談してみたのだ。
で、あっちは、思いのほか柔軟な対応をしてくれたわけだ。
彼らを元の村に返しても良いと。
まあ、飛行機はもう前例ができたし、飛べればいずれは雲溜まりに行く者は現れただろうと言う見解である。
したがって、チューバを直接見られなければよろしいとな。
わしなんて、喋る動物にしか見えんしな。――当分、出入り禁止になったがね。
「まったく、人騒がせな」
留守番をしていたカズが、おでこのたんこぶを摩りながらでてきた。
「いや、済まんな」
「まったく、先生は牛かと思ったら、時々イノシシなんですから」
「余計なお世話だ」
ふん、だ。
眼下には、何処までも弧を描いて伸びる山脈が見え、その数箇所に雲溜まりが見える。
さて。
「フルートの準備をしようかね」
「でも先生。さっき調べた限りじゃ、彼らの村って海から行けませんが」
「お? じゃあどうする」
「彼らの飛行機と同じものを作ってやるとしようか」
「ふむ、賢いな。でも、直ぐ出来るのかい?」
「はい。我らがスポンサーが、完成品を届けてくれているとこです。あ、着きました」
視界の片隅、お日様も見える星空の一角に虹色の小さな重力震が見えた。
その真ん中あたりから、まっすぐ小型輸送船がこっちに向かってきて、横付け。この間、わずか十五分。
横付け作業が終わると、タラップを通して、運搬係の兄ちゃんが飛行機をふたつ運び込んでくれた。
「お届けごくろうさん」
「あざっす!」
仕事が終わると、兄ちゃんたちは輸送船ごと宇宙のどこかに去っていった。
ああ、っと。
営業に、うしロボが何ものかを聞くのを忘れてしまった。
一応、うしロボが、うしと同じ系統のシステムで動いているバージョン違いというところまで突き止めたが、なんでまた連携できたか理解に苦しむ。
さすがに、百年単位で時期が違うわけだから、かなり齟齬がおきそうなものだが。
「先生、飛行機に、手紙がひっついてました」
チェックをしていたカズが、紙を一枚掴んでもってきた。
紙に字を書くなんて、なんとも珍しい。
だが、手にとって理由が分かった。
翻訳機なしでは読めない、トンフアたちの文字で書かれている。
“君たちが大人になるころには、見たことをみんなに話せるようになるから、それまで我慢してください”
内容は、ざっとこんなところだった。
まあ、そういうことなんだろう。
その頃になったら、きっとわしもまた、会うことが出来るさ。
「カズ、とりあえず元のところに手紙を戻してくれたまえ。わしらあてじゃないからな」