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第5部 第38話 蒸気の咆哮――砕け散る氷のプライド

「……三分だ。爆発しろ!!」

霊峰アイスガルドの中腹、退避ポイントまで逃げ延びたルーニー・ハクザンが、地下の魔法陣へ最後の魔力を送り込んだ。

(……ボゴォォォォンッ!!!)

大気が震えた。霊峰の山腹が、内側からの凄まじい圧力に耐えきれず爆発したのだ。

噴き出したのは、マグマではない。数千、数万トンの超高温の水蒸気と熱湯。それは巨大な白い竜巻となって、山頂を包んでいた氷結結界を内側から直撃した。

(……パリーンッ!!!)

霊峰を何世紀も守り続けてきた氷の壁が、ガラスが割れるような音を立てて砕け散った。

一瞬にして、山頂は極寒の世界から、視界ゼロの超高温サウナへと変貌したのだ。

「……な、何!? 何が起きたというの……ああっ、熱い! 熱いですわ!!」

山頂にいた氷結のセラフィナは、突然の熱波と湿気にパニックに陥った。

彼女の氷魔法は、この圧倒的な熱量の前には無力。自慢の青白い肌はみるみるうちに真っ赤に茹で上がり、冷徹な仮面は恐怖に歪んでいた。

蒸気の中から、ゆらりと四人の影が現れる。

ルーニー、そしてアイリス、エヴァ、テイラー。三人は全身濡れ鼠で、茹で蛸のように赤くなっていたが、その瞳には勝利の確信と、主君への狂気じみた崇拝が宿っていた。

「……セラフィナ。お前の『氷の世界』は、俺の『熱情』に負けたんだよ」

ルーニーは冷ややかな目をセラフィナに向けると、指先から炎の魔力を放った。

「『灼熱のカルセラ』!!」

セラフィナの周囲に、超高温の炎でできた檻が形成される。

一歩でも動けば、その肌は焼かれ、蒸気で窒息する。セラフィナは、あまりの恐怖と、自分の魔法が通用しない現実の前に、戦意を完全に喪失してへたり込んだ。

「……ひっ、うう……殺さないで……。私が間違っていたわ……」

「殺しはしない。……だが、お前には、俺の家臣たちを凍えさせた罪がある」

ルーニーは檻に近づくと、セラフィナを強引にうつ伏せにさせた。

そして、茹で上がって無防備になったそのお尻を、一発ずつ、力強く叩いた。

パシィィィン! パシィィィン!

「いたっ! ひゃうんっ! ……な、何をするの……!?」

「これは、お前が『熱さ』を忘れないためのお仕置きだ。……お前は、この檻の中で、自分がどれだけ無力で、どれだけ愚かだったかを、じっくりと思い知るがいい」

セラフィナは真っ赤になったお尻を抑え、恥ずかしさと熱さで涙を流しながら、檻の中で縮こまった。

彼女の氷のプライドは、ルーニーの知略と、三人の家臣たちの狂熱によって、完膚なきまでに砕け散ったのだ。

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