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トリニティ1

(うまくいった…笑いが止まらないな。…だがこんな所で笑ってたら気が触れたかと思われて通報ものだな。止めなければ。…無理だ笑みが零れ落ちる…)


 亘がどれだけ表情筋に力を入れても亘の口の端はどうしても釣り上がってしまう。今の亘は思い通りに計画が運び過ぎてどうしようもなく楽しいのだ。


(今頃は誰か知らん奴のバッグからメールが送られているだろう。それで須藤…あんたは色んな事に納得できるだろうな。…まぁ我ながら趣味は悪いと思うが奴隷生活は御免でね…なぁにあんたなら新しく良い家庭を作れるさ。)


 誰に対する言い訳ともしれない言葉を心の中でつぶやき、亘は乗り継ぎのために電車を降りる。


(あぁ…やっと自分のために生きれる…早く目的地に着かないかな!)


 亘はこの日何度目ともしれない駅のホームに降り立ち、自分の目指す新天地に思いを馳せまた新しい電車に乗り換えた。












「…じょ……ま。」


 うるさいなぁ…


「おじょ……ま」


 わかったよぅ…起きるから静かにしてよ…


「お嬢様っ!」


 私が目を覚ますと目の前一杯に田辺さんの顔があった。何事っ!?


「うぅん…はっ!今何時!?」

「昼過ぎです。」


 はうあっ!しまった!寝過ごしたぁっ!


「いいい急いでワー君の家に行かないと!」


 慌てて準備しようとする私を何故か田辺さんが止めました。


「何をしに行かれるつもりですか…?」

「え?ワー君に誕生日プレゼント…」

「須藤 亘はいなくなりました。…先程泉様が来て仰られていたではありませんか。」


 あれ?何で田辺さんが私の夢の内容を…?やっぱり心を読めると夢まで読めるのかな…凄いなぁ…


「田辺さん心どころか夢まで読めるんだ…」


 思ってたことがつい言葉に出ちゃった…あれ?何で田辺さん固まってるんだろ…


「お嬢様…?何を言ってらっしゃるのですか…?」

「え?ワー君がいなくなるを見たんだけど…そのこと言ってるんじゃ…?」

「現実に須藤 亘はいなくなりましたよ…?」


 何を言ってるんだろ…


「私はここに居るよ?」

「お嬢様?」

「ワー君と私はずっと一緒だよ?そして私はここに居るんだよ?ワー君が居ないわけないよ。」


 ずっと一緒なんだから。当たり前。例え死んでも一緒…あれ?田辺さんが何か恐ろしいものでも見たような顔してる。どうしたんだろ…


「お…嬢様?あの…実際いない…いえ…」


 もしかして泥棒猫いずみが来てたのは本当!?田辺さんに確認しないと!


「…つまり、あの泥棒は実際に来てたの…?」

「え…えぇ!」


 復活してくれた!やっぱりそうか…


「ということはあれは現実…?」

「そうです!夢じゃありません!現実なんです!」

「なら…監禁されてるんだ…ワー君…」

「え?」


 その案はあんまりにもアレだから私もしなかったのにあの泥棒…


「お…お嬢様…?どう考えて…」

「居なくなるわけない。でもいなくなるってことは見つけられなくなったってこと…そう言えば昨日のワー君様子が変だった。誕生日ってことで納得しちゃってたけどいつものワー君ならそんなに気にしてなかった。」


 考えれば考えるほど心当たりが…


「つまり学校内で何かあったんだ…いいことが。例えば告白とか…?浮気だね…まぁ最後には私の所に帰って来るんだろうけど…でも今回は違う。ワー君の意志とは違うものだから帰って来れない!?大変すぐに探さないと!」

「お…落ち着いてください!」

「これが落ち着いていられる!?」

「お嬢様がお気になさると思って泉さんから話を伺ってます。何でも母親との軋轢が…」

「はっ!泥棒が監禁してるかも!?」

「お嬢様!?」


 こうしちゃいられないすぐに探さないと!待っててねワー君!












「加奈子さん大丈夫ですか…?」


 お兄ちゃんがいなくなってから二日目の昼。日曜日なので今日はお父さんもお休みなんだけど加奈子さんはまだ体調が悪いらしい。それなのにお父さんの診察は受けない…何でだろうか…


「ごめんなさいね…亘のが感染うつったみたいで…」


 お兄ちゃんのが感染ってって…家出でもするのかな?そんな加奈子さんだけどお兄ちゃんがいる病院には行きたいって言うのに家事できないのは不思議だよね。疑問を持ってない時だったら自分の体に無理を押して看病しに行く優しい人と思ってたんだろうけど…

 それにしてもこれが演技なら…演技なんだろうけど…女優になれるよ。わざとらしくない弱々しい声に少し青ざめた顔色。…顔色まで変えてるけどこれはメイクなのかな?本当に病気なんじゃ…


「感染るといけないから泉ちゃん…もう出た方が…」


 加奈子さんが言うので私はリビングに出て行った。そこにはいつもの徹夜の時より疲れているお父さんがいた。


「お父さん…」

「…泉か…加奈子は…なんであんなことをしているんだろうな…」

「え?」

「…病人のメイクだよ…寝ている時に軽く触診なんかをしてみたんだ…脈拍は良好。熱もない。顔に触れると…化粧をしていた。」

「…そうなんだ。」


 やっぱりメイクなのか…上手すぎる…全く分からなかった。


「亘がいなくなって気付くなんて僕は今まで何を見ていたんだろうか…」

「…お兄ちゃんもお兄ちゃんだよ。何で相談もなしに家出しちゃうんだろ…」

「それだけ加奈子の呪縛が酷かった…としか思えないな。だからなるべく離れたがって…あぁ…このことに気付いていれば大学だって加奈子に反対して遠方の大学に行かせたのに…」


(それはちょっと困るけど…)


「明日から学校だから亘が誰の家にいるのか調べてくれ…」

「うん!お兄ちゃんのこと知ってそうな人に皆当たってみるね。お兄ちゃんあんまり友達居ないからすぐにどこにいるかわかると思うし。」

「亘も二日も離れれば冷静になってくれてるだろう…皆で話し合って解決しないとな。」

「うん!」


 言ってくれれば私だって手伝うんだから!一人で抱え込まなくても大丈夫なんだから帰って来てもらうからね!お兄ちゃん!



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