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神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
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注目される意味

敵愾心


 憤り、敵に対して抱く争いへの意気込み、闘争心、など。


 敵と対峙する、というのが主な意味であるが、勝ちへの意味合いが強い。


 近い言葉としては上にも出たように闘争心、ライトにすればライバル意識などだろう。


 向上心同じく、これ単体で悪い感情とは思わない。


 相手との方向性が合えば、心を通わせることにもつながるだろう。


 生涯のライバルという位置づけがそれに当たるだろうか。


 しかしやはり何事も、行き過ぎれば……であり。


 いつか乗り越えなければいけない壁として、立ち塞がる先生や師匠に抱く感情と、

私は結論づけている。











「さて、この時間がやってきた。試験は難しかったか?」


 アースでいうホームルーム、連絡事項等を説明するだけのありふれた時間だったが、

 この時だけは全員が固唾を飲み、静かに静かに続きを待っている。


「ふっ、今回の方法は『校長』から提案されたものでな、新しい基準だった。

 ……そうだ、お前らの落胆ぶりどおり、今回の基準はかなり厳しいものだった」


 校長という言葉を聞いた瞬間、複数人のうめき声が聞こえてきていた。


 見回してみれば人によってはもう、吐きそうなほど顔を真っ青にしている。


「だがしかし、本来ならお前らはこの基準を超えていなければならないはずだ。

 基準理由を聞けば、この結果を納得せざるを得ないだろう」


 眺めるように、生徒を一巡するブーニング先生。


「言うぞ?」


 自信を持っている者も、落胆していた者も、示し合わせたかのように同時に頷く。


「今回の試験による補習基準は――――


 エリック・シルフィールドとする!」




 …………私?


「そう、お前だ。いや、そこまでおっかなびっくりしなくていいぞ?」


 そんな目でひと睨みされましたら、肩のびっくり上がりぐらいしますって。


 先生、捕食者の目なんですもん。


「飛び級したとはいえ、エリックとお前らでは倍近くの年齢差がある。

 その差、例え座学の時間だけに限定したとしても、お前らの方が圧倒的に長いはずだ。

 負けていい理由なんて見当たらんだろう? 基準に反論はないな?

 これから科目別に、低い順に呼ぶ。つまり、エリックが呼ばれるまでに呼ばれた者が、

 今回の補習対象者だ」


 疑問でいっぱいの流れから切り替わって、前後左右から鋭い目線が突き刺さる!


「ひぅっ!」


 無意識に変な声でちゃった! そしてすっごく居た堪れない。


 ……汗と鳥肌がすごいことに。


 悪気がないのは分かりますけどねぇ、泣いて逃げるぞコノヤローども。


「お前ら……子供相手に必死の形相を作るんじゃねぇよ。それでも騎士の卵か」


 じゃあ私が補習基準だと発表しないでくださいよ。


 絶対、ぜぇっ〜たい、これから厄介事が目に見えて増えるよ、これ。


 



 


「キャロ、クラン、お疲れ」


「あ゛〜、勉強会しなきゃよかったんじゃないかなぁ……」


「こりゃねーよ」


 結果は八割強、補習行き。


 正答率は平均六割強程に抑えたんですけどねぇ。


 罪悪感なんて持たないぞ〜、持たないったら持たないぞ〜。


「裁定は個別科目だったろう? まだ良かったほうじゃないか」


「クランさんは全科目補習ですけどね〜」


「抉るの止めて下さいお願いします。なんでもしますから」


「ん?」


 どの世界でも、その言葉は禁句だと思うんだよね。


 自分の発言に戦慄(わなな)いてちゃ世話ないね、クランさん。


 反対にさっきまで沈んでいたキャロラインさんが、ウキウキ顔で復活した。


「んふふ〜エリック君、何がいいと思う?」


「そうですね、私は試験が終わって決闘も始まりまってしまいますから。

 補習期間中でも私の戦闘訓練に付き合ってくれる罰、ということでどうでしょう」


「……もっとえげつないのでもいいのよ?」


 ちょっと不満そうに口をとがらせていた。


 さらっとその言葉が出てくるのはどうかと思うのですよ。


「重りでもつけさせます?」


「いいわねそれ」


 でも、それに乗るのが私でして。


「不利な条件だとしても実技でエリックくんに負けるなんて、許されませんね〜」


「あぁ、前衛が実践で負けるなんて許されないよなクラン?」


「…………。あぁ、そうだな」


「なんでしたら、私が模擬訓練のお礼に勉強を教えてさしあげましょうか?」


「それだけは! そこだけは『まだ』守らせて下さい、お願いします」


 本気で慌てながら懇願してくるクランさん。


 少しいやみったらしかったかな?


 まぁ私じゃなくても、クラリィさんに教鞭を振るってもらえばいいと思うしね。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「校長、エリックに敵愾心を作りすぎじゃありませんかね。

 行き過ぎてしまえばエリック個人への敵意になります、それは好ましくありません。

 そして……正直言ってしまうと今のままいけば、エリックが潰れかねません」


「学校を拡張できずとも、学生の質は上げていかねばならない。

 現状維持では実力を保てないものだと、よくよく知っていると思っていたが?」


「そりゃ、分からなくもでもないんですが……言動がなっている、とはいえ子供ですぜ?」


「だからこそ、だ。

 ここ最近の温湯状態を止めるためには、彼らを炊き立てる"何か"が必要だった。

 その何かを追い、自らこの身を熱していかなければ、外から熱湯を足したってすぐまた温くなる。

 ……今やこの学校には子供でも入れる、なんて言われる始末。

 このような事を言われると分かっていて、彼を初等部から引き上げたのは私だが、

そんな批評を負ってでも、このままこの学校を腐敗させたくないと思ったまでだよ。

 ……見えないものほど、怖いものはない。

 大丈夫だ、彼はこれくらいでは潰れはしない」


 …………。


「何がそこまであの子供を信頼させているんです?」


「……嫌な聞き方をするようになったものだ、おおよその検討は付いているのだろう?」


「……わかりました、戻ります」


「うん、ご苦労」












「ふっ、さしものあの二人をどうごまかしつづけるか、頭が痛いがな」

二週間!

いやぁ~かかってしまいました。

普通に難産でした、このお話。

エリック君は私の理想であるために、ある事を非常に嫌います。

それを面前に押し出した形にしようとしたら、思ったより難しい。

色々と妄想してくださると嬉しいですね~。


それではまた次話で。




最近白湯を飲むのが日課になった。




追記というか添削

見返すと『……』これが多いと思ったので結構削った。


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