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第5部 第16話 美風卿の再臨――そして、汚辱の雨

「……私の、私の翡翠城を……! あの野蛮なガキめ、絶対に許さん!!」

翡翠城を「汚物爆撃」で追われた美風卿ゼノンは、激怒していた。

彼は魔王軍の中でも屈指の実力者であり、その剣技は「美しき風」と称されるほど洗練されている。……ただし、極度の潔癖症という一点を除けば。

彼は近隣の魔族領から兵をかき集め、数千の軍勢を率いて翡翠城へといち早く舞い戻った。

「ルーニー・ハクザン! 出てこい! この私が、貴様のその不潔な首を跳ね、城を清めてやる!!」

城門の前に陣取ったゼノンが、愛剣を抜いて叫ぶ。その姿は、確かに威風堂々としていた。

テラスからそれを見下ろす14歳のルーニー。

内心では(ああ、めんどくさい……。せっかくピカピカに洗浄したのに、また汚れるじゃないか……)と毒づいていた。

だが、彼は大谷吉継譲りの冷徹な知略で、ゼノンの唯一にして最大の弱点を、正確に突く準備をすでに整えていた。

「キャッハ……! 美風卿か。……懲りずにまた、俺の『聖水』を浴びに来たのか?」

「聖水……? 何を――」

ルーニーが指を鳴らした瞬間、城壁の上から、ゴルザ率いる隷属兵たちが、一斉に巨大な樽を傾けた。

――ブシャァァァァァァッ!!!

空から降り注いだのは、黄金色に輝く、凄まじい異臭を放つ液体。

……そう、数千人分の「おしっこ」である。

「ひ、ひゃああああっ!? き、汚い! 汚すぎる!!」

ゼノンの美しい白銀の鎧は、一瞬にして黄金色の液体に塗れ、自慢の金髪からは雫が滴る。

彼は剣を放り出し、狂ったように自分の体を掻き毟った。

「洗え! 今すぐ私を洗え! 誰か、清潔な水をぉぉぉ!!」

戦うどころではない。ゼノンはパニック状態に陥り、部下たちに「私に近寄るな! 不潔者が!」と叫びながら、這うようにして戦場から逃げ出した。

残された魔族の兵たちは、主人を見捨てて呆然と立ち尽くす。

そこへ、鼻をつまんだルーニーが、真田流の「泥臭い」奇襲を仕掛け、一網打尽にした。

数日後。

ゼノンは再び軍を立て直し、翡翠城へ攻めてきた。

だが、ルーニーは全く同じ「汚物爆撃」を、さらに強化して浴びせかけた。

「う、うあああ……! もう、もう無理だ……! あの城には、悪魔が住んでいる……!」

二度、プライドと肉体を「おしっこ」で蹂躙された美風卿の心は、完全に粉砕された。

彼はもはや翡翠城を攻める気力を失い、魔族領の奥深くへと引きこもってしまったのである。

こうして、翡翠城は「この世で最も汚い(防衛術を使う)王」の居城として、その名を魔境に轟かせることとなった。

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