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第5部 第18話 狂王の荒療治――強制労働と魔力の接吻

「――動け、このブタ共! 掃除が終わったら、そのまま城の外へ狩りに出るぞ!」

翌朝。翡翠城には、筋肉痛とお尻の痛みに顔を歪める三人の悲鳴が響いていた。

ルーニーから無理やり渡されたのは、かつての華やかなドレスではなく、動きやすさだけを重視した、丈の短い**「戦闘用メイド服」**。

「ひ、酷いですわ……こんなの、掃除どころかしゃがむだけでお尻が……」

「キャッハ! 文句があるならその腹の肉を削いでから言え!」

ルーニーの怒声に追われ、三人は雑巾がけ、さらには魔族領の森へと叩き出された。

相手は、かつての彼女たちなら一撃で仕留められたはずの、低級の魔猪デビルボー。しかし――。

「ぜー……ぜー……。はぁ、はぁ……っ、う、動けない……」

「魔法が、上手く練れない……? 器が、狭まっているの……?」

三人がかりで、泥まみれになりながらどうにか一匹を倒し切った頃には、全員がその場にへたり込んでいた。

王国での怠惰な生活と、翡翠城での過保護な食生活が、彼女たちがかつてルーニーから授かった「魔力の器」を萎縮させていたのだ。

「……ふん。やはりな。器が錆び付いていやがる」

冷ややかに見下ろすルーニー。だが、その内心は穏やかではない。

(やばい、思っていた以上に弱ってる! このままだとシオンが攻めてきた時に、逃げることもできずに死んじまうぞ。……ああもう、めんどくさいけど、あのアレをやるしかないのか!)

ルーニーは、地面に転がるアイリスの髪を乱暴に掴み、自分の方へ引き寄せた。

「な、何を……ルーニー……んっ!?」

抵抗する間もなかった。ルーニーはアイリスの唇を塞ぎ、自分の濃厚な魔力を**「口移し」**で強引に流し込んだ。

かつては魔導具や術式で行っていた「魔力の器の拡張」。だが、今の野生の肉体を持つルーニーには、これが最も効率的で強力な方法だった。

「んぅ……っ、は……ぁ……っ!!」

アイリスの全身に、爆発的な熱が駆け巡る。強制的に広げられる魔力の器。

ルーニーはそのまま、エヴァ、そしてテイラーにも同じ「処置」を施した。

「はぁ……はぁ……。……これで少しはマシになったはずだ。明日も朝から走り込みだ、忘れるな」

そう吐き捨てて背を向けるルーニー。顔は「狂王」のままだが、耳の裏まで真っ赤になっているのを、テイラーの目は見逃さなかった。

(……魔力を、直接流し込まれた。……あんなに乱暴なのに、流れ込んできた魔力は、驚くほど温かくて……)

アイリスたちは、唇に残る感触と、全身を満たすかつてない魔力の高揚感に、荒い呼吸を繰り返しながら、去りゆく14歳の背中を見つめ続けていた。

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