流転
あどけない少女が、大きな目を丸く見開いて、自分を見上げてくる。
口も開いている。その口から、言葉が漏れた。
「わあ・・・きれいな、きんいろ」
胡坐をかいた足に頬杖をついて、その幼子を眺める。
色白の顔は、幼いながらに整っており、ぱっと見た感じ、篝の子どもの頃によく似ている。
「あなたが、いなりさま?」
自分相手に物怖じしない様子も、そっくりだ。
少しばかり出てこなかった間に、もうこんなに喋るようになったのか。ああ、本当に、人間の時は瞬く間に流れ、退屈する暇もない。
「名は?」
知っているが、あえて訊く。
ぱちぱちと瞬いて、少女はにこっと笑う。
「ひのわともうします」
笑った雰囲気は、八雲に似ているようだ。
「お前、父と母、どちらが好きだ」
・・・まあ、そんなことは別に、どうでも良いのだが。
少女は、突然質問されて首を傾げる。
「どちらも!」
内容を理解すると、日輪は悩む様子を見せず、即答した。それを聞いて、金色の神は、にやにやと目を細める。
「いなりさま、こんなところにいて、さみしくない?」
稲荷は一拍置いて、声を立てて笑った。
なぜ笑われるのか、わからない、という顔をしている。・・・このきょとんとした時の顔も、父親似か。
「退屈はしておらんぞ」
篝も八雲も、時折顔を見せに来るし、自分と同じく屋敷に居着いた、暇な連中が、城下の与太話を仕入れてくる。
そして今、またひとつ、楽しみが増えたところだ。
「日輪」
「はい」
はてさて、未だ迷いを知らぬお前は、この先、いかなることに惑い、縁を繋いでいくのかな。
「たまに来い。―――気が向いたら、出てきてやろう」




