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須藤 泉2

 …やっと学校始まったから…お兄ちゃんを連れて帰れるけど…やっぱり加奈子さんはずっと病気って言ってた…やっぱり本当だったんだ…

 それはそれとして!お兄ちゃんと久し振りに会えるな~何て言おうかな…心配しなくてもいい?う~ん…何か無責任かなぁ…加奈子さんは追い出す?…一応あれでもお兄ちゃんの実の母親だからなぁ…

 そんなことを思いながら登校して、いつもお兄ちゃんが近づくなって言ってるお兄ちゃんのクラスに入った。ざわめきが凄いなぁ…


「あの~…お兄ちゃんのこと知りませんか…?」


 とりあえず体半分だけ入って教室を覗いてみたけどお兄ちゃんはいなかったから誰かに呼びかけしてみた。…遠巻きに見てくる人はいるけど…だれも話しかけては来ないな…ん?誰か押されてる。お兄ちゃんと仲いい人なのかな?


「あの…」

「…えっと…須藤さんどうしたのかな?」

「あの…お兄ちゃんを…」

「須藤ならまだ来てないけど…」


 この人じゃなさそう…お兄ちゃん仲のいい人には前の瀬川って名前と混ざるからって亘って呼ばせてたはず…


「あの…このクラスで一番お兄ちゃんと仲のいい人は…」

「あー…多分俺…他の奴と話してるところ見たことないし…」


 嘘…ってことは…このクラスでお兄ちゃんは孤立していたってこと…?あぁもう後ろの人たちうるさいっ!


「こら…何の騒ぎだ?…おや、須藤妹。」


 騒ぎになっていた人たちを静かにしてくれたのは女の教師の人でした。私はその人の名前を憶えてなくてちょっと口ごもります。


「…えっと。」

「あぁ…気にするな。私の名前など憶えてないだろう…で、何の用だ?」


 覚えてないのは失礼だったけど言葉遣いがなぁ…


「おに…兄の事で…」

「あぁ、休学だな。」


 さらっと言ったけど…この人今なんて…?


「おいおい、何をほうけているんだ?…あぁ、お前も知らない・・・・か…まぁそれもそうだろうな…」


 知らない側って何…?


「まぁいい。もうホームルーム5分前だ。教室に戻りなさい。…全員席について自習を始めなさい。」


 その先生は有無を言わせない口調でそう言うと私を教室から追い出した。…この人は絶対に何か知ってる…喋ってもらわないと…












 放課後、私はホームルームが終わるとすぐにあの先生の所に向かった。昼休みに調べた結果、あの先生の名前は江口えぐち 千秋ちあき。数学の先生でお兄ちゃんの担任の先生。学校内での人気はそこそこ大きく、さばさばした性格が人気らしい。


「…おや、須藤妹。」


 丁度江口先生が職員室に入ってくる所に鉢合わせた。これはチャンスだ!


「あの!お兄ちゃんの話で…」

「悪いが話すつもりはない。これは個人的な内容なのでな。」


 先生は一瞥するだけで職員室に入って行った。一瞬呆気にとられたけどこれで諦めると手掛かりが全くなくなるからすぐに追いかけた。


「あの!お兄ちゃんについて何か知っているんですか!?」


 私は職員室内で大きな声で訊いた。これで他の先生の目もあることだし二人きりに…

 そんな私の期待は江口先生の一言で斬って捨てられた。


「少なくともあいつの苦労も知らずにのうのうと生きてきた奴言う言葉は持ち合わせてない!」


 どこか怒気をはらんだその言葉で私はひるんだ。そして周りの先生に助けを求めるけど誰も目を合わせてくれない。


「な…何で…?」

「分かったら帰れ。言っておくがどっちにしろここに居る奴らでお前らに答えを教えることが出来る奴はいない。…何故あいつがここから出て行ったのかは知ってるがな…」


 その言葉にある先生は項垂れ、ある先生は決して私と目を合わせないように、また、その中には明らかに私に敵意を持った眼差しを向ける人もいた。

 私は訳が分からなくなり逃げるように職員室から出ようとした。その後ろから江口先生の声がかかる。


「あぁ、それでいい。…普通に過ごしているなら我々も何も言わないからな…もう兄のことは諦めて…」


 その言葉で私は足を止めた。


「…何だ…?」

「諦めるって…雰囲気に吞まれてましたね。私…」


 急に雰囲気の変わった私に周りの空気も少し変わります。…こっちが私の素なのですけど…まぁお兄ちゃん以外に受け入れてくれる人はいませんね。


「そうでした。間違えてました。…優先されるべきはお兄ちゃんでした。」

「…は?」

「諦めません。何を使ってでも…今日の所は失礼します。」


 私はそう言って職員室を後にしました。




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