5.ちゃんと構ってあげましょう。
まどかが反抗期に入った。
忙しくてちょっと構う時間が減ってしまったからなのか、ぷいっと顔を背けて逃げられた。その衝撃といったら口に出せないほどにショックだった。
色々と策は練ったが、駄目だった。
恥も外聞もなく、床に額をこすりつけて土下座もしたし、ご機嫌を取ろうとす貢いだが失敗。
俺はもう生きる価値がない。
これからの人生は墓場も同じだ。
可愛いまどかに嫌われた。
神様に見捨てられてしまった。
意気消沈のままにまどかを家に残し、実家に帰ることになった。
「兄貴、暗いよ。何よ、その人生の終わりに立たされたような顔は。顔はいいんだからシャンとしてよ。恥ずかしい」
小生意気で可愛くない妹の顔を見ても嬉しくない。
天国から地獄に落とされた俺の気持ちがわかるか?
可愛いまどかがまるで思春期の女子のように、父親を厄介者にして酷く理不尽に嫌うように俺を邪険にっ。
無念過ぎて血の涙がでそうだ。
「あら、好きな子に振られちゃったんじゃないかしら」
「そんな訳ないって…て、ますます凄い顔してる。何、兄貴、相手はどんな子!」
まどかに振られた。
そうか、離れた今の間に違う誰かの所に行ったかも知れない。俺は捨てられた。
その事実にやはり心が根元からポッキリと折れる。血を吐きそうだ。
「兄貴?」
まどか。
まどか、まどか、まどか、まどか、まどか、まどか、まどか、まどかまどかまどかまどかまどかまどかまどかまぎっ。
信仰が足りなかったのか?
俺、一人では駄目?
そんなこと。
「いや、危ない。お母さんどうしよ、兄貴が人殺しそうな目してる」
そんなことは。
「放っておきなさい。男の子には色々あるわ」
「いや、あるわじゃないから。病んじゃってるよ!」
ない。
「目がイッちゃってるから!」
そんなはずない。
俺はまどかを誰よりも信仰してる。
誰よりも何よりも想っている。
「なら抱きしめて上げるといいわ。女の子はギュッとされるのにキュンキュンよ」
俺一人の丨まどか(かみさま)がいい。
「一発で許しちゃうわ!」
「ただしイケメンに限る、とかでしょ!」
抱き締めるか。
まどかが逃げ回るから今日は一度もしてないな。
「行ってくる」
ハグだ。
まどかを抱きしめよう。
「今度は彼女さんと来るのよ~」
そして、可愛いまどかに愛を囁こう。
飽きるほどたくさん。
まどかが囁き返すまでずっと。
「あー、とんでもない男に捕まったな、兄貴の彼女可哀想」
許してもらえたら、ずっと一緒に戯れていよう。
やっぱりまどかがいないと駄目だ。