1.充分な信仰を捧げましょう。
ある日、朝に目覚めて一番最初に見たモノがちんまりとした愛玩具の人形のように可愛らしく美しい神様だったなんてことが一生に一度くらいはあるらしい。
「今日も可愛い」
基本に毎日、話し掛けて崇めることが信仰を捧げることらしい。
ベッドはあるもの合わせで作ったんだが、気に入っているのかいつもそこにいる。
ちょいちょいと手で参拝。
相変わらずちんまりとしているが、可愛い。
格好はアレだ。かぐや姫のように重ね着みたいな奴を着ている。絨毯やベッドの上が歩きにくいから動かないわけじゃないだろう。
ああ、最近喋るようになった。
「ゆう」
鈴を鳴らすような綺麗な声もやはり可愛らしい。小さいが声は例え騒音の中でも聞こえるような本当に可愛らしい。
掌サイズな神様。
可愛い。
「ゆう」
「まどか」
静かな神様だったから《まどか》。
もじもじと控え目で、いつも可愛らしく上目遣い、小さな桜色の唇が躊躇いがちに俺の名前を呼ぶと堰を切ったように連呼する。
そう言った時は人差し指を献上するとムギュと両手を回して抱きついてくる。
それだけでも御利益がありそうだ。
まどかは未だに何の神様かはわからない。神様を得る事態があまりないというのが原因不明の理由だ。
見たことがあってもすぐに去ってしまった、夢だと思った、二度寝していた、消えてしまったなどがある。
満足したのが恥ずかしそうにおずおずと離れてふわふわモッコモッコの布にもふもふしている。
「可愛い」
信仰している。
顔が悪いからか絡まれることが多く、舐められることのないように可愛いものを目にも入れなかったのがいけなかったのか、この小さな神様を崇拝状態。
毎日のように二礼二拍手一礼をしている。
まどかは日向の中が好きらしくいつも気持ちよさそうに微睡んでいる。
学校に行っている間は何をしているか気になるが可愛いから別にいい。
実の妹すら可愛いと思ったことないが、まどかは本当に可愛い。ちんまりと座り、お供え物を頬張る姿は本当に可愛いらしい。
というか、可愛い塊だ。
排泄物はどうなってんだとかは気にしちゃいけないんだろうな。
「ゆう」
「どうした?」
「ん」
抱っこ。
そう言いそうな仕草に思わず鼻を押さえる。
可愛すぎてどうしよう。
「まどかっ」
両手でまどかを救うように抱き上げて顔を寄せるとピタリと頬に張り付いた。
「ゆう、すき」
あ、ヤバい。
タラリと鼻から垂れているような気がする。そう、何か赤い何かが垂れているのじゃと気になるが、気合いで垂らすわけにはと踏ん張ってるがそれも怪しい。
「まどか…」
可愛い。
というかあれか、あれなのか、俺。
「すき、ゆう」
ああ、あれだ。