____________________02-6 ハイリスク
とにかく、彼らを助けたい。
わしは、一つ決断をした。
「チューバを呼び寄せる」
「せ、先生? 見られたら、今までのことが、全ておじゃんですよ!」
「わし一人で責任を取る。あとは、頼んだ」
「頼んだ、じゃないっす!」
カズがなんとか撤回させようと、わしに掴みかかってきた。
「えい、はなさんか」
「いいえ、だめっす! 今まで溜め込んだ研究成果はどうするんですか!?」
「溜め込んだのは、とっくに持ち出してあるワイ。今後は、あるモンだけで何とかする」
「それどころか、とんでもない違約金が!」
「かまわぬ! カズは何も知らない、それでよいのだ。むぐっ!」
わしは身をかがめると、自慢の大口でカズの首根っこを咥えた。
「ちょっと、先生?」
ぽいっ!
と、フルートの隅っこにある小部屋にカズを放り込み、ツノを使って鍵を閉めた。
たいした部屋じゃないが、中から開けるのは難しい。
「先生! 出してください!」
でもまあ、カズが必死で体当たりしたら開いてしまうから、鼻を使ってスイッチを押し、緊急用の催眠ガスを部屋にまいてやった。
ま、すぐに静かになったわけだ。
まったくもって、人間は頭が固いというかなんというか。
物理的にはわしらの頭のほうが数段固いとは思うが、頭脳は負けないぞ。
頭のサイズはずっとでかいからな。
「チューバ、召還」
とりあえず、フルートのメインコンソールに向かって言葉をかける。
手打ちでもできるのだが、まるっきり人間向けの設計で、わしには使いにくい。
わしにゃ、手なんてないからな。
さて。
もうじきチューバが来るだろう。
取り急ぎデータを取りながら、先回りだ。
吸い込まれちまった以上は、居る場所はあっちかこっち。
じゃなきゃ、間で引っかかってるかだ。
雲の外に居ないことは、電波通信機の位置からして確実なのだから。
「おや、もう来たか」
あたりが少し暗くなり、フルートがふわりと浮き上がった。