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財部 彩愛5

(やっとだよ。)


 私はようやくワー君の居場所を知る人に情報を得ることが出来そうだったことに喜びを隠せなかった。

 泉とは協力関係にあったが、今日も三年生の方が授業が終わるのが早いため、っ私は一人で江口とか言う先生の下に行った。


(…担任とはいえ私にも知らせなかったのに別の女に知らせてたのは後でワー君に問い詰めるからね…)


 そんなことを思いながら、職員室に入ると江口先生は職員室にいて私は応接室に付いて来るように言われた。


 応接室に着くと小さなテーブルとイスが四脚あり、私が入り口付近に座ると江口先生はその斜め前に腰を下ろした。


「…ワー君…あぁ、亘君はどこですか?」


 今更ながら言葉を変える。江口先生は少しだけ眉を動かして断言した。


「知らん。」

「っ!知ってるはずです!現にお寺の和尚さんが言ってましたし、泉ちゃんからも話は聞いています!」


 ここまで来てしらばっくれるのかこの人は…殺意が浮かんできた…


「フン…まぁいい。仮に…仮に私が須藤の居場所を知っていたとして、君は一体何をするつもりなんだ?」


 何故かせせら笑った江口先生…いや、江口をテーブルの上にある花瓶で殴りたいと思いながら当然のことを答える。


「連れて帰ります。」

「どうやって?」

「…どうやって?そんなの帰るよって一言言えば…」

「ここが嫌で逃げ出したんだぞあいつは。」

「それはワー君のお母さんが嫌で…」

「…女でもできてそいつと駆け落ちでもしたのかもしれないぞ?」


 こいつが軽く言った言葉に血が逆波を立てる思いがして次の瞬間両手を止められていた。


「…今何をしようとした?」

「っ…あ…」

「ふっ…ついカッとなって…というところか。冷静になって貰おうか…君はまだあいつと会うには早すぎる。」


 ムカつく。こいつが何を知っているというのだろう。私とワー君はずっと一緒だ。誰もそれを妨げるなんてことはしてはいけない。こいつは犯罪をしているのと同じ…


「…はぁ…君は本当に壊れてるな…君と須藤がずっと一緒だと誰が決めた?何故私が犯罪をしているのと同じなんだ?」

「っ…心を勝手に読まないでください!」


 何でこの人が田辺さんと同じことを…


「君は思っていることが顔に出過ぎている…というより本当に犯罪者と思っているのか…」


 呆れたような顔になる江口。そして次に真面目な顔に戻った。


「いいか?君は一度冷静に考えてみた方がいい。周りを見てみろ。君が幼い頃とは違うんだ。君は須藤無しでも…」

「黙れ。」


 そうだった…先生?だから何?私をワー君から引き離す奴に払う敬意何て皆無だったのを忘れてた…


 目の前の奴は嘆息して頭を掻いているがそれは本来こちらがやるべきことだ。


「本当に君は…いいかい?君のそれは唯の依存だ。お互いの為にならない。一度離れて…」

「依存?だから何?依存が為にならないって誰が決めたの?私のは愛も込められてるからいいんだよ?」


 …何か得体の知れない物を見た顔をして引いてる…


「愛…って…それは愛ではない…」

「先生は愛もしたことがなければ恋もしたことがないんでしょうね。一生かかっても分からないでしょう。私にはワー君が必要です。居場所を教えてください!」

「…駄目だ。」


 無言で睨み合う私と女教師。そんな時だった。応接室の扉が勢いよく開いたのだ。


「っ!?」

「ストーカー女さん。お兄様の大体の居場所が分かりました。すぐに車を出してください。」


 江口が驚いたところに現れたのは須藤泉だった。


「君は…まだ授業中じゃ…」

「担任の先生にはきちんと許可をもらっています。部外者は黙っていてください。」


 泉は敵対心を全く隠そうともせずにそう言って財部を見た。


「早くしてください。場所は九州、福岡県○○町から出る××バス沿いのどこかです。あの辺は基本乗車客が少ないらしいですし、まだそれほど時間も経っていません。平日からあの世界一のお兄様と多少なりとも可愛らしい顔立ちをしていた間女が乗っていれば目立ったと思います。」


 そこまで一気に捲くし立てると、一度大きく息を吸ってから続けた。


「ですが、早めに出ておかないといくらお兄様が格好いいとはいえ、忘れられてしまうと思います。すぐに出ますよ。」


 江口は口を出せなかった。当たりなのだ。辛うじて面には出さなかったものの何故そこまで分かったのか、エレンホスの力を使って監視カメラなどの情報は漏らさないようにセキュリティを厳重にしていたはず。(支部長に怒られたが)


 そんな江口を見て泉は勝ち誇った笑みを浮かべる。


「それでは先生。失礼します。」


 二人は揃って応接室から出て行った。江口は流石に広い範囲だから見つけることができるわけないと思いつつ、彼女たちならやりかねない…と不安に駆られたが、これ以上の手出しは支部から止められているのでどうしようもなく見送ることにした。




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