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須藤 亘4

「わったるさん!今日は折角ですし遊びません?」

「…ん~まぁやることもなかったし…いいかな?何して遊べばいいのかな?」


 今日は良平さんは外出、農作業は朝の間に済ませ、後は夕方となっていて昼が暇なのだ。俺は亜美ちゃんの誘いに応じることにする。

 …しかし何だ…人と遊ぶって何したらいいんだ?子供の頃は…あぁ財部がずっと張り付いてたから友人という友人は出来なかったし…高校入ってからはあの女にずっとこき使われていて本ぐらいしか娯楽はなかったしな…


「何か難しい顔してるけど大丈夫?」


 俺が考え事をしていると亜美ちゃんが顔を覗き込んできた。…この子距離感が近いからなぁビックリするんだよ。…まぁ人懐っこいことは良い事なんだけど悪い男に引っ掛からないようにね。


「…遊ぶって…何するんだい?」


 辺りは田園に畑、山に川だ。この季節なら…山が妥当なとこか?


「街に出ましょ~!バスで!」

「…遠くないかい?」

「ん?そんなに遠くないよ?」


 成程、距離感は近いわけでもなくておかしいんだ。











 バス停まで30分、そこからバスで20分。俺たちは一応町と呼べる規模の町に着いた。…俺何かこの時点で疲れてるんだけど。


「さぁ遊びましょう!」

「はいはい…」


 俺の手をぐいぐい引っ張って行く亜美ちゃん。元気いっぱいだなぁ…


「まずはここ!たまにはおいしいスイーツ食べたいんですよ!」


 喫茶店に連れてこられた俺は紅茶セットでモンブランを頼み、亜美ちゃんはショートケーキを選んだ。


「うーん!美味しい…」

「ホントだ…美味い…」


 休日は散々財部に振り回されて色んなところを回ったが…ここのケーキはかなりの逸品だ。紅茶の入れ方も悪くない。


「良かったです!」

「うん…」


 亜美ちゃんは食後の余韻を楽しむんだな。俺と一緒か…あいつの場合すぐに違うところに行きたがるからな…っとそろそろ時間が…


「じゃ、次行きませんか?」

「いいね。」


 俺が時間を気に掛けた所で亜美ちゃんから先に声を掛けて来た。何か楽しくなって来たぞ…?


「次はゲームセンターでプリクラです!」

「いいよ。」


 まぁ俺としては写真撮るならケータイでもできるし無駄に高いからあんまり好きじゃないんだけど…亜美ちゃんは楽しそうだしいいか!


 中に入ると店内はガラガラだった。時折人がいるくらいだ。…そう言えば今日は平日だったよな…亜美ちゃんは学校どうしたんだ…?


「やっぱり平日は空いてていいよね!」

「…そう言えば亜美ちゃん学校は?」

「テスト休み!」


 屈託のない笑顔で言われて俺はそう言うものかと納得する。…俺のいた所にはテスト休みなんかなかったからなぁ…


『じゃあ撮るよ~!』


 そんなことを考えていると色々設定を終えられたらしいプリクラ機が女の声で何か言ってきた。


『はいチー…』

『隊長っ!』


 …何だ?急に男の声が入って来た…どうしたんだこれは…


『何だ…今プリクラの撮影中で忙しいんだが…』

『そんなことより見てください!敵の大群が迫って来ております!』


 …ホントに何だこれ…亜美ちゃんは…メモってる!?


『…そんなことプリクラの撮影に比べれば些細なことではないか!』


 おかしいだろ!というか亜美ちゃん書くの早いな!


『隊長!あなたがいなければ我が国は…』

『ええい!今は後回しだ!はいチーズ』


 フラッシュが起こり、俺らはおそらく写真を撮られたのだと思う。


『隊長!もういいですね!?行きましょう!』

『待て…後2回俺はここでプリクラを撮らなければいけないのだ…』

『そんな!民や皆を救われるつもりはないと!?』

『…悪いな…だが今の私にはそれより大事なことがあるんだ…はい!変顔でいこ~!はいチーズ!』


 …こんな状態で変顔出来るか!


『…あなたは変わられたのですね…こうなれば!』

『うぐっ!何を!』

『あなたはもう上に立たれるべき人物ではない…ここからは私が自由にやらせてもらいますよ…』

『くっ…ならば…せめて…私の代わりにプリ…クラ…を…』

『…仕方がない…ですが自由にやらせてもらいます。はい自由なポーズではいチーズ!』


 …もういいや。撮り終わった俺たちはパネルに出た写真を落書きしていく。俺はほぼ棒立ちだが亜美ちゃんは全部指示通りにやっていた。


「レアパターンでしたね!」

「…あれ…何なの…?」



 書き終えてプリントアウトされる間に亜美ちゃんに事の真相を尋ねる。するときょとんとした顔で小首を傾げられた。


「知らないんですか?『戦場カメラマン』ですよ?」

「…多分…何か違う。」


 苦笑いを浮かべていると写真がプリントアウトされた。


「はい!記念に半分こです!」


 満面の笑みで渡してくる亜美ちゃん。…何かいいなぁこの感じ…


 俺は外出したのには珍しく楽しさと心地よさを感じて帰路に着いた。

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