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第六話 白銀と月の祭壇

前回のあらすじ~


圧倒的強さのクラウィン先生

クラス対抗魔道大会始まる

卑怯な手段を使おうとして失敗したグラルド(笑)


シャイナ「…部屋の隅にいるのは……グラルドか?」

「……とは言ったものの…」


ここはメインゲート、魔法学園の正門といったところです。


「こんな広い範囲からどうやってメダリオンなんか探し出すんだ?」


今回の課題に対してどうすればいいのかわからずグラルドは頭をひねっています。


「うむむ、やはり夜まで待たなくては見つからぬかのぅ~」


同じようにシャイナも考え込んでいます。


「夜まで待たなくても見つけられるわよ」


「え!」


グラルドとシャイナが声をそろえて言いま…


「で、どうするんだホールネ!」


「グラルド、急ぎたい気持ちはわかるけどナレーションが追いついてないわよ……。まあ、いいわ。学園長が言っていた白銀のメダリオンの特徴覚えてる?」


「夜になると光る……」


「そう、つまりマジックアイテムということになるわ」


「それで、どうするのじゃ?」


「マジックアイテムなら探知魔法に反応するはず」


「なるほど! …でも探知魔法は習ってないな」


「妾も使えぬぞ」


「私が少し使えるから平気。まあ、三キロくらいだけど何とかなるわよね!」


探知魔法が半径三キロ。


これは決して狭いわけではなく、三千人に一人いるかいないかの割合であり、いわゆる“天才”と呼ばれるほどの使い手なのです。


「それじゃ始めるわね、遠き目は最果ての欠片すら見逃さぬ ディクテトアイ!」


フォールナを中心に魔力の輪が広がっていました。


「どうじゃ、何かわかったか?」


「困ったわね、探知魔法はその範囲内のどこにマジックアイテムがあるかわかるんだけど、チェックポイントにある台座がマジックアイテムみたいで……」


「見分けがつかないと…」


「まあそんなところね」


「ふむ。フォールナ、地図を見て探知魔法が反応したところに印をつけることはできぬのか?」


「一応できるけど…」


「ではやってもらうとするか!」


シャイナはそういってハンドポーチから先ほど学園長が使っていた物に似た地図を出しました。


「シャイナ、地図なんて持ち歩いてるのか? 変わってるな」


「放っておけ。珍しいものや美しい景色の場所を覚えておくために持ち歩いておるのじゃ」


「いいのこれ使っちゃって?」


「なに構わぬ。それに似た様な物を後三つ持っておるしのぅ」


そう言ってハンドポーチから同じ地図を取り出しました。


「おいおい、そんなに持ってるのかよ……」


「安心せい、妾の部屋にはもっとたくさんの地図が飾っておるぞ」


「いや、何を安心するんだ?」


そんなことをしている間にフォールなの作業が終わったようです。


「ふぅ、一応印をつけたけど、これをどうするの?」


「妾に貸してみせい」


シャイナは地図を受け取るとペンを執って何かを書き始めました。


「何やってるんだ?」


グラルドが見ると、フォールナが付けたであろう印にバツを付けています。


「???」


シャイナが地図を受け取ってから数分がたちました。


「なるほどのぅ」


「何かわかったの?」


うむと頷くと手に持った地図を広げました。


その地図には赤い丸の印の上に黒いバツがいくつも描かれていました。


「これって……」


「ホールネの印の上に黒いバツをつけてどうするんだ? わざわざこんなことしなくても見やすかったと思うぞ」


「何を言っておる、このバツはチェックポイントじゃ」


ふん、とシャイナは鼻を鳴らしました。


「そりゃホールネが探知魔法で台座の位置に印をしたんだからチェックポイントなんだろうけど、この中にメダリオンが隠されている場所があるかもしれないんだよ?」


「そんなことわかっておる!」


「何かわかりやすい法則でも見つけたの?」


フォールナが不思議そうに聞きました。


「何を言っておる、学園長が言っておったではないか。この赤い点がチェックポイントじゃと」


「ちょっと待って、まさか貴女…」


フォールナは一度息を飲み込むと、


「あの地図の赤い光の場所全部覚えてるの?」


と半分震える声でたずねました。


「当たり前じゃ。あれくらい一度見れば覚えるじゃろう」


「…グラルド、覚えられる?」


「普通、無理だろ……」


「何じゃお主ら、覚えきれんかったのか? まあよい、それでじゃ…」


シャイナは地図の一点を指差しました。


そこには黒いバツはついておらず、代わりに丸がつけられていました。


「ここだけ学園長が言っておったチェックポイントにない点なのじゃ。つまり……」


「ここにメダリオンがあるってわけね!」


「うむ、その通りじゃ」


「すごいじゃないか! 見直したよシャイナ!」


グラルドはパチパチと手をたたきました。


「この場所は……、月の祭壇?」


「ふむ、確かにそう書かれておるな。妾もまだここに足を伸ばしたことはなかったのぅ」


「月の祭壇か、ニャスベルクらしいな」


「さて、場所が分かったなら他のチームが気がつく前に…」


「さっさと手に入れてしまおうではないか!」


「じゃ、行きますか」


三人は駆け足で月の祭壇に向かっていきました。




白銀のメダリオン争奪戦が開始された頃……。


学園では生徒たちが互いのクラスを罵り合ったり、自分のクラスを応援したり、なんだか分からない呪いをかけていたりと…、色々と手に負えない状態になってました。


それに便乗するように各クラスの先生たちの間でも私のクラスが一番だの、我がクラスが魔力ではトップだの、加速魔法では負けていないだのと生徒たちに負けず劣らず手に負えない状態になっていました。


そんな中、鼻歌交じりに紅茶を飲んでいる先生がいました、クラウィン先生です。


「頑張っているかしら、ふふっ」


そんな余裕を感じ取ったのか数人の先生が話に来ました。


「クラウィン殿、ずいぶんと余裕ですね」


「あら、私はいつもと変わりませんよ~」


いや、だからこそ……と言おうとしましたが別の先生にさえぎられてしまいました。


「しかし、今回の魔道大会がメダリオン探しとは、いささか簡単すぎやしませんか?」


「たしかに、下手をすれば魔法を使わずに勝ってしまう可能性だってある」


紅茶を飲み終えたのかクラウィン先生は、


「はい~、メダリオン探しだけでは魔道大会らしくないと学園長にも言われてしまいました~」


紅茶を注ぎながらそういいました。どうやら今回の魔道大会の題目を決めたのはクラウィン先生のようです。


「ですから、メダリオンの隠し場所に守護獣(ガーディアン)を召喚しておきました~」


「なるほど、仮にメダリオンの位置が分かっても守護獣(ガーディアンを)倒さなくてはメダリオンは手に入らないと」


「なるほど、ならば勝つのは我がクラスの者たちだな。魔力の量では我がクラスが一番だからな」


「いや、私のクラスの連携に勝るクラスはいませんよ」


先生達がまたも自分のクラスの自慢を始めました。


クラウィン先生はそっと自分のクラスの三人を応援しました。




太陽が西側に傾きかけたころ、グラルド、フォールナ、シャイナの三人は……


「こっちだと思うんだけど…」


「さっきからそう言って全然着かないじゃない!」


「まったく先ほどのところから月の祭壇まで一時間かからぬじゃろうに……」


…どうやら迷っているようです。


グラルドの先導のもと、月の祭壇を目指していたのですが、グラルドの方向感覚に頼ったために完全に迷走しています。


「それよりも、じゃ!」


シャイナが腰に手を当ててドンと地面を踏みました。


「なぜ三人で呼ばれる時、妾が一番最後なのじゃ! 納得いかぬ!」


「一番最後って、一番後か最後のどっちかにしろよな……」


「放っておけ! 何故じゃ! 納得いかぬ!」


どうやら“グラルド、フォールナ、シャイナ”と呼ぶ時の順番が気に入らないようです。


「確かに、うーん……、五十音順ならグラルド、シャイナ、私よね。魔力順なら私、シャイナ、グラルドだし…」


「ちょっ、俺のが魔力高いだろう?」


「フッフッフ、僅差で妾のが高いようじゃな。うむむ、ならば何順じゃ? 答えよ、ナレーション!」


……あのナレーションに突っ込みを入れないで下さい(泣)


「…だってさ」


「背の順じゃないの? 高いほうからグラルド、私、シャイナ」


「むむぅ、背の順か……」


そんなことを言いながら三人は月の祭壇へと向かっていきます。


ただ、グラルドが先導しているままなので月の祭壇まではまだまだかかりそうです。


と、そこへ神の助けか、違うクラスの三人が現れました。


どうやら上位三クラスの一つのようです。


「げっ、こんなところで…」


「さすがに素通りはさせてくれないわよね」


「ここで負けては大幅に遅れをとってしまいかねん、なんとしても勝たねばなるまい」


三人は決死の覚悟で杖を構えました。


しかし相手側の三人は最弱クラスの相手をしている暇などないといわんばかりに完全に無視をしていきました。


「…行ってしもうたぞ、妾たちに気が付かなかったのじゃろうか?」


「私たちにかまっている暇もない、って感じね」


「戦ってもいないのに、すごい敗北感なんだが…」


「うん。でも無駄に時間をロスしないですみそうね、魔力も温存しておきたいし」


「それにしても、今の三人ずいぶんと急いでたな」


「もしかすると、月の祭壇に向かってるんじゃない?」


「なんじゃと! ならばすぐに追いかけようではないか!」


「ちょっと待ってて……」


フォールナが杖を構えて探知魔法のスペリングを唱えました。


「三人が行った方向に反応があるわね…、さっきの地図のマークしたところと照らし合わせてみてみると…、月の祭壇だわ!」


「何じゃと! グラルド、方向が全く違うではないか!」


「あれ、違ったか? おかしいな……」


「今度からは、私が先導するわ。探知魔法はあんまり魔力使わないから大丈夫」


そういってフォールナが歩き出しました。


「全く、初めからそうしておけばよかったではないか」


ふっ と、ため息をついてシャイナも歩き出しました。


「……うーん、こっちだと思うんだよな~。 ってちょっと待てよ~」


グラルドも置いていかれないように駆け足でついていきました。


次回予告


月の祭壇には強力な守護獣(ガーディアン)が待っていた

圧倒的なその力に対抗する手段はあるのか?


「第七話 闇を味方につけるもの」


“よく来たニャ~、グラルド、フォールナ、シャイナ~”

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