様式美は一種の道標
「と、そうなればエリック君はギルドへの登録が必要だね」
……む。
「ギルドですか……」
こういうファンタジー系には正しく定番……なんだけども。
「感触良くないですね〜。何かあったりしましたか?」
「登録といっても仮登録だし、登録自体もそこまで面倒な事ってなかったが」
「日常会話文の読みは三歳で覚えたんだろう? それでエリック君が書きができないとは思えないけども、そうなのかい?」
「いえ、そういう訳ではないです。けど登録しないで付いて行く事ってできませんか?」
「別にできないわけじゃないが……おすすめしないよ?」
「むぅー。そんなことよりも、エリック君は喋り方が丁寧すぎる。敬語をなくしてほしいなぁ」
……脈拍無く話題をぶっちぎりますね、キャロラインさん。
「喋り方に関して強制しても仕方ないと思うけど? キャロ」
「だってこうやって促してかないとこのままだよ? 絶対に」
記憶上の実年齢はともかく、貴方がお姉さんですからね……この世界だと。
「む、それとなくエリックくんに馬鹿にされた気がする」
……女性っていう生き物は、心の機敏に対しては少々鋭い所あるよねぇ。あー嫌だ嫌だ。
さて、ギルドとはアースの物語、特にファンタジー系統では世界に置かれる巨大な職業安定所という見解が一般的で、ここもその類に漏れなくて。
犬猫探し、薬草取り、引越しなどなどの雑用。
冒険者としては華であろう魔獣の退治、団体様の護衛、数え上げればきりがない仕事の回旋を行う場所。
そして、予想通りなら絶対に「ある制約」がある筈で、私はそれを嫌いたかった訳で。
お約束としては登録するものなのだろうけど、テンプレートは守るために有るものではないくて、一種の基準として考えるべき道標だと思うのですよ。
さてさて、そんなこんな。
私にとってはストレス発散の名目、外面的には魔獣退治による実習課題として処理されているこの出来事。
挑戦者たちにとっては期間が伸びて迷惑甚だしいでしょうが、まぁそこは我慢してもらいましょう。
……というか、良い青年が子供に群がり勝負を挑む構図ってどうよ。
必死さはすっごく伝わるけどね! 負けるつもりはないけれど!
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朝から馬車に揺られ、体内時計の数時間後。
街の一歩手前のような町に到着しまして。
とりあえずはギルドへと。
「お、来たか嬢ちゃん。連絡は受けてるぜ、また鬱憤晴らしの魔獣退治かい?」
……顔なじみ状態とは。
「うん、ランク低いのそんな感じで回して〜」
実力者じゃない内から、かなり通ってますね? キャロラインさん。
「んじゃいつもの通り、集団型のやつ回しておくぜ。参加人数は……そのちびっ子も入れるのか?」
「いえ、私は登録無しで、ただそのチームに付いて行くという形にさせて下さい」
……静寂が通った。
えぇ、そうですか、そんなに丁寧な言葉遣いを子供が吐いたら駄目ですか。
「……おい、こいつ何歳だよ。――いや、貴族か?」
「見えねぇだろ、これで八歳なんだぜ?」
頭に手を載せてくるクランさん。
うぅ……もしゃもしゃは止めていただきたい。
「外見はそれぐらいに見えるが、全く見えんぞ。あんまり言いたくないが……大丈夫なのか?」
「「二つの意味で大丈夫よ(だ)」」
……どういう意味かな?
さてさて、この場この状況で私が想像した未来、これから起きうるであろう出来事は大きく分けて二つ。
一つ目は程度の低いナンパをふっかけられることである。
色は紅の夕日、先頭でオーラを放つ勢いのお嬢様系。
色は快晴の青空、その色とマッチして少々ミステリアスクールな綺麗系。
色は秋の栗茶色、艷やかロングで天然ニコニコ可愛い系。
それぞれのチャーミングポイントで、一目は向けられるであろう美貌を持っている人達。
揃って話しかければ大抵の男共はイチコロだろう。……羨ましい限りである。
まぁつまりこの三人が纏まって衆目に晒されるなら、男性がいてもそれはナンパの一つや二つ、起きることなんて誰でも容易に推測できるのですよ。
しかし、それはそれ。
彼女たちとてこの手の相手には百戦危うからずで、彼らの手が伸びた時点で撃沈である。
「……大人気ですねぇ」
「あはは……」
一言くらい、嫌味を言ってもバチは当たらないよね……?
そして、目的の場所に到着。
予定では、集団型のランクの低いモンスターの定期的な掃討依頼。
で、ここでもう一つの懸念事項。
未来に起こりうる、注意せねばなるまいその事象。
「……なんでこんな所にBランクの魔物が居るのよ!?」
ユニークモンスターの出現。
つまりは普段居ないはずの魔物による襲撃。
戦闘力が2ランク違いのほどの魔物と出会ってしまう事。
自分の命をこの世界に受けて、こういうアクシデントを想像せず生き残れる人は、それだけで運命力が突き抜けてると思うんだ!
大変お待たせしました。
三週間ほどもほぼお気に入りが残っている(それどころか増えていた)ことに驚きを隠せない作者でございます。
これからはいつものとおりのペースに戻ると思いますので、どうぞよろしく。
そしてやはり、腕の方が訛ったように感じてしまう今日この頃。(なんか指が踊ってくれないのです)
前のような書き方に戻ると確約出来たりするものじゃないので、作者の変化として捉えていただければこれ幸いです。
それではまた次話で。
私のお気に入りの作品が、一年ぶりに改訂版として更新再開したことが嬉しい今日この頃。