須藤 泉3
「…お兄ちゃん…私本気出すからね…」
私はとにかくできることを全部することに決めました。さしあたってはお兄ちゃんを追い詰めた原因の加奈子さん…いや、あの下種女を排除しましょうか…おや、インターフォンが鳴りました。朝っぱらから誰でしょうか?
「はい?」
「財部家にお仕えさせていただいている田辺と申します。本日は亘様の携帯電話をお持ちいたしました。」
何で財部さんの家が…?あのときに見た感じではお兄ちゃんが家出したことすら知らなさそうでしたが…?まぁいいです。とにかく使えるものは何でも使うと決めたばかりです。
「…どうもお早うございます。」
私の顔を見て恐ろしい化け物を見る目でメイド服を着た女性は見てきました。失礼な…まぁそんなことはどうでもいいですね。私はもうお兄ちゃん以外からの目なんて気にしている状態じゃないのですから。
「…こちらが…携帯電話です。杉崎と言う人が持っていたそうです。…色々なデータを復元しております。」
「…消されていた部分もあるのですか。わかりました。…それと訊きたいことがあるのですが。何らかの手掛かりを持っていそうですね。教えてください。」
「…一応…GPSから…とある墓地に手掛かりがあるのかと…」
「住所を。」
中々に使えそうな人ですね。それに無駄に抵抗しないいい人です。もうお帰りいただいて結構ですね。
(…怖い…狂った思想が見えて…あれはそれでも…愛?あんな形の愛を注がれている亘様には同情します…泉様も駒の一つにするつもりでしたがあれは制御できるものじゃなさそうですし諦めますか…それにしてもお嬢様といい彼女といい…もしかして逃げて正解だったのかもしれませんね…まぁ私はお嬢様の味方なので逃がしませんけど…)
去って行く田辺はそんなことを思いながら須藤家を離れて行った。対して泉はメールを全件確認して父親に送信。そして、加奈子と別れるように自身からもメールを送る。
(あぁ…平和惚けしてたみたいですね…こんなにひどい目に遭わされてお可哀想なお兄様…私が助けてあげた後は何もしないでくださって結構ですよ…ずっと部屋に籠って下さい。私がずっと面倒を見ましょう。一生をかけて足りていなかった愛を注いであげましょう。)
そんなことを思っているとリビングで揉める声が…そうでしたね。お父様はいい人ですもの…あんなメールの内容でお兄様をずっと使っていたなど知ればお怒りになるでしょう…さて、あの下種の息の根を止めましょうか。
私はカメラを片手にリビングに向かいました。
「加奈子…僕はずっと騙されていたことに気付いたよ…君が亘に謝って許してもらわない限りは君と暮らすことはできない。」
おや、甘いですね。この下種をまだ許そうとしているのですか。
「そう…亘は全部ばらして行ったのね。育ててもらった恩を忘れて…あの恩知らずが…」
「加奈子そんなことを…」
「五月蠅いわね…別れるんでしょ?じゃあ早く出て行って。ここは私の家よ。」
「…言い訳もしないんだね…分かった…出て行くよ…」
「あ、離婚するんだから財産分与はもちろんするのよ?手続きの日取りを決めないと!」
清々しいまでに下種ですね。…私が出ますか。
「加奈子さん。ちょっといいですか?」
「何か用?クソガキ…」
「泉に何てこと言うんだ!」
あれ?私の時は怒るんですね。お兄様の時は怒らなかったですのに…まぁ今はこの下種を相手にしないといけませんから置いておきましょう。
「とりあえず私はあなたみたいなのを初めて見たんですけど…とりあえず醜くて仕方ないですね。これは是非色んな方々に知ってもらいたいですね。」
「…何?私を脅迫するの?」
下種が鋭い目で私を睨んできます。あぁ気持ち悪い。何でこんなゴミ箱からお兄様のような素晴らしい方が生まれたのでしょう?不思議でありませんね。
「いえいえ。私の感じたことを皆さんに知ってもらいたいだけです。そうですね。私は不本意ながら学校にファンクラブが出来ていますからその方々には知っておいてもらいましょうか。次にブログの方にもあげておきますね。後は…財部さんの所にも…」
「はっ!あなたみたいな子供が何を言っても無駄よ。それに私は財部さんと懇意にさせてもらっているのよ?財部さんは私の方を…」
「…何を勘違いしているのですか?」
この下種は何を言ってるのでしょうか?あの女がお兄様の敵を保護するわけがないのに…
「あそこの家は…いえ、彩愛さんが気にかけているのはお兄様個人であなたは付属品としてしか思っていませんよ?何を勘違いしているのですか?」
私の台詞を聞いて何故かこの下種は勝ち誇った笑みを浮かべています。とっっってもムカつきますね…
「そんなことはありえないわ…彩愛ちゃんに私の目の前で亘に訊かせたもの亘のことを好きかどうか。結果好きじゃなかったから私にとって亘に価値がなくなったのよ?」
「…どういう事か知りませんが…それは全く違います。大体お兄様の携帯のデータを態々復旧して持って来たのは財部さんの家の使用人ですよ?」
「そんなわけ…」
「先程のインターフォンも聞こえなかったのですか?…年波が来ていて大変そうですね。」
「このガキィっ!」
おや、単細胞並みの行動ですね。襲い掛かってきますか。軽くいなして…す必要もなさそうですね。
「加奈子!泉に手を出すのは許さないぞ!」
「ちっ!早く出て行きなさいよ!目障りだわ!」
言われなくとも…
私たちは家から追い出されました。




