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空と電話  作者: ぷよ夫
13/17

01-7 光______________________________

 僕らはどんどん流されていった。

 そして、青い空の下に出た。

 山の上のほうだし、このまま滝みたいに流されていっちゃうのかな。

 ――ふわり

 急に、体が浮いた。

 水に浮いてた体が、宙に浮いた。

 翼と、一緒にしがみついてたトルサも浮いてる。

 見える景色は、急な流れの川と、岩場と、草原。

 森は見えない。今のところ。

 人の姿は、トルサだけ。今のところ。

 そして……

 怖いとか思ってるまもなく、川辺に敷き詰めたように生えた草の上に着地した。

「生きてる、ね」

 見渡すかぎり唯一の人、トルサが言った。

「うん、生きてる」

 わりと暖かく、風は乾いていた。

 こんなに乾いた風ははじめてだ。

「おーい」

 何処からか、声がした。

「おーい」

 返事をしてみる。

「おーい」

 また声がして、岩陰から何か出てきた。

 のしのし。

 うしに似た生き物が歩いてくる。

「うしなのに、全身に毛が生えてて、服まで着てる」

 それを見たトルサが、半ばぽかんとしている。 

 そのうし生物は、さらにのしのしと僕らのところによってきて、口を開いた。

「とーんふあ? とるさー?」

 空耳? 僕らの名前を呼んできたみたいだ。

「きみ、とーんふあ? きみ、とるさー? ぼく、HIkaru」

 上手じゃないけど、やっぱり僕らの名前だった。

 最後の“Hikaru”は、このうし生物かな。

「うん、トルサだよ!」

 トルサがにかっと笑って、うし生物を撫で、彼(?)はうんうんと、その大きな頭をふって頷いた。

「よかった、君らが無事で」

「え?」

 トルサがびくっと、撫でていた手を引っ込めた。

 うし生物が、いきなりまともにしゃべったんだから、僕もびっくりだ。

「いやいや、驚かせてすまない。わたしが、セーンだよ」 

「あ、あなたが?」

 さらにびっくりした。セーンが、うし生物だなんて。

「おんや、名前が翻訳されてしもうた」

 翻訳? そういえば、意味が分かる声といっしょに、もごもごと別の言葉が聞こえる。

「あらためて、私はヒカル。ラジオで何度もお話していた者だ」

 ヒカル? 名前が光“セーン”に似ててだったんだ。そう、

「君たちにはセーンって聞こえてたかもね。で、君が飛行士で、君が通信係りであってるかのぉ?」

「あってるよ! わたしはトルサ。だいたい、私がお話してたよ」

「僕はトンフア。僕が飛行機を飛ばしてた」

 壊れちゃったけど。

「お、おお、面白い。空が飛行士で、電話が通信係か。いやはや、面白い」

 こっちは、わけが分からない。

「いやでも無事でよかった、空くんと電話ちゃん」

「あたしが電話? 何それー」

「お、おお、勝手に訳されてしもうた。トンフアくんと、トルサちゃんだね」

「僕はトンフアで、彼女はトルサ。あってるよ」

 よく分からないけど話が通じた。うし生物、セーン相手に。

「でな、早速なんじゃが」

 セーンはぬっと僕らを見上げて言った。

「君らを助けたいのだが、二つやり方があるので、選んでおくれ」

 ゆっくり、ひとつ、ひとつとセーンが左右に首を振る。

「一つは、わしと一緒に暮らす。わしらの所に住むから、村には帰れない」

「僕らの村に帰れないの? もう一つは?」

「村に連れて行ってあげる。だけど、帰り道は何も見せない。途中のことは、誰にも話しちゃいけない」

「村に帰れるなら、黙ってるわ。自慢したかったけどさ」

 トルサはちょっと考えたけど、僕より先に後のほうを選んだ。

「僕も、それでいいよ。帰りたい」

「そうかね。じゃあ、そうさせてもらう。その前に、じゃ」

「その前に?」

 なんだろう。

「メシじゃ。あっちに用意してある。火もたいてあるから、まずは温まりたまえ」


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