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神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
38/59

その後悔、先に立たず

後悔


 意味は言葉の通り、()になって()やむことである。


 そして、その悔やんだ事柄・行動をもう一度繰り返さないように決心する引き金としての役割もあったりする。


 が、その事柄を繰り返して後悔をすることもある。


 さらに逆に、その事柄に対して行動しなかったから後悔をしてしまうこともある。


 何が言いたいか。


 つまり、良い未来を掴み取りたいがために、人は決心をし、決心を翻す。


 やるかやらないか、試行錯誤し、後悔を繰り返す。


 後悔は、未来に背を向ける行為、歩むのを止める行為であるとも取れる。


 が、私は未来に背を向けても、足は止まることはないと考えている。


 足は結局時間に縛られ、未来に向かって一歩、一歩と踏み出している。


 その歩みが後ろ向きになったことにより、遅くなっただけで。


 後悔そのものは、人の道を踏み外すきっかけにはならない。


 後悔ともう一つ、疑念と憎しみが憎悪に摩り替わった時に、人の心は歪んでしまうと私は考える。




 ……結局、心が少しも歪んでいない人は、作られない限り、いないということである。











「それで、舞い上がってもう一試合やって負けたと」


「はい……」


「自分の実力を知るいい機会になったね。まだまだ前衛相手には戦えないということがよく分かっただろう?」


「これから爆発的に挑戦者が増えますね〜。主に前衛ばかりになるでしょうね〜」


「前衛じゃなくても、その真似事で突破出来るかもな……」


「う〜」


 只今お空(背景)は明日も晴れると思わせる綺麗な夕方。


 日時は女生徒をコテンパンに負かしたその後。


 あぁ、悔しすぎる。


「……俺と模擬戦、やるか?」


「よろしくお願いしますぅ……」


 私の引き篭もりにより形成されていたちっぽけな(五年間の)プライドは、あの女生徒のように砕け散りましたともさ……。






 原則として、決闘の申し込みや、その相手の決闘回数は日に一回までと決まっている。


 回数制限がなければ人海戦術などで相手の魔力を減らし、有利に戦う事が出来るからだ。


 ただし、その相手が決闘を望むなら別に問題はない。


 言い換えれば、決闘者は一日一回は決闘を拒否できない、といったところだろうか。


 決闘場に集まっていた観客は、決闘があっさりと終わってしまい、欲求不満というかそんな空気が流れていた。


 それもそのはず、相手がこけて即終了の状態、決闘として誰も納得しない。


 そこで空気が読める人なのか、その場の空気に当てられたのか、一人の男子生徒が決闘を申し込んできた。


 普通ならこんな申し込みは一蹴されて当たり前、けど私は受けていた。


 私自身、決闘をした気になっていなかったし、鼻高々の天狗状態でもあったからだと思う。


 そして……


 女生徒と同じように、何もできずに負けた。


 女生徒と同じように、何もさせずに負けた。






 詰まるところ、前衛相手の戦い方が分かっていなかったわけである。


「まぁ彼なら実力者になっても悪くは無かったよね〜」


「実力的には届いてた、か。確かに性格も実力も駄目な愚図が来ていたらと思うと……」


「それだったらエリック君、意地でも勝ってたんじゃない? 正義感けっこう強いでしょ」


「キャロ……」


「おいおい、それじゃ誰もが強いことになっちまうぜ、っと!」


 カァンといい音が鳴り、木刀が飛ばされ、そして当たり前のように喉元に軽く当てられる。


 ……この繰り返しである。


「ほい、五勝めっと」


「……う〜」


「いいじゃない、誰でも持ってるでしょ。正義感って」


 木刀を弾き飛ばされた衝撃で、手がビリビリする。


 ……殆ど何もできずに五連敗。


 全く詠唱する暇なんてないし、かといって向かってくる剣を受け止めることなんて出来ない訳で。


 まるで赤子の手を捻るかのような一方的な展開が続いている。


「ほらもう一丁いくぞ!」


「ひぃ〜」


「クラン、流石に休憩だ。相手の年齢思い出してみろ」


「…………おお……まぁこんなもんか」


 クラリィさん、助かりました……。


 身体(基礎)が作られてないからか、体力的に全くついていけない。


 さらに、細やかな動作がどうもしにくい。


 ……やはり、幼少期に多少でも身体を動かして運動に慣れさせるべきだったか。



 


 それでも、なんとか()えるようになってきていた。


 クランさんの肩が軽く動く。


 それと連動して足も前に出るように動いてる。


 脇は締められていて、肘がしなやかに伸びて、手首が綺麗に沿っている。


 何度か打ち合って、どういう型で、どういう軌道で剣が()()するか判るようになってきている。


 判るけど、受け止められない。


 木刀で受け止めたとしても、反動で身体が思うように動かない。




 ……。


 受け止める必要……あるのかな?




 ……ふっふっふ〜、光明見えた、見えましたよ!


 つまりは不必要だったんだ……!


 「天から命ぜられた聖の意思よ」


「エリック君?」


 そう、別に受け止める事が必要なわけじゃない。


 完璧な防御が必要な訳じゃない。


 「清らかなる大気に満ちるその力」


 近接や魔法に対する短・中・長距離すべてに対応する防御なんて、そんなものは後で魔法で作ればいい。


 「盾となりて蝕む敵から守護し――」


 一時的に避けて逃げて、魔法を発動させる時間さえ稼げれば良い、相手の攻撃に当たらなければ良い。


 「羽衣になりて抱擁せよ!」


 結論として、今必要なのは接近攻撃からの回避技術だけ!


「クランさん!」


「お、おう!?」


 少々意表を突かれたっぽいクランさん、けど驚いている暇はありませんよ?


「模擬戦もう一度お願いします!」


 木刀を持たずに、腰を折ってもう一度。


 結局、焼き付け刃でも何でもいい。











 完璧じゃなくても、超力技でも、無理矢理でも、勝てばいいのだから。


 そこに最後まで立ち続け、生き抜いて行く者が、勝者であるのだから。

妄想に書いてある後悔は私の持論、のつもりです。


さて、エリック君が負けてしまいました。


魔法や近接戦闘への対策は練れても、それは机上の空論。


所詮は教科書の上からみた盤上の駒。


いくら瞬間判断を鍛えていたとしても、ぶっつけ本番で勝てるような甘い挑戦者はいないということです。


矛盾があるのでは? と考えつく読者もいるかと思いますが、そこはそれ。


気づいたとしても、気づかないふりをしてあげて下さい。


気づいてない人は、そのまま気づかないでやって下さい。


作者からのお願いです。


それではまた次話で。

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