3.依り代を見つけましょう。
まどかにはあまり匂いというものがない。まあ、当たり前だが俺の香りと同じ匂いがする。
「まどかは依り代とかなくても平気か?」
実体はあるが霊体のようでもある。薄ぼんやりと空中でワタワタしている姿を何度か見たことがある。すぐに助け舟を出してしまうのだが、その姿をムービーで撮ることは出来なかった。
本当に可愛らしい。
目で焼き付けるしかなかった。無念だ。
「…?」
小さく砕いた飴を口にしたばかりのまどかは頬をその飴で膨らませながら小首を傾げた。もちろんムービーに収めた。
鼻血が出てないことを祈るばかりだ。
「いらないのか?」
まあ、そうか。
まどかはちゃんと俺の目の前にいるわけだし、今まで何の支障もなかったんだ。
そう思っていたら控え目にちょこちょこと服を引っ張られた。
「欲しい」
駄目だ。
今のはキた。片手で鼻を抑えて、まどかを見つめる。
軽く欲情してしまった。
いや、言葉だけでそう言っただけで、軽い欲情なんて生易しいものじゃないが。きっと誰かがいたら変態がいると警察に通報されるだろう。
「な、なら、探すか」
言ったはいいがどんな物がいいのだろうかなどと思いながらも息が荒くなりそうだ。
寧ろいつも通りの御参りをしてしまいたいが、可愛らしいまどかは探す気満々でキョロキョロチョロチョロと動いていた。
グッジョブ俺っ!
とりあえず、背中を曲げて前屈みになりながらまどかに一声掛けてトイレに駆け込んだ。色々と処理しなきゃならないことがあるから仕方がない。
その色々を処理し終えて手を洗いハンカチで手を拭きながらまどかを見やる。
てくてくとことこ。
可愛すぎる。
マジ神様だ、まどか。
「あったか、まどか」
ふるふると顔を横に振っている。周りには俺の学校の道具がちらほらと転がっていた。
どうやらまどかは俺の学校先までついて来たいのだろう。本当に健気で可愛らしいまどか。
なんで俺の神様はこんなに可愛いのかしら。
ぽてぽてと俺に寄ってくるまどかは可愛い。つか、本当に可愛いから。
俺、別に信仰馬鹿じゃないからな。本当に文句なしに超絶に可愛いんだ。
手のひらに乗せてギュッと抱き締めるとまどかは俺の首筋をぺたぺたと触り始めてチャラリと音が鳴った。
「どうした?」
ずりずりと引きずり出してネックレスの飾りを両手で持って睨めっこしていた。
それなりに値は張ったがそれは俺の財布の懐にしてはだ。
「これがいい」
所詮、一目惚れで買ったこのネックレスは多少の傷は付いているし、細めの鎖でいつ切れても可笑しくはない。
「こんなんでいいのか?」
「これがいいの」
うるっと捨て犬ごとく寂しげな瞳に胸を射られた。一発で命中したそれは一撃必殺だ。
ああ、もう一度言うけど、なんで俺の神様はこんなに可愛いんだろうか。