財部 彩愛1
今日は朝からワー君が楽しそうだったので私も一日楽しかった。だから一日があっという間に過ぎてもうワー君と下校する時間になった。
「彩愛ちゃん。ちょっといい?」
「…どうしたの?」
ワー君と待ち合わせしてるのに城崎君が話しかけてきた。唯でさえホームルームが長かったからワー君を待たせてるかもしれないのに…でも城崎君はワー君の数少ない友達らしいから無視はできないな…
「今日今から時間あるかい?」
「え、ないよ?」
今からワー君と帰ってそしてやるべきことをしないといけないから城崎君と話す時間なんてない!
「えっと、少しでいいんだけど…」
「ごめんね?急いでるんだ。」
しつこいなぁ…あんまりしつこいといくらワー君の友達でも私たちの結婚式に呼ばないよ?折角ワー君が珍しくご機嫌なんだからそのまま帰りたいの!あ、もうチャイムが鳴って十分経ってる。ワー君の担任の先生時間ピッタリにホームルーム終えるから絶対私を待ってる~早く帰ろうと思ってるワー君の機嫌が悪くなるよ~
「あ、ごめんね?ほんとに急いでるんだっ」
私はそう言って城崎君と別れて急いで待ち合わせ場所に向かった。
よかった!ワー君今日機嫌良いっ!これなら私の明日の計画もうまくいくはずっ!…でも何でこんなに機嫌良いんだろ?訊いてみよ…
「…ねぇワー君。何か楽しそうだけど…何かあったの?」
「いや?何もなかったが…楽しそうだったか?」
…明らかに楽しそうだよ。ワー君が考えてるより私、ワー君の事見てるんだからね?何もないわけないじゃん…もしかして私に言えないようなことなの?彼女が出来たとか…?自分で考えてて怖くなってきた。でも!確かめないと!
「…言えないことなの?」
意を決して訊いてみると何てことなかった!明日の誕生日が気になってたんだ!良かったぁ~フフフ~明日あげる私のプレゼントはワー君でもビックリするものだからね!期待しててよ!
私はその旨を伝えてワー君と別れて家に帰った。
「お帰りなさいませ。お嬢様。」
「うん。ただいま田辺さん。」
家に帰ると家政婦の…
「メイドでございます。」
改め、メイドの田辺さんがいつものように迎え入れてくれた。…でも何で人の心が読めるんだろ…
「メイドだからでございます。」
うん。よくわからないけどいいや!さて、今から準備しないといけないから…
「お嬢様は一人ご自室で誰にも知られないで作業をしたいとお思いになっていると、思いますので失礼します。」
「…うん。ありがと…」
わかってるならそれとなくやってくれてもいいのになぁ…
「いつ来るかわからないよりも来ないと明言された方が良いのでは?」
「…ナチュラルに心と対話されても困るんだけど…」
「存じ上げております。では、失礼します。」
田辺さんは足音を全く立てずに家の中に消えて行った。私は二階の部屋に行く。…にしてもいつも思うけど田辺さんって何者なんだろうなぁ。
「ま、いっか!」
そんなことより今日は大事なこと!明日でワー君は18歳!つまり結婚できる年齢っ!この時をどれだけ待ったことか…あぁ結婚式どこでしようかなぁ?教会でやろうかな?神社でやろうかな?う~夢が膨らむな~
…っていけないいけない!早いところこの書類を書かないと明日の朝一番に渡せない!…本当は明日になったらすぐに渡したいけど夜中に行くのはワー君嫌がるよね…我慢っ!
今はこの思いをぜ~んぶこれに込めて書いて!明日を待とうっ!
はぁう~一睡もできなかった…でも目の隈は温めて消したし寝不足で変な顔にはなってないし大丈夫なはず…今は8:00か。う~ん…もう行ってもいいかなぁ?
そう思っていたら部屋のドアが急に開いた。
「お嬢様。須藤様がお見えになっています。」
「え!?ワー君が!?」
ど…どど、どうしよう!まさかワー君の方から来るって!もしかしてプロポーズ!?
「…どういった発想でプロポーズをしに来たとお思いになられたのかはわかりませんが、いらしたのは泉さんです。
「え?泥棒猫?」
何で急に私たちの中に割り込んできた泥棒が?…あ。でもこれから義妹になるんだ。仲良くしないとなぁ…
「…スルーいたしますが。何やら怒りと不安が混じったお顔をされていらしたので急いでお行きになられた方が良いかと。」
「どうしたんだろ。」
こういう時に心を読んでくれると助かるんだけどなぁ…
「そういった失礼にあたることは致しておりません。とにかく、お急ぎください。」
そういった失礼にあたることをしないって…私一応雇い主の娘なんだけどなぁ…私はいいのかな…
何となく釈然としないままもうすぐ義妹になる泥棒に会うために一回に下りた。すると泥棒は私を見るなり言ってきた。
「お兄ちゃんがどこにいるか知ってる!?」
「え?」
「…やっぱりここじゃないか。おじゃましました。」
泥棒は訳の分からないことを言って出て行こうとした。
「えっと、どうしたの?」
「彩愛さんの反応見たらここじゃないってわかりました。朝早くからごめんなさい。」
会話が成立しない。そんなに急いでどうしたんだろ?…お兄ちゃんはどこ?って…!まさかワー君に何かあったの!?
「ちょっと待って!わ…ワー君に何かあったの!?」
「…いなくなったの。」
「ダレガ?」
聞きたくない。そんなわけない。今から二人で…
「お兄ちゃんがいなくなったの!メールで家出するって…それに二度と帰ってこないって…」
涙目で何か言ってる…あ、そうだ。私昨日から一睡もしてなかったんだ。だからいつのまにか寝ちゃったんだろうな…早く起きないと…
「お嬢様っ!?」
財部はそこで意識を失った。




