第3章 ガレージパーティよろしくお願いします
パーティー会場から五派四家までは車で20分程度だ.
この嫌な感じは,降り出した雨によるプチ鬱(笑)であろうか.
それとも私の研ぎ澄まされた感覚システムが潜在的に何かを感じ取っているというのだろうか.
いずれにせよ,私は素朴に以下のように意識することができていた.
「五派四がやばい!」と.
先ほど私は五派四家まで車で20分程度だと言った.しかしながら,我々は車など持っていなかったために徒歩で五派四の家へ向かっていた.
雨も手伝って到着まで2時間はかかりそうだ.彼がやばかろうが我々が着く頃には・・もう・・・い,いや,考えまい.
ふととなりの酸陀ー損を見た.
もはや哀れなほど疲弊しきっている.
彼はいつも自分のロッカーに貯蔵しているワインボトルを右手に持ち,歩きながらラッパ飲みしていた.
当然のように傘も差していないため,我々はビショビショに濡れそぼっていた.
「サセーン,こいつがあらへんとどうも調子でえへんやんか...」
彼は困ったように笑った.
そのことは彼が話す際に眉間に入ったシワで把握できた.
「シッハ,シハシハ,イイデース.今日のガレージパーティはプールサイドに変更デース」
「歌いまショウ!」
「フーンフフーンフーンフーンフーーーン フーンフフーンフーンフーンフーーーン」
そうこうしていると,五派四ハウスが見えてきた.
見慣れた家だが今日はなんとなく雰囲気が違った.
家の中から奇妙な臭いがしている.何かおかしい.
しかも家から黒い煙のようなものが立ち上り,上空でうずを巻き,とぐろを巻いている.
庭に生えている草も奇妙にうずを巻いていた.
不吉な予感がする.
これ以上先に進んではいけないと体が忠告しているかのように1歩進むことが非常に重く感じる.
五派四は無事なのか.職業柄最悪の状況を想像してしまうが,無事だと信じよう.
私はゆっくりと確実に歩を進めた.酸陀ー損は私よりもさらにゆっくりと進んでいた.
パーティ会場を出発してから3時間が経過していた.
既に辺りは暗闇に包まれていた.