表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の好奇心は人をも殺す  作者: all
靴下を履けない本編
29/59

聞いた事と体験する事は違う

慣れる


 人がその事柄、状態に対して疑問、違和感を持たなくなること。


 経験を重ねて成長し、物事が上手くいく、出来るようになることなどの良い方向としての意味が多い。


 馴染む、や適合することなどが類義語として挙げられる。


 少し変な風にとれば、『空気を読む』ことでその状況に慣れるとも取れる。


 例えば、緊張の場などでも慣れる事が出来れば、いつもどおりの行動が出来る、ということなどである。











 ふとお腹に違和感を覚えて、訓練を中止する。


 短縮魔法を用いて、二度目の硬質化魔法(クラリィさんの真似)を掛けることに対しての勉強は、そういう理由で集中力が切れた。


 ふと上を見れば、ほぼ真上に太陽が輝いている。


 ……そろそろ昼食の時間だろうか。




 よほど集中していたのか、キャロラインさんが移動したことにも気がつかなかった。


 立ち上がった時、サバイバルにて嗅ぎ慣れた、お肉が焼ける香ばしい匂いが鼻孔を(くすぐ)ってくる。


 その匂いに釣られるように、身体が動く。


 焼き加減や種類によって、硬さや味に微妙に違いがあっても、お肉に飽きてきたのは確か。


 それでも、お腹は虫を鳴らす。


 本当に空腹は最高のスパイスとは、よく言ったものだと思う。

 

「おーう、エリック君。昼食だぞ〜」


 私とは違い、お肉に微塵も飽きたようには見えないクランさん。


 サバイバルでだいぶ慣れたのか、元々飽きないほどに好きだったのか。


 ……後者に違いない。






「もう最終日か……なんか早いな」


「クラン、忘れてない? 今回は元々日数が少ないでしょうが。本当だったらもっと長いんだから」


「このぶんじゃ失格・撤退チームは、そこまで多くは無いかもしれないね」


「それはいいことですね〜」


 いいことですね〜。


「私は、このお肉だけの食事が、いつもより早く終わるのが一番嬉しいけどね」


「……それには私も賛成するよ」


 あ、やっぱりそう思ってましたか。


 うーん、お肉の調理方法を『焼く』だけじゃなくて、『蒸す』とか『茹でる』とかすればもう少しバリエーションを増やせると思うけど……それもやっぱりその場しのぎのような気がする。


 無いよりあったほうがいいと思うけどね。


「もうこのまま訓練が終わってくれたら、とても楽なんだけどなぁ」


「ああ、それだったら…………楽だったんだけどなぁ」


 クランさんが焼いたお肉を置きながら、おもむろに立つ。


「「?」」


「来たぞ」


 そのクランさんの目線の先、拠点の入り口から見えた人物は、なぜ今まで気づかなかったのかわからないほどに、圧倒的な存在感を纏いながらこちらに歩いて来ていた。


 ただ歩いているだけで、本当に何千もの歩兵の進軍を思わせるような、そんな圧倒的なものだった。




 ――身体が硬直した。


 立ち上がろうと思っても、身体に全く力が入らない。


「戦闘体制!!」


「ごめん! 呆けてた! とりあえず、先生を近づけたくない。つまり、五日目と同じでいくよ!」


「「了解!」」


 ……あ、駄目だ、クランさんに激飛ばされても全く動いてくれない。


 私以外は先生を止めるため、既に攻撃を始めている。


 だけど私はまるで蛇に睨まれた蛙のように動かない。


 これが俗にいう重圧(プレッシャー)に呑まれた、ってやつなのかも……。


 いやこれ、本当になんだろう。


 頭だけは一応働いてくれてるけど、身体は全く反応してくれない。


 学校に来て二日目朝のあの金縛りに、またあったみたいな気分。


 いや、それより酷いかもしれない。


 恐怖に縛られてる。


 立ち向かおうと思えない。


 ここ(拠点)から出たくないとさえ思う。


 話に聞くのと実際に体験する、もうこの二つは比較対象にしてはいけない。


 あぁ、断言できる。


 私はこのチームで足手纏いな存在だと。


 








 目標(ターゲット)を持っていて、守ることを任させて、何も行動に移せない。


 襲撃に『慣れた』なんて嘘だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ