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神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
37/59

食事時のご法度

出来れば、前話をもう一度読んでからこの話を読んでいただきたいです。


理由は後書きにて。


食事


 これは仰々しく言えば、時間と空間と食物、そしてそれらを味わう人全てを指す言葉である。


 室内、野外。


 朝、昼、晩、夜中。


 肉、魚、野菜、穀物、飲料。


 そしてそれらを楽しむ人々。


 上記にある全ての言葉の意味を含んでいると言える。


 ある人はストレス発散ために、ある人は英気を養うために、ある人は気合を入れなおすために。


 ある人は交渉事のために、ある人は交友を深めるために、ある人は談笑し、ただ楽しむために。


 そして生きるために。


 私たちは食事をする。




 もし邪魔をする人がいるなら……私は何をしちゃうんでしょうね?











 この学校においても、午前と午後の間にお昼休みと言う名の休憩時間がある。


 前にも言ったかと思うが、この学校は午前と午後で通常授業と前衛・後衛の実践授業と別れているため、その切り替えのための時間でもある。


 例えを挙げれば、接近戦闘馬鹿(クランさん)は午後の授業を糧に午前授業を乗り越える。


 だからお昼休みという休憩時間は、そういう人達が英気を養うための時間とも取れる。




 つまり、私にとっても昼食というのは重要(しあわせ)な時であるということである。


 


 食堂には何種類かあるが、私はここがお気に入りだ。


 雰囲気の良い木製の長テーブルが堂々と並ぶ、広めの木造建築の食堂。


 BGMは軽い談笑と、木製食器同士が軽くぶつかり、こすれ合う音。


 眼の前に出された料理の香りを楽しみ、食物を味わう時間。


 一時的に日常と切り離されたと錯覚する、この独特の雰囲気は何者にも代えがたい。


 お金は基本的に入学費、授業費等に分割されて払われているため、かなりスムーズに席につける。


 因みに、今日の昼食はキャロラインさんたちと別行動だったりで、纏まった空席を探す必要が無かったのでいつも以上にスムーズだった。


 ちなみに別の食堂などでは、その食費に色を付けることで、ちょっと豪華な食事ができたりする。


 裕福層のほとんどはそちらに流れていると言っても過言じゃない。


 それがこの学校でのお昼休みという雰囲気であると、私は信じて疑わないし、それが続くはずだった。


 だから私は――


「エリック・シルフィールド! もう一度……もう一度私と決闘をしろ!」


 こんな人と関わりたくないです。


 というか、そんな怒気のある言葉遣いを子供(わたし)に向けないで頂きたい。








 ……人がせっかく気分よく食事してる時に、持ちだして欲しくもない決闘の話をしてくれて私のテンションは駄々下がりである。


 さらに、ほんわか談笑の雰囲気も、今はこの場を中心として時が止まった(ザ・ワールド)かのよう。


 人の良いボンボン(かねのある)貴族って、本当に絶滅危惧種レベルに有るのではないだろうか。


 この時間帯の雰囲気をぶち壊しにしてくれる人って本当に最悪だ。


 そりゃ例えば古臭い酒場で別の人に喧嘩売っているなら、私に被害が及ばない限り関与はしませんよ。


 それはそれで、その酒場の雰囲気(おやくそく)と合っているのだから全く問題ない。


 その場にいたらむしろもっとやれ~、などと一歩下がった野次馬のように煽るかもだ。


 でも今の状況は、女生徒が私を巻き込んでこの雰囲気を壊した主犯に仕立てあげた。


 そして今、ここに集まっている人達(学生)は、理由はどうあれ心体共に休ませようと思っているのにだ。


 その雰囲気になんてノイズを出してくださりやがるなんて、この場所を何だと思ってるんだろうか。



「返答は!」



 ……さて、本格的にどうしてやろう。


 いつの間にか手をぎゅっと握り、拳に汗が作られていく。


 決闘を受けるかどうかは本人たちで決めればよく、強制力は無い……のだけど、敵前逃亡と同じような意味合いであり、好ましいとはいえない。


 但し実力者の場合は、その称号を持った立場として原則断ってはいけない。


 それは……私も例外じゃない。


「わかりました、称号を持つものとして決闘を受けましょう。では、貴方はとりあえずここを出ていってもらえますか?


 ……貴方の存在は食事の邪魔です」


 出口を指さしながら挑発するように言う。


 とりあえず速やかに退出願おう。


「……ッ……わかった。放課後、昨日の決闘の場で待っている」


 と言い、怒りをまき散らしながら出ていく女生徒。




 ともかく、食堂の雰囲気を壊した貴方の罪、それはそれは重いですよ?




―――――――――――――――――――




「では再選の条件です。私がまた勝ったらお金をくれますか?」


「何!?」




 社会の荒波にもこれさえあれば耐えうる事が出来る、何者にも揺らされない存在価値をもつお金。


 お金はいくらあっても困ることはない。


 私はまだ八歳だけど、お金を稼ぐことは別に悪いことじゃないですよね?


 あ、只今まだまだお日様高ーい放課後、場所は昨日と同じ決闘の場です。


 私は今、とても気分がいい。眼の前にいる女生徒の断罪方法を思いついたからだ。




「条件なんて聞いてないぞ! 更にお金を条件に引き出すなど、神聖な決闘を何だと思っている!」


「……神聖だというならあんな場所で申し込みもしないでしょうし、二日連続で申し込みますか?」


「ぐッ……」




 はっは〜、嫌だなぁ。


 何のメリットもないのに面倒な事を二度もやれと?


 やれやれ、私はそこまでお人好しじゃありませんよ。


 そもそも外側とはいえ、賭けも行われている決闘を絶対神聖とは言いがたいでしょうに。


 そして貴方も、食堂のあの爛漫な雰囲気を侵して下さりましたよね!?


 人のこと言えるんかい!




 ……この人の性格は酷い。


 かなり直情的で、筋道を立てて考えることをしてないかのよう。

 

 受け入れられないものが多く、それら全てを排除してしまおうという短絡的な思考。


 自らの行動で矛盾を引き起こし、そしてそれを認めようとしない。


 自身のプライドが高く、それを傷つける者は許さない。


 今は子供(わたし)に恥をかかされたから、排除してしまおうといった感じが色濃いだろうか。


 他にも私に負けたことや、神聖だと思っている決闘にお金を賭けろと強制されている事。


 更に、私の条件の言葉を意訳すると、『貴方(女生徒)(エリック)にもう一度負けますよ』と挑発しているようなものだ。


 纏めると、今の女生徒の心は憤怒の炎で真っ赤に燃えているのだろう。


 ……それだから火属性と相性がいいのかもしれないけども。




「何リール望む!」


「あなたの所持金の半分を」




 お金の価値なんてまだ分らない。


 賭けの最高掛け金が千リールである、ということぐらいしかまだ分かっていない。


 比較する対象がないのなら、具体的(むだ)数字(リスク)言う(せおう)べきじゃないだろう。


 この人は、まだ約束を守るような人種だろうし。


 ……いや〜今まで引きこもっていた自分が憎いね。


 そうこうしている内に、昨日と同じ先生(審判)とお抱え治癒魔法師が、昨日と同じように歩いて来た。




「返答は?」


「……分かった。その条件を飲もう」


『さて、決闘です。再戦です! 決闘者は昨日と同じのエリック・シルフィールドとアイーナ・ランダルス!

 エリック君はお金に困っているようでしたら、自分自身に賭けることも出来ますので、ぜひ賭場を利用してくださいね〜』


『自分自身に賭けた値段で、その決闘で勝つ自信の程が伺え……』




 おお、今回は実況者コンビが早い。


 けどもその内に結界が貼られていき、声が聞こえなくなっていく。


 そして一泊おいて、聞こえる低い声。


 「両者……準備」


 すぐに軽く沈む二つの顔。


 昨日(初戦)のような緊張感はない。


 相手(女生徒)から受ける重圧も、ブーニング先生と比べるほどじゃない。


 そして、食堂での罰はここで受けさせる。


 相手の戦績に、二度連続の黒星をつける。


 そのご大層なプライドに、一番傷がつくであろう方法で。




「……開始!」


 「火の意志よ その強き炎は面前の敵を打ちくだ――きゃあっ」



―――――――――――――――――――




 ……転んでいた。


 これはどう実況するべきなのか。


 一瞬何が起こったのか、外から見ていてもわからなかった。


 物の見事に転んでいた。


 魔法を打つときの動作。


 何度も何度も繰り返してきたであろう、淀みのない綺麗な型だった。


 半身になる時に前に出す足が躓いたのだろうか、うつ伏せに転んでいる。


 魔法も失敗している。


 彼女が内心、いや顔も青ざめていくのがわかる。


 当たり前のように間合いを詰められ、喉元に当てられた石棒。


 嫌でもこの決闘の勝敗がついたことがわかる。


 ……笑えない。


 彼女の方から再戦を頼んだらしく、それでいてこの結果。


 顔を上げることなんて……対戦者の子供(実力者)と顔を合わせることなんて出来ない程に……。




―――――――――――――――――――




 結界が解除されて、不思議なほどの静寂の中。


 彼女は下を向いて走って行きましたとさ。











 うん、すっきりした。

さてですね、前話を読んで欲しいといった意味ですが、あまりに決闘での動きがなかったなーと思ったので、細やかな動作を微妙に付け足してみました。


両者スタイルが後衛だとしても、魔法を打ち出す動作などを書いてないのは如何なものかと思いまして、書き直しました。(勝ち負けや内容はあまり変わっていませんが)


その細かい動きを前提として、この決闘の描写がありますので、できれば見て欲しかったということであります。はい。


後、お金に関してですが、この世界のお金の価値は〜リール=〜円とはしません、ということを言いたいのでした。


肉や飲み物、宿泊料金などの価値差等がこの現世と同じではありませんからね。


読者が適当に考えて想像を膨らましてくだされば、これ幸いであります。


私はそのお手伝いをさせて頂きますので。


ファンタジーなどでは髪の色などで、その人の得意魔法や素質が決まっていたりしますが、魔法=イメージ&想像で公式がほぼ成り立っているのに、外見で決まるのはちょっとな〜とか思ってたりします。


だからその人の性格、心のあり方などが魔法に現れると思っています。


……髪の色を染めるほどに、その魔法が好きとかなら別ですけどね。


それではまた次話で。




雰囲気の良い喫茶店のコーヒー等は、雰囲気代も入っていると考えるとそこまで悪くない値段だと思うのですが、どうでしょう? 


 一杯&モーニングで最悪三時間ほど居座る嫌な客ですけど許して頂戴ね。

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