表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
47/59

幸運を掴み取るには準備が必要

失礼、少々遅れました。

 周りの林木々、森から飛び出してきた魔物と相対する。


 相手を認識すると共に危機感からか、想像していた事態となったからか、まるでスイッチが入ったように思考速度が速くなっていく。


 この状況ならどんな行動が一番正しいのか、なんて答えはもう出ている。


 逃走。


 そう、達成条件がなく、相対する敵が自身の実力以上の戦闘力を持っているのなら、逃走が一番望ましい。


 ……但し、速さを生業(スタイル)としている相手だったらどうだろうか。




 狼。




 アースの狼より一回りも二回りも体躯が大きい。


 幸い、集団ではなく一体。


 それでも前傾姿勢の警戒態勢。


 この時点で逃走という理想的選択は破棄。


 人が魔法の力を持っているこの世界でも、どちらのスピードが早いのか比べるべくもない。


 相手も魔法に適応しているに違いなく、基礎構造でのスペックの違いは埋められない。


 追いつかれて迎撃出来ずに崩れるのが目に見える。


 だから私は次善策――科学知識を使う。


 この場を生き残るために。




「退いて下さい!!」




 強くイメージするのは中央を抉り抜かれた棒。


 貫通はしていない穴に、よく見れば二桁単位モノの細い螺旋の溝。


 出来上がったもの(ミスリル)に、ポケットから先端が丸みを帯びたナニかを中に入れ、穴が開いた先を狼に向ける。


 そして、全力で魔力を……込めた。




 一瞬の発熱。


 先から迸る閃光。


 跳ね上がる腕。


 ……響いたのは発砲音。




 リロード機能が無く、たった一発しか放てない弾丸。


 だけどもそれは音と共に飛来し、音を追い越し、躱すことの出来ない速さで……狼に当る。




 そうして去った危機は、焦げた匂いと共に、静かに倒れる静寂に変わった。



 

―――――――――――――――――――




 生き方


 安全を追い、天寿を全うするだけなら何もしなければいい、というわけにもいかない。


 特にこの世界はアースではなく、日本でないのだ。


 街一つ取って見れば、魔物の脅威というものがあるにもかかわらず、治安機構の能力が低い。


 仕方のない事かもしれない、けれども自分が考える基準に達していない。


 情報の観点から見れば、隠蔽や捏造など、現代に比べどれだけ操作しやすいだろう。


 そして、理不尽が多い。


 つまりは、権力者による横暴が当たり前のようにある、ということ。


 私もそれに巻き込まれないという保証が無い。


 それでも幸いにも、私はこの世界で貴族として生まれた。


 確かにアースより生命の危険(リスク)が高いこの世界。


 働かなくとも、その身一生不自由なく暮らしていくだけのお金なら十分にあるはずで、


 だからといって、すべての事象から逃げ、ただ歩いて生きていくだけという人生。


 それはつまらない。


 私は、只々過ぎていく平凡な日常が欲しいわけじゃない。


 あんまりにも退屈な日常を生きていきたいわけじゃない。


 だからといって、波瀾万丈(ハードスケジュール)な日常が欲しいわけでもない。


 程々に刺激があり、自分が自分の感情の赴くまま、自由気ままに動ける日常が理想。


 この世界の超常現象、魔法というファンタスティックな現象に触れ学びながら、


 いろんな娯楽を見つけては、思いっきり楽しんで、時には作って改良し、


 至福の食事(とき)を毎日三回以上味わって、


 自分の心思う我儘を貫き通すように、


 そうしてそうやって生きていく。


 要は、私が我慢ならないことがあった場合、遠慮すること無くその道を(いき)るという事。


 そのための力は、知識と発想と努力で手に入れる。




 それが私の一生。


 それが私の理想。











「ねぇエリック君、今の何!? Bランクを一撃で倒すなんて!」


「フィルカニア・フォレストウルフ。主に山頂付近に暮らし住んでいるBランクの狼種。


 単独行動が多く、集団で目にすることは稀。特徴という特徴は無いが、相応の純粋な実力がある。


 爪は勿論、物理攻撃に富む硬質な皮、罠にかからない知性、そして高い脚力。


 魔法耐性も中々に高く、弱点がない上に逃げること叶わず、対処する術なし。


 と言われてるのにねぇ」


「ミスリルを持っていたなんて驚きです〜」


 ……お決まりの尋問タイムで早くも心が折れそうです。


 クランさんだけは何も聞かず、魔物の素材収集してくれてますけどね。



 


 ここで私の異質な部分の一端を見せたことに後悔はない。


 魔物を殺したことに関しても後悔はない。


 何よりも生き残ることが最優先なのだから。


 ここでのご都合主義、億に一の確率、他人からの助太刀等なんて期待して良い訳がない。


 なら『達人は最初の一太刀で殺せ』という言葉に習い、初手一撃必殺の攻撃をするしか無い。


 自分より実力のある者と敵対した状況……生き残ることなんて絶望的。


 同格相手でも、普通に負けることがあるのだから。


 出し惜しみなんてして負けました、なんて物理的にも目を当てられない。


 感情的に思うことすらも、できないかもしれない。




 今回の幸運は、相手が奇襲を仕掛けなかったこと。


 私の攻撃が当たったこと。


 そして、倒れてくれたこと。


 一番目が一番大きい。


 溢れて出た幸運(チャンス)を掴み取る為に、準備は絶対に怠らない。


 幸運が降ってきても、それを掴み取れない様では意味が無いのだから。


 だから私は、精一杯の努力と遠慮のない全力を尽くす。




「あーもう、秘密主義だなぁエリック君は! そんな奥の手を隠していたなんて!!」


「ふむ、しかしあのほんの僅かな時間でミスリルの変形を行うなんて流石、としか言い用がないな。


 よく魔力が練られた素晴らしいミスリルだ。


 どうしたらそれほどのものが出来るのか、教えてもらいたいものだが……」


「本当は凄いお金持ちだったんですねぇ〜」

















 嗚呼、それでもこの尋問タイムに後悔してしまいそうになるのは仕方ないよね……。

 コレが今の私の精一杯〜。


 本当なら銃はもうちょっと伏線を立ててから活躍させるつもりだった。



 他の方法、つまり当初の方法だと少し矛盾が出てきてしまうと思い変更。


 ここでこのカードを切るとは……ちょっと予想違いで、ちょっと辛い。


 もう少し、ギミック系統を説明してから使わせる予定だったのに。




 銃本体を単純化させれば、螺旋が書かれたただの棒。


 トリガーやハンマーとかの構造、そして火薬の代わり等は魔法的には解説するつもりですが、あくまでも女子高生が趣味で調べた程度の知識でしかなく(つまりは簡易版)、更にそれを魔法に置き換えてるといった感じですので、期待はしないでくださると助かります。


 魔法だからそれでいいよね! みたくはするつもりはないです。


 それじゃ面白く無いですからね!


 それでも、行き当たりばったりは物語を作り難い。


 最近になって厳しくなって参りました……。


 全力で続けていく所存ではありますがね!




 毛糸のカービィ……やりたいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ