第1話 夢
見えない半透明な膜が包みこむように少女をとりまく。触れようと思えば触れることだってできるし、破ろうと思えば破れるのかもしれない。しかし臆病な少女はその膜を破ることにより自分に不幸が起こるのではないかと恐れている。
・・・馬鹿な私。
そんな膜に覆われているから向こうがわの相手の顔が見えないのに。幼くて拙い思考回路しか持たない少女は生きていこうと必死だった。残された未来さえもが闇のなかにあるのだと思いながら。
無機質な機械音が私を現実の世界へと戻す。
時々見る夢とは違い私の視界は何にも遮られることもなく極めて良好だ。私の眠りを妨げた機械から発せられる単調な音を止めて音の原因を見る。
『おはよー(*^o^*)今日台風で学校休校だってさ☆休校バンザイ(>_<)』
外に目をやれば今にも落ちてきそうなほど低く濁った色をした雲。雨はまだ降ってないがこれから酷くなるのだろう。私は機械を手にとり返事を打つ。
『マジで?やったね♪今日の英語潰れたね(^-^)v』
この機械はとても便利だ。相手に自分の表情を見られる事もなく会話が出来る。世の中は何と快適なのだろう。返事を打ち終えた私は今日一日の過ごしかたを考える。予想外の休日。やっぱり何も考えないで寝るのが一番有意義か…。そう考えてもう一度眠りにつこうとした時。再び無機質な機械音が私を呼んだ。
『英語の予習してなかったからラッキー(>_<)てか来週亮の学校の文化祭らしいよ!行く?』
亮はこのメールの送り主である亜稀のメル友で最近頻繁に連絡を取り合っているらしい。普段から会ってみたいと言っていた亜稀に協力するのもいいか…どうせ来週は暇だ。
『そんなに亮に会いたいの?笑 仕方ないなぁ。この私が付いて行ってやろう(^○^)』
その時は彼の存在なんて忘れていた。まさか再会するなんて…