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第一話 魔法の学園に転校生

ケホケホ……

そういえば、この倉庫にこんな小説が眠ってたな。

せっかくだから掘り返してみるか。


……書きあがってない!

ならば今一度書こうではないか!

      古の昔、そう、魔法や竜が存在していた時代の物語です。

 

      この物語の始まりは、小さな学園から始まります。




ファルナ王国の南、広大な草原の果てにその建物はありました。


王宮と言うと大袈裟かもかもしれませんが、石造りの立派な学園であることは間違いないようです。


ここは立派な魔道士になるための………



ズドグァァン――――――



ありきたりなナレーションを遮って学園から黒煙が立ち上がりました。


学園中がパニックに………


と思いきやまったく騒ぎが起こる気配がありません。


外にいた生徒たちは黒煙を見て口々に言うのでした。


「ああ、またあの緑の転校生か……」


「これで三十二回目、さすがに驚かなくなったよ」



さて、爆発した実験室に一人の少年、いや青年が顔をススだらけにして黒煙の中に呆然と立ち尽くしていました。


宝石のような緑に光る髪、琥珀色に輝く瞳、スラリとした四肢を持つ生い立ちのよさそうな顔立ちをしている青年です。


「おっかしーな、何でこうも爆発するんだ?」


考え込んでいると、実験室のドアが乱暴に開かれ一人の少女が入ってきました。


歳は十七か八といったところでしょう。


栗色の髪を三つ編みにし、つばのない帽子をかぶっています。


「ちょっと、グラルド! あなた何回この実験室を破壊する気! 今回は、ナレーションにまで被害を与えてるんだからね!」


しかし、グラルドと呼ばれた青年は顔をハンカチで拭きながら、


「爆発したくてしているわけじゃないよ。ただちょっとスペリングを間違えただけさ」


と軽い口調で話しています。



 スペリング………、バネや春ではないですよ。魔法を使うために正しい発音で詠唱する呪文のことです。


「それで、ホールネなんか用事?」


と少女に聞きました。ホールネと言われた少女は足をドンと踏み鳴らし


「だから、私の名前は“フォールナ”! 次間違えたら氷の像にするからそのつもりで!」


と随分と機嫌が悪いようです。


「ごめんごめん。それで、俺に何か用だったの?」


「そうだった。私たちのクラスにまた転校生が来るらしいわよ」


そう言われるとグラルドは頭をひねり、


「クラスって、今のクラス俺とホールネと猫だけじゃん」


と言いました。


「だ・か・ら、私の名前は“フォールナ”って言ってるでしょ!」


少ししてフォールナがドアを乱暴に開け実験室を出て行きました。


氷付けのグラルドを残して………。




さて、この学園は個人の魔法の実力によってクラスが決められます。


転向してきたばかりの生徒は一番下のクラスから始めなくてはいけません。


その一番下のクラスにグラルドやフォールナがいます。


グラルドの実力は一番下のクラスで間違いないのですが、フォールナの実力は少なくとも学園で上位三名の中に入る実力者です。


それなのに何故一番下のクラスにいるかというと、学園の先生たちに頼まれてグラルドのような転校生の面倒を見ているのです。


初めのころはさっさと一番上のクラスに戻るつもりでいたのですが、いつの間にか居心地がよくなって、今は全員が次のクラスに上がれるまでいてもいいかな、と思っているようです。



「起立・礼・着席」



フォールナの号令がかかりました。


このクラスの先生はクラウィンという女の先生です。


かなり上級クラスの魔道士でフォールナの憧れの先生で、歳はフォールナより三~四歳上です。


「それでは出席確認するからね~って言っても三人だけじゃ確認のしようがないわね~。まあいいわ、フォールナ・リ・トルエルさん。」


「はい!」


「いつも元気でいいわね~、それでは、グラルド・ジュエルクさん」


「は~い」


「なんか体が凍っているけど平気? え~と、ニャー・ニャスベルクさん」


「ニャー」


「うんうん、今日も全員いるわね。さて今日は……」



その前にもう一人、いやもう一匹紹介しておかなくてはならないだろう。


このクラスに不自然な、というよりのこの学園的に不自然なニャー・ニャスベルクという名の生徒……というかネコだ。


このネコは学園の入学試験に迷い込み、なぜか合格してしまったらしい……。


学園もこの風変わりな入学者をどうしようかと悩んでいました。


人の言葉は話せないのですが、入学試験の試験用紙にしっかりと“ニャー・ニャスベルク”と名前が書かれており、しかも記号問題は全問正解、ほかの筆記問題にはニャ~とか肉球マークが書かれていました。


学園は“これはきっとネコ語で答えが書かれている”と解釈し見事に合格したのです(もちろん筆記問題が間違っている可能性があるので、その部分は点に入ってません。しかしそれでも合格点に達していたのです)


さらに入学後、魔法の実技試験があったのですが、それすら軽くこなしてしまったのです。


けれど一応ネコなので高いクラスに入れるわけにもいかずこのクラスにいるというわけです。


「え~と、なんか長~い説明が入っちゃったけど、まあいいわ。さて皆さん今日このクラスに新しいクラスメイトが増えます、さあ入ってきて!」


とクラウィン先生が言うと一人の女の子が入ってきました。


歳は十五か十六くらいでしょう、金色の髪を肩のところで切りそろえ、シルクでできているドレスに身を包みいかにもお嬢様といわんばかりの風体です。


そしてあごをクイっと上げ三人(正確には二人と一匹)を見下ろしました。


まるで“自分のほうがずっと偉い”というように。


「なんだか、いかにもお嬢様って感じの子だね。」


とグラルド。そこでフォールナが、


「グラルド知らないの? あの子王族よ、たぶん。ほらドレスに王家の文様が入ってる」


と口添えしました。


「え~! あの子王族、つまりお嬢様じゃなくってお姫様ってことなの!」


とグラルドが叫びながら立ち上がりました。すると、


「おやおや、五月蠅い輩がいるようじゃのう」


といかにも王族、といわんばかりの口調で言いました。


相手が王族となるとあまり失礼なことをすると命にかかわります。


「すみません、お姫様」


グラルドもしぶしぶ誤りました。


「え~とね、この子はファルナ王国のお姫様なんだけれど、体験入学ということで一年間この学園に滞在することになったの~。生徒として入学するので敬語とかで話さなくてもいいからね~」


とクラウィン先生が説明しました。


そしてお姫様のほうを見て


「よろしいですね~、それでは自己紹介してもらおうかしら~」


と言いました。


お姫様は一歩前に踏み出すとコホンと咳払いをし自己紹介を始めました。


(わらわ)の名はシャイナ・セルシウム・ファルナ十五世じゃ。そろそろ王座に即くことを考えなくてはならぬ歳じゃが、父様に“もっと上手に魔法が使いこなせるまで王になってはならぬ”といわれてしまったのじゃ。本来ならお主らのような万民と共に勉強するなどもっての外じゃが、仕方なくこの学園に入学することに決めたのじゃ。妾と共に勉強できるのじゃ、感謝せいよ」


自らの経緯を述べ、ドレスの裾をつまみおしとやかに一礼しました。


「それじゃあ、今日の授業から参加してもらいますから~。シャイナさんはグラルドさんの隣の席に座ってね~。では、授業を始めます」


鐘の音と共にクラウィン先生の授業が始まりました。


次回予告


なぜ王族がこんな一般の学園に来ることになったのか。

その時、平和な日常を揺るがす事件が巻き起こる。


第二話 おてんば姫の小鬼(ゴブリン)退治


“ふむ、そうじゃ! 妾がゴブリンどもを追い払ってやろう! この国の姫じゃからのぅ、これくらいはせんと”

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