____________________02-5 声をかけ
「どうしたもなにも、ぼさっとしてたら、吸い込まれるぞ!」
わしゃ、思わず叫んでいた。
どうもこうもない。
雲溜まりに風と雲が寄っていくのは、そこにでっかい風穴があいてるからだ。
むかしむかし、その昔、われらがスポンサーたちがあけたから、あいてるのだ。
そんなでっかい壁みたいのがあったら邪魔だから、あけたと聞いてる。
理由は風通しが悪いから。そのまんまだ。
当然、風通しのためにあけたわけだから、風が通る。通してる。
で、自転など諸々の理由により、いつも概ね西風だ。ということは、こっちから見て吸い込まれるほうに吹いてる。
そりゃあ、海のほうから来る風を高いところで吸い込めば、上昇気流がおきて雲が出来て雨も降るわい。
近くを飛んだら、そりゃ吸い込まれるわい。
「参りましたね」
「ああ、参っとる」
あと二日、いや一日早く追いついていればと悔やまれる。
「でも先生、吸い込まれたら、どうなるんでしょう。反対側から出てくるんじゃ?」
「それも一理あるんだが、はたしてあの飛行機がそれまでもつじゃろか」
「我らがスポンサーの製品なら、どうってことないですよ」
「我らがスポンサーが、いつ作った製品かによるわい」
「つい最近じゃないっすかね」
「そ、そりゃそうかもしれんが」
作られたのは、まあ、最近じゃろ。だが、アレだ。
「ちゃんとした工場で作られたわけじゃあるまい。少なくとも、あの大きさとなると、うしが作り出せるのはパーツだけで、組み立ては彼らがやったと言うことになる」
うしのことだから、ちゃんと組み立ての面倒を見たとは思うが。
『ヒカル、やっぱり前に進めてないよ!』
おおっと。こちらでぐだぐだ話しているうちに、あっちは問題が悪いほうに進んでいたようだ。
助けてやりたいところだが、まだ距離はあるし、雲溜まりの雲の中がどうなってるかなんて、わしらとてよく分からん。出来ることなんて少ししかないではないか。
「おお、無理するな。とにかく、降りれるところに降りてしまうんだ。その通信機だけは、絶対手放すなよ!」
『うん、わかった。がんばってどこかに降りてみる!』
「おりたら、話しかけておくれ」
『がんばるよ!』
「おう!」
通信がいったん途切れる。
がんばって欲しい。
通信担当と、飛行担当。
ぜひとも彼らの顔を見て、名前を聞いてみたい。
彼らを確実に助ける方法はあるにはある。
「あ、先生。悪いこと考えてるでしょ」
「んー? 悪いことは、考えてはおらん」
危ないことなら、考えてなくはないが……。