穴を埋めるという自然な行動
ぼのぼのではありますが、学園編じゃなかったです。
学校編じゃなく、帰宅篇ですね。
魔法の出現場所(2)
相手の近くに魔法を出現させたいだけなら、魔方陣や刻印を罠のように使うのが一般的であり、また制御も楽である。
そうやってに使われるように、この方法で相手近くに出現させる時のメリットとして、
不意打ちを狙える、死角を突く、目標に当たる確率が高い、クリーンヒットさせる事が出来る、などが主に挙げられる。
かくして詠唱魔法で罠のように相手近くで魔法を発動させるそのメリットは、前項と同じような効果が得られ、さらに事前の準備が詠唱のみであるということ。
その場合、発動の不安定さや使用魔力量のデメリットが大きく見える。
それでも、そのデメリットでの主な問題は個人魔力により魔法を阻害されやすいという一点であるため、ただ遠くに出現させることに関しては練習しておいて損はないと私は考える。
「……えっと、つまりこういうことですか。ブーニング先生は私が作ったあの石を、ものの数秒で脱出したと」
「うん、撤退してくれるように話してたらいつの間にかに……ね」
テコの原理で動かしやすいとはいえ、少なく見積もって五百キロほどの拘束物のはずなんですが!?
地属性初級魔法での私の限界ギリギリがあっさり破られた。ちょっと悔しい。
何者なんだろうあの人。
いや、元騎士団長という肩書き持った人ですけどね。
「そして、ごめんねエリック君。 私がリーダーとして、もうちょっとエリックくんに気を使ってあげられればよかったんだけど……」
「いえ、そんな。キャロラインさんの落ち度ではありません」
結果的にだけど、本当に落ち度はない。
私を拠点に残したことによって、ユアン先生を奇襲した形になって撃退出来た。
もう一度声かけられても立てるとは思えないしね。あんなの二度と願い下げですよ。
学校でもブーニング先生見つけたら、廊下でも教室でも穴を作って入ってやろうかと思うくらいには辛かった。
「帰りの荷物は任せとけ。助けてもらった上に、こんな状態のエリック君に荷物なんてもたせられねぇわ」
「それには同感する。そもそもこんな無茶をさせたのは私達だしな」
「…………ええ、そうですね」
今回、一番心を痛めているのはアリシアさんかもしれない。
私が今……寝込んでいる状況に。
因みに只今拠点防衛訓練最終日、お外は真っ暗のお時間です。
寝込んでいるといっても、状況は全然深刻でもなんでもなかったり。
あの後、誰にも見られていないことを確認して、穴を重力魔法で脱出して魔法を解いた時、綺麗に目眩を起こして気絶した。
第一発見者はキャロラインさんで、すぐにベットに寝かせてくれたらしい。
気絶した理由は明快簡単、魔力切れである。
主な原因は、あの石柱とお布団拘束物の遠距離二連続地属性魔法。
緊張状態と相まって、残量魔力とか全く考えていなかった結果、最後の重力魔法で魔力が底をついた。
でもね? だけどね? あの状況で、目の前の敵を倒すこと以外の事なんて浮かぶかいな!
そして、勝利の余韻に酔って重力魔法を使っちゃうのも仕方ない……よね。
また、ファンタジーよろしくセオリー通りに魔力は精神と密接な関係であり、使い過ぎるとこんな感じになるらしい。
「ああ、エリック君、穴は埋めておいたぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
――――――――――――――――――
サバイバル最終日。
その日程は学校に向かって帰るだけ、といって差し支えない。
ある一定数のチームが合わさりグループになって、先生と点呼確認を取り、そのまま帰るだけの日程。
特にやるべきことはあまりなく、強いて挙げるなら拠点の片付けである。
……その片付けで、朝からちょっと小さめキャンプファイヤーをやるチームは私達だけだろう。
材料は言わずもがな、木造拠点である。
「今回もよく燃えるねー」
「やっぱこういうのはいいな、なんかこう……そう、語りかけてくるような感じが」
「クラン、お前は語呂を勉強しろ」
「燃えてしまえです〜」
……ちょっと待て、ユアン先生どうしたっけ。
「皆さんすいません! ちょっと火消して!」
「おおう、どうしたエリック君取り乱して」
「ユアン先生が埋まってるんですよ。私忘れちゃってて!」
全くもって洒落にならない。
穴を埋めたと言われた時に何故気づかなかったのか。
「ユアン先生が埋まっている? それってどういう事なんだ、詳しく説明してくれ」
「……ちょっと悪戯というか仕返しというか」
「埋まっているのはその場所で間違ってない?」
「はい、それはもう。あの埋めた穴の所に私が拘束したので」
今の私が考えうる限り、厳重に……ね。
「……とりあえず消火したいけど、クラリィ埋めた場所分かる?」
「それなら俺が分かる。見た目変わってるだろうが、場所は変わらないだろ」
「そして水属性を上手く使えるのは……エリック君、貴方しかいなかったわ。……出来そう?」
……自分で水魔法を使うという行動が思いつかなかった。
駄目だ〜、頭の中が真っ白になるってこういう事なのか。
ただただ突っ立っているだけで喚き散らして、全然自分で行動しようとか思えなくなるとは。
だけど……この世界で生きていく限り、こういうのには慣れていくしかない。
「わかりました、大丈夫です。 清き澄んだ水の意思よ 地へ恵みを降らせよ」
雨が降り、少しつづ火が消えて逆に燃え尽きてない廃材が見えてくる。
「クラン、どこらへん?」
「…………あそこだ、火をくべるための窪みがあるだろ? その右手前ぐらいにあったはず」
「クラリィ!」
「分かってる。 気高き強固な地の意思よ 我に従いその身を変えよ」
それが生き物と生ったかのように、土が形を変えて地面に穴が開いていく。
「横穴はまだ残ってると思いますので……えっと」
「分かってるよ、エリック君。私もそれを探しているところだ」
うん、余計なお世話だった。
「……見つけた、穴を広げていくから少しどいて」
全員が少し後ろに下がると、穴が広がっていき、人が通れるほどの大きさになった。
「ふぅ、終わり」
「ユアンさんは石で囲んであります。その中に多分いると思うんですけど……」
「もしその程度なら、先生だったら脱出してもおかしくないけど?」
「えっとですね、うつ伏せ状態で両手足を地面に固定して、口を布で塞いでるんです」
「……なぜそんな面倒なことを。いやその前になんでそんなところに先生が?」
「クラリィそんなの後よ後、脱出してないなら助けなきゃ。まずどうやって降りるかだけど」
「地面を斜めにして降りれるようにすれば、大丈夫じゃないでしょうか?」
「さっすがエリック君、冴えてる! クラリィ〜」
「はいはい、了解」
こうして程なくユアン先生は助けられた。
助けられた、はちょっと語弊があるけど……。
ユアン先生は暗闇の中、うつ伏せ貼り付け状態にして拘束。時間にして、約半日放置。
流石に結構衰弱しており、とりあえず治癒魔法を掛け、まだ引率してない先生を呼びつけて運んでもらった。
……流石にやりすぎたかな、反省。
学校に帰った後、お咎めは受けたけど罰は無かった。ユアン先生の心の広さに感謝。
……存在を忘れててすいません。
個人的にサブタイトルが厳しい。
長めの会話の応酬。
……が多いかもしれないですね。
使いやすいのも困り者です。
遅れてスイマセンでした。
ではまた次話で。