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神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
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王族のお小遣い

森の岩さん


蛇に睨まれた蛙


 これは正しいのか。


 いや、人間に当てはめていいのか、といった部分に疑問を抱く。


 実際にその状況を見たわけもなく、本当に蛙が止まっているのも知らない。


 けど、恐怖に対して、体は動く。


 それはもう本能的なものだ。


 肩が跳ね、恐怖の出処に目を向けようとする、確認しようとする。


 声を上げ、時には死に至る、その不利益しか生まないような対象から少しでも離れようと、思考を巡らす前に行動する。


 私はそう考え、自分の人生から鑑みても、この結論を出す。


 慣れていけば、思考が入る余地が生まれてくるだろう。




 ……本当に、身体が凍ってしまうような、そんな状況。


 未来永劫、会いたくない。 









 凄みのある岩の生首。


 そんなものをある女性の前、嫌な音と共に机の上に置けば、少しだけ破片が飛ぶ。


 あったり前のように注目されている一行。


 それはもう、このギルドの建物に入った時から完璧に釘付け。


 そんな視線ももう慣れたものと言わんばかり、四人全員が全く気にしていないのは、流石王族とその取り巻きというべきか。


 繊細さの欠片も持ち合わせていないかのようである。


 ……実際にそんな事はないけど。


「……はいっ! 少々お待ち下さいぃ〜」


 顔を引き攣らせ、脱兎の如く奥に引っ込んでいった女性案内員。


 ……生首持った人たちが満足気な顔でこちらに向かってくるのだ。


 その上機嫌な表情は、さらに恐怖を掻き立てたに違いない。


「新人さん、かな」


「初々しい反応でしたね〜」


 可哀想に。


 今後、彼女らにおもちゃにされますね、私の勘がそう言ってます。確定事項です。




 ……少々時間が経って。




「お前ら……もうちょっと手加減してやれ」


 彼女は仕事し始めて間もないんだぞ、と付け加えながらぬぅっと出てくるギルドのおじさん。


 ため息は、それなりに重い。


「ラングロックなんて持ちだしやがって……この大きさは親か、まぁた珍しいもん狩りやがったな。

 苦戦したか?」


「だったら紹介してくれてもいいじゃない、あの初々しい新人さんを。

 ラングロックに関してはそこまで、かな。やっぱり動きが鈍いし、クランで足止めさせたし」


「お前らならそんなものか……それとあいつは今日からだ。紹介も何もしょっぱなからぶちかましたくせに。

 彼女もまさか初日での仕事でラングロック、なんて夢にも思わなかったろうよ」


「で、おっさん、討伐代と素材でどれくらいになるよ?」


 といっても苦労はしたんだぜ? と、さらにぼやく前衛と、ぅーん、と少し唸っているおっさん。


 ……呼び方うつった。


「そうさなぁ、二十万ぐれぇでどうよ。こいつは地属性系の魔石の装飾に最適だしな」


 といいながら生首の頭頂部をいい音鳴らして撫でる。


 因みにラングロックに出会ったとしても、一目散に逃げれば追いつかれることは一般人(かけだし)でも殆ど無いのとのこと。


 さらに個体数が同ランクに比べたら少なく、生還者もランクを思えば多いために脅威と見なされ難く、討伐代も少ない。


 故に素材代金が大半を占める。


 そのため、ただ倒すだけではこの半分にも至らないらしい。


「うん、それでいいわ」


「よし、んじゃさっさと取引したいが……ラングロックの肉体部分は残ってたりするか? こいつほど良質ではないが、素材としては悪くない」


 乾いた音をさせながら更に撫でる。


 ……あ、破片がこぼれた。


「爆発で結構散り散りになってると思うけど……それでいいなら」


「爆発か……まぁ消滅させてないなら問題ないだろ。すまんが、ちょっと時間をくれんか?

 ちょっとした稼ぎになる」


 顎で差された方向に首を振ってみれば、強面のおじさんらが顔をあわせてうんうん頷いている。


 ……あえて言おう、シュールであると。


「別に構わないわ」


「聞いたか? 面倒な手続きは後回しだ、小遣い稼ぎに行ってこい!」


「よっしゃ、行くぞお前ら! ありったけの袋持って集合だ!

 酒はしっかり抜いてこいよ!!」


「「おお!!」」


 一気に暑苦しいですねぇ! 


 まるで、寝坊して慌ただしいアースのサラリーマンの朝みたいな風景である。


 でも……。


「行かせて大丈夫なの? もう昼過ぎだし、お酒を抜くといっても……」


「あぁ、そこんところは信用できる奴らだ。ランクこそ低いものの、いや、低いからこそあいつらはあいつらのやり方がある。

 ……冒険者稼業が長く続いているのが良い証拠だ、無茶だけはしねぇ」


 それと、あいつらけっこう懐は温かいんだぜ? と付け加えるおじさん。


 危機管理は一流というやつですね。


 小娘らに心配されるほどヤワではないと。


 そしてギルドのおじさんの信頼も得ていると。


 シュールでノリが良く、渋くて暑い古者集団。


 前者と後者でなかなかにカオスだ。


 ……そして何時の間にか、依頼やその他諸々の魔物討伐料を含んだお金が目の前に。


 クラリィさんがしっかりと、確認しながら受け取っていた。


「おっと、そういや坊主。頼まれてた皮だが、一応最終工程に入った。

 明日の朝には渡せるぜ」


「らしいぜキャロライン?」


「それじゃ小遣い稼ぎは終わりね。クラリィ、後は宜しく」


 リーダーが把握してないんですか、変にズボラだ……。


「はいはい、任されたよ」


「それじゃ、明日の朝出るからそのつもりでね。自由行動、はい解散!」


 その掛け声を皮切りに一杯引っ掛けてくるとクランさんが出ていき、それに付き合うのが当然、といわんばかりにキャロラインさんが付いていく。


 いつもの逆……のような気もしないでもない。


 クラリィさんはそれには付き合わず、お金を確認した後、アリシアさんに意味有りげの目配せをして……多分宿に戻っていった。


 アイコンタクトはいつものことなので、そこまで気にすることもないとして。


 さて、私は……


「……うん、それじゃエリック君」


 −−底暗い、嫌な予感が背中に滑り、跳ねる。


「毎朝毎朝と、何処に行って何をやっていたのかなぁ〜?」











 ……逃げられるかなぁ。



一昨日に昨日投稿するといっておきながら、この体たらく。

申し訳ありません。

自分という人間でさえも、予想通りに動かないこの世界人生は中々にハードだと、改めて思い知らされました。

約一ヶ月ぶりの投稿となりまして、お気に入りが増えたり減ったり。

四年生になったら少しは暇ができるかなぁ、と楽観視しながら書き続けていく所存です。

このような小説に少しでも愛着が湧いていてくれているのなら、片手間にでも読んでやってください。

それではまた次話で。



……後書きは三分で書ける。

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