001
―――この世界は『因子』で構成されている。
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黒白の世界。
即ち闇夜と白雪の世界。
即ち暗闇と厳寒の世界。
この場所に居られるのは精々『忌まわしきモノ』ぐらいか。
此処を彷徨う自分は宛ら、ソレと同じと。
深い雪を踏み、風雪に逆らう様に進み、闇夜に混じる様に歩き、暗闇に飲み込まれる様に漂う。
だからか、だからかもしれない。
そこに居た一つの命を見つけた時、
唯、自らの手を差し伸ばした。
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静かな夜。
風雪は荒れ狂い、暴風の如く吹雪く。
北端の街『深雪の街』から更に北に行った場所にある雪原。
その名を『大雪原』、またの名を『凍獄』。
大雪原はありとあらゆる命を凍えさせ、その命を奪う。
そう伝えられてきた。
しかし、その話はあくまでも言い伝え。
そう思えるほどに、今、手を繋いだ儚い命は、けれども確かに思えた。
けれど、それはとても不可思議にも思える。
薄い衣しか纏わず、服や髪の毛は凍り、体温はとても冷たい。
それが普通のはずだ。
しかし、手を差し伸べた少女はその普通を破り捨てた。
少女の体の周辺の雪は融かされ水浸しになっていた。
風雪は少女の体を避ける様に流れていた。
癖のある長い黒髪も、すごく薄い衣も水浸しになっていたに関わらず、
周りの温度はやはり暖かく、指し伸ばした手に纏わり付いていた雪粒は融かされた。
今居る雪洞に連れてくるまで、ずっと暖かく、
雪洞に焚いた焚き火に当てる必要も無い程に。
左手で少女の頭を撫でる。
黒髪は指に絡まる事無く流れる。
右手は機械大剣を握ったまま放さない。
機械大剣。
この世界の不可思議なことの一つ。
それはオーバーテクノロジーの『機械』と呼ばれるもの。
それは事象を構成する要素である『因子』を操れる道具。
分解、保管、放出の三つを出来るのは、残念ながら現代人の知恵ではなく、
不明な部分を数多に抱える機械と、
今だ誰もその存在を知らない何者かによるものだと言うことだ。
様々な形の機械の中で、彼が持ってるものは武器統合型と呼ばれる、
つまり、機械と武器が一緒であるもの。
柄は細長く、機械の機関部は鍔の部分にある。
刃は熔かされた様な歪な形をしている。
その機械は現在稼動中。
空中に投射された映像には機関部の稼動状況(熱量、演算率、保管因子総量、etc)が表示されている。
因子は大きく分けて二つの種類がある。
全てのエネルギーとなる原始因子。
全ての事象を表す要素因子。
機械の〝スロット〟と呼ばれる機関に要素因子を嵌め込み、
その要素因子に原始因子を通す事で事象を生み出す。
機械毎にスロットは違い、
彼の持つ機械大剣は火属性の因子と重力因子の二つしか嵌め込めない。
そしてスロットを通さないで放出する原始因子。
この三つが彼の持つ機械大剣。
今彼が行っている事は火属性因子を用い雪洞を暖める行為。
長い夜はまだ始まったばかりなのだ。
説明回
処女作