12.認識間違いをしています。
騒がしい。
有り得ないほどに騒がしい。
まさか泥棒でも入ったんじゃと鍵を差し込みドアを開け放った。
「お兄ちゃん、この美人どこから浚ってきたの!」
まどかはおろおろしている。全く状況はわからないが、でもおおよその検討はつく。
結局どうしていいかわからなかったのかまどかは俺に飛びついてきた。
可愛い。
甘い香りがする。
「まどか、ただいま」
「おかえりなさい、優」
すりすりと顔をすり付けてくる姿も可愛い。本当に可愛い塊だ。
それに甘い良い香りがまどかからする。
これはやっぱりまどかの匂いだろうか。
いい匂いだ。
「ちょっ、忘れないでよ!」
あ、そういやいたのか。
むぎゅっとまどかの柔らかい身体を抱きしめながらようやく視線を不法侵入者へと向ける。
「幸、何しに来たんだ」
背中を撫でながらまどかに顔を寄せる。するとくんくんと犬のように匂いを嗅ぎ始めた。
可愛いな、おい。
「美女を監禁してるなんて」
「鎖で繋いでるみたいな言い方すんな」
「じゃあ、軟禁!」
してねえよ、と思いながら確かにまどかは俺と一緒にしか外にでてないが、でもまどかを別に閉じこめてる訳じゃない。
「まどかが一人で外に出たら人が群がるだろ」
ただでさえ可愛いまどか。
「神様なんだし」
バレれば人が群がるに決まってる。
まあ、何の神様かは本当にわからないが。
可愛いからいい。
「え?」
固まった。
引きつった顔はやはり可愛さの欠片もない。まどかを少し見習ってほしいくらいだ。
「か、神様?」
「ああ。そうだ、俺の妹の幸だ」
「妹。優の妹。まどかの妹?」
どんな思考をしたんだ。
でも、俺と結婚したら幸はまどかにとって…義妹?
「そうだな。そうなるかもな」
上目遣いで無邪気にそう言うまどかに変な突っ込みをいれられないし、まどかは可愛いから何を言っても許される。
「可愛いよ、まどか」
「優」
このままキスをしようとしたがゴホンとわざとらしい咳払いが聞こえて思わずそちらに視線を向ける。
「ええと、無礼をお許しください!」
俺達の視線に耐えきれなかった幸はそう言うなり土下座した。額を床に押し付けた。
俺が言うのはアレだが、惨めというか哀れというか、凄い。
「ちょっとお兄ちゃんとられて嫉妬しちゃいました。ほんと天罰とかマジ勘弁してください!」
お前に嫉妬されても嬉しくねえ。どうせならまどかに可愛らしく嫉妬されたい。
つか、番猫のけがわはどうした。けだまは性格から向いてないがけがわはピッタリだろ。
「てんばつ?」
なにそれ、と言いたげな顔で不思議そうに俺を見つめた。まどかは何一つ神様らしいとしたことを俺も見たことない。
神様で間違いないと思うが、まあ、可愛いからなにもできなくてもいい。
「とりあえず、誤解だ」
優しいまどかが天罰なんてしない。
まあ、可愛いからしてもいいが。